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新司法解釈は、条件付きで企業相互間の賃借の効力を認可

 最高裁判所は、2015年8月6日に『民間貸借案件の適用法律にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定』(以下「規定」という。)を公布した。「規定」は、2015年9月1日より施行される。当該「規定」は民間賃借の主体、案件の管轄、刑事と民事が交錯する案件の処理、民間賃借契約の効力、オンライン貸借プラットフォームの責任、虚偽の民間賃借案件の訴訟及び利率の規制等の面で詳細な規定を設けている。当該「規定」が公布された後、日系企業に対してどのような影響が及ぶのか、日系企業が如何に対応すべきかについて、本文で検討を試みようと思う。

1.「規定」は、条件付きで企業相互間の民間賃借の効力を認可

企業の融資の需要に適応し、法律規則を統一的に適応するため、「規定」は企業相互間の賃借の効力について明確な規定を設け、条件付きで企業相互間の賃借の効力を認可した。即ち「規定」第11条において、企業は生産、経営の必要性から締結した民間賃借契約に法律の規定する、その他の無効事由がないとき、民間賃借契約は有効と定めている。これは重大な変化である。

日系企業が注目すべきポイント

①「規定」発効の日より、企業の生産経営が一時的に困難となり融資を受ける必要が生じた場合、直接関連会社又は他の日系企業から借り入れることが可能となり、銀行への貸付依頼や企業の法定代表者個人による借入等の方法で行わなくても良いことになる。

②『賃貸通則』第73条には、企業相互間において無断で貸借若しくは形態を変えた貸借を取り扱った場合には、中国人民銀行が貸出当事者に対し規定違反収入に従い相当額以上ないし5倍以下の罰金を科し、なお且つ中国人民銀行がこれを取り締まる、という規定が設けられている。今後当該条項を如何に執行するかについて、現在のところ政府の関連機関からは正式な回答はない。つまり、現時点では、法律上の解釈の食い違いが起きる可能性を排除できない。司法機関が認可した民間賃借契約でも、中国人民银行から行政処分を受ける可能性がある。

2.「規定」の企業相互間民間賃借契約の効力に対する制限

上記の説明のように、「規定」は企業相互間の民間賃借契約の効力を認めるものの、当該認可は条件付きの認可である。即ち生産経営の必要性から民間賃借を行う場合のみ有効ということである。また、企業の生産経営の本質及び金融秩序並びに金融の安全を維持・保護する必要性から、企業相互間の賃借に『契約法』第52条及び本「規定」第14条規定の事由が存在する場合、企業相互間の賃借は無効である。

(1)『契約法』第52条の規定。次の各号に掲げる事由の1つのある場合には、契約は、効力を有さない。

①一方が詐欺又は強迫の手段により契約を締結し、国の利益を損なうとき。

②悪意により通謀し、国、集団又は第三者の利益を損なうとき。

③適法な形式により不法な目的を隠すとき。

④公共の利益を損なうとき。

⑤法律又は行政法規の強制的規定に違反するとき。

(2)「規定」第14条の規定。以下のいずれかの事由があるとき、人民法院は民間貸借契約が無効であると認定しなければならない。

①金融機関の信用貸付資金を不正取得し高利で借主に転貸して、且つ借主が事前に知り、または知るべきであった場合

②その他企業から貸借または本事業組織の従業員から募集して取得した資金を高利で借主に転貸して利益を取得し、なお且つ借主が事前に知り、または知るべきであった場合

③借主が借入金を違法・犯罪活動に用いることを貸主が事前に知り、または知るべきであったにも関わらず借入金を提供した場合

④公序良俗に違反する場合

⑤その他、法律・行政法規の強制規定に違反する場合

民間賃借契約の効力という面で、日系企業が留意すべきポイント

①日系企業が他の企業から貸付を受けることは特別な場合に限り、正常な状態、通常の業務としてはならない。さもなければ、金融監督管理機関の承認を得ずに賃貸業へ専門に従事する金融機関となる質的変化が起きる可能性があり、これは法律法規が禁止するものである。

②日系企業が他の企業から貸付を受ける場合には自己資金を行う必要があり、銀行から貸付を受けたり、他の企業からの借入及び当該会社の従業員による資金集めを行ってはならない。特に留意すべきなのは、銀行貸付による貸付金を民間に用いて高利を受けてはならないことで、これは刑法に抵触する行為という点である。

③日系企業は、借入金を違法な犯罪活動に従事する者に貸し付けてはならない。他の企業又は個人に貸し付ける際には、貸付金の用途の審査を着実に行う必要がある。

3.「規定」の企業相互間の民間賃借利率に対する制限

「規定」は、賃借資金の出所及び用途から民間賃借契約の効力に制限をかけているほか、利率の面でも民間賃借に制限をかけている。利率制限は、1952年以来施行している「銀行の同時期の貸付利率の4倍迄という制限」規定を変更し、利率の制限を固定利率制限に変更した。即ち年利24%及び年利36%の制限である。これは、もう一つの重大な変化である。この2つの固定年利を通じ、民間賃借の利率区間を「二線三区」に分けた。「規定」の第26条、第31条では、この「二線三区」内の貸付利率の効力について次の規定を設けている。

①貸借双方の約定した利率が年利24%を超えないとき、貸主が借主に約定した利率に従い利息を支払うよう請求する権利を持つ。

②賃借双方が約定した年利が24%を超え、36%は超えないとき、年利24%を超えて36%迄の部分の利息は自然債務に属し、貸主には裁判所へ支払を求める請求を行う権利はない。但し借主が既に返却していた場合、返却を要求する権利はない。

③貸借双方の約定した利率が年利36%を超えるとき、超過分の利息に関する約定は無効である。借主が貸主に既に支払った年利36%を超過する部分の利息を返却するよう請求する権利を持つ。

利率の規制という面で、日系企業が留意すべきポイント

(1)貸付利率を約定するときは、可能な限り利率を年利36%以下に約定する。36%を超えた部分は法律の保護を受けず、なお且つ借主が既に利息を支払ったケースでも返却を要求することができる。この種の約定が履行できるかどうかは、完全に借主の信用にかかっている。高い利率も一定程度借主の現金流動資金の不足を説明するものであり、将来的に元本と利息を返却できないリスクが存在している。この点には留意が必要である。

(2)民間賃借の利率が年利36%を超えないと約定するとき、年利24%から36%の区間に対応する利息で支払うことに留意する必要がある。当該部分の利息には支払を受けられないリスクが存在する。このため民間賃借契約の中で、月ごとに利息の支払を約定し、月ごとに利息を支払わない場合の違約責任も約定し、なお且つ貸主が契約を解除でき、なお且つ直ちに貸付金の元本を返却する約定をすることを提案する。

作成日:2015年08月19日