住宅賃貸に関する2025年の新規則 -NEW-
7月21日、国務院が制定した『住宅賃貸条例』(以下、『本条例』という。)が新たに公布され、2025年9月15日より施行されることとなりました。本条例は都市部国有地における住宅賃貸に関する規定であり、工業・商業・事務用不動産や農村住宅の賃貸には適用されません。今回は本条例から、日系企業や駐在員の皆様にご参考いただけるポイントを紹介します。
1.敷金返還について
借主の合法的権益を保障するため、本条例では、賃貸契約上で貸主借主双方が敷金額や返還時期、控除事由などに関する事項を約定するよう定めています。これは退去時の紛争の予防および解決に役立つ規定となるでしょう。(『本条例』第10条)
また、本条例では契約に別段の定めがない場合、貸主は正当な理由なく敷金を控除してはならないと規定しており、これは退去時に借主が敷金の返還を要求する上で大きなメリットとなります。
2.住宅賃貸仲介業者に対する規制強化
本条例では住宅賃貸仲介業者(いわゆる仲介業者。賃貸契約当事者ではないが、貸主または借主に仲介や代理サービスを提供し、賃貸取引をサポートする業者を指す)に対する規制が強化され、仲介業者による住宅賃貸料や敷金の代理徴収または代理支払いは違法行為となりました。違反した場合は2万元以上10万元以下の罰金となり、情状が深刻な場合は営業停止が命じられます。(『本条例』第25条、第44条)
これにより、本条例施行後は仲介業者が賃貸料や敷金の徴収または支払いを代理したことに起因する貸主と借主の間の紛争をある程度抑える効果が期待されます。
また、すべての住宅賃貸契約は住宅管理部門の住宅賃貸管理プラットフォームに登録する必要がありますが、登録された賃貸情報は税務や公安などの政府部門に共有され、コンプライアンス監督管理に活用されますので、個人の家賃収入などの納税監督管理がより厳しくなることも予想されます。
◆日系企業及び駐在員へのアドバイス
中国で働く駐在員の多くは、自身で住宅を借りるのではなく企業が用意したホテルやマンションに居住していますが、いずれの場合も住宅の転貸や契約更新時の値上げ、室内の家電設備の不備などの問題に直面することがあります。
そのため、本条例の内容を正しく理解し、必要な条項が完備された賃貸契約を締結することがリスク回避にとっては重要となります。住宅賃貸に関する紛争が発生した場合は、実務経験が豊富な現地の弁護士に相談し、速やかに対応することも重要です。
作成日:2025年07月24日