最新法律動向

2015年4月公布の重要法規解説

20154月公布の重要法規解説

自由貿易試験区外商投資国家安全審査試行弁法の印刷・発行に関する国務院弁公庁の通知

自由貿易試験区外商投資参入許可特別管理措置(ネガティブリスト)の印刷・発行に関する国務院弁公庁の通知

中国(福建)自由貿易試験区総案

中国(上海)自由貿易試験区の改革開放をより一層深化することにかかる案

中国(天津)自由貿易試験区総案

中国(広東)自由貿易試験区総案

自由貿易試験区外商投資届出管理弁法(試行)

人民法院における登記立件にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定

 

 

一、自由貿易試験区外商投資国家安全審査試行弁法の印刷・発行に関する国務院弁公庁の通知

2015年4月8日公布、2015年5月8日施行

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/20/content_9629.htm

  1. 主な内容

(1)  審査の原則。国の安全及び国の安全保障能力に影響を及ぼし、又はそのおそれがあり、センシティブな投資主体、合併・買収対象、業種、技術及び地域にかかわる外商投資に対し安全審査をする。(第1条)

(2)  安全審査の範囲。外国人投資家が自由貿易試験区において軍事工業、軍事工業関連その他の国防上の安全にかかわる分野及び重要な、センシティブな軍事施設の周辺地域に投資する場合。外国人投資家が自由貿易試験区において国の安全にかかわる重要な農産物、エネルギー及び資源、インフラストラクチャー、輸送サービス、文化、情報技術製品及びサービス、基幹技術並びに重大設備製造等の分野に投資し、かつ、投資する企業の実際支配権を取得する場合。(第1条)

(3)  審査の内容。外商投資が国防上の安全(国防に必要な国内製品の生産力、国内サービスの提供力及び関係する施設を含む。)に与える影響。外商投資が国家経済の安定、社会生活の基本秩序、文化の安全及び公共道徳、インターネットの安全、国の安全にかかわる基幹技術の研究・開発能力に与える影響。(第2条)

(4)  自由貿易試験区にかかる外商投資安全審査業務は、外国人投資家国内企業合併・買収安全審査部際聯席会議が具体的に取り扱う。(第3条)

(5)  自由貿易試験区にかかる安全審査手続は、『外国人投資家国内企業合併・買収安全審査制度の確立に関する国務院弁公庁の通知』(国弁発[2011]6号)第4条により取り扱う。(第3条)

(6)  国の安全に影響を及ぼし、又は影響を及ぼすおそれがあるが、附加条件により影響を取り除くことができる投資について、部際聯席会議は、外国投資者に対し投資案を修正する旨の書面による承諾を提出するよう要求することができる。外国人投資家が書面による承諾を提出した後に、部際聯席会議は、附加条件に対する審査意見を作成することができる。(第3条)

(7)  外商投資持分投資企業、ベンチャー投資企業及び投資性会社が自由貿易試験区に投資する場合には、この弁法を適用する。(第4条)

  1. 今後の注意点

外国人投資家が金融分野に投資する場合の安全審査については、別途規定する。香港特別行政区、マカオ特別行政区及び台湾地区の投資家が投資をする場合には、この弁法の規定を参照して執行する。(全4条)

 

二、自由貿易試験区外商投資参入許可特別管理措置(ネガティブリスト)の印刷・発行に関する国務院弁公庁の通知

2015年4月8日公布  2015年5月8日施行

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/20/content_9627.htm

  1. 主な内容

(1)  ネガティブリストには、内国民待遇等の原則に適合しない外商投資参入許可特別管理措置が明記され、上海、広東、天津及び福建の4つの自由貿易試験区に適用される。(第1条)

(2)  『自由貿易試験区ネガティブリスト』に列挙されていない国の安全、公共秩序、公共の文化、金融への監督・管理、政府調達、補助、特殊手続及び税収に関連する特別管理措置は、現行規定に従い取り扱う。自由貿易試験区における外商投資が国の安全にかかわる場合には、必ず『自由貿易試験区外商投資国家安全審査試行弁法』に従い安全審査をしなければならない。(第3条)

(3)  『自由貿易試験区ネガティブリスト』外の分野については、自由貿易試験区においては、内外資本一致の原則に従い管理をする。(第4条)

2. 今後の注意点

香港特別行政区、マカオ特別行政区及び台湾地区の投資家が自由貿易試験区に投資する場合には、『自由貿易試験区ネガティブリスト』を参照して行う。(全6条)

三、中国(福建)自由貿易試験区総案

2015年4月8日公布、2015年4月8日施行

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/20/content_9633.htm

1.主な内容

(1) 戦略的位置づけ。台湾海峡両岸関係に立脚し、全国にサービスを提供し、かつ、世界に向き合い、台湾地区との貿易投資の自由化を率先して推し進め、自由貿易試験区を両岸による経済協力の深化にかかるモデル区として建設する。(第1条)

(2) 発展目標。台湾海峡両岸における協力体制を創り出し、貨物、サービス、資金及び人員等の各種要素の自由な往来を推し進め、福建と台湾の経済関連度を強化させる。(第1条)

(3) 行政管理体制の改革深化。行政審査・認可目録制度を確立して健全化し、「窓口を一本化して受理する」サービスモデルを実行する。(第3条)

(4) 外商投資管理モデルを改革する。外商投資に対し、参入許可前の内国民待遇に加えネガティブリストによる管理モデルを実行することを模索する。外資参入許可を緩和する。新型の貿易方式を切り開く。航運サービスの質を引き上げる。通関体制の刷新を推し進め、国際貿易窓口の「一本化」を確立し、全過程におけるペーパーレス通関を実施する。(第3条)

(5) 台湾地区との貿易投資の自由化を率先して推し進める。福建と台湾の産業協力にかかる新モデルを模索する。台湾へのサービス貿易の開放を拡大する。台湾地区の身分証明文書を保持する自然人が自由貿易試験区において個人工商業者として登録する際に外資届出を経る必要がないことを許可する。電信及び輸送サービス分野、商業貿易サービス分野、建築業サービス分野、製品認証サービス分野、工事技術サービス分野及び専門技術サービス分野の開放を推し進める。台湾への貨物貿易の自由化を推し進め、台湾海峡両岸の往来がより便利なものとなるよう促進する。(第3条)

(6) 金融分野における開放及びイノベーションを推し進める。台湾海峡両岸による金融協力を率先して試行するよう促進する。(第3条)

2.今後の注意点

 当該案に基づき、自由貿易試験区において企業信用情報の収集・共有及び信用喪失連動処罰制度を確立し、第三者信用サービス機関による信用等級評価報告の使用にかかる試行を展開し、事中事後の動態的監督・管理を適切に強化する。(全4条)

四、中国(上海)自由貿易試験区の改革開放をより一層深化することにかかる案

2015年4月8日公布、2015年4月8日施行

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/20/content_9631.htm

1.主な内容

(1) 発展目標。ネガティブリストによる管理を核心とする投資管理制度、貿易の利便化を重点とする貿易監督・管理制度、資本項目の兌換及び金融サービス業の開放を目標とする金融イノベーション制度、かつ、政府職能の転換を核心とする事中事後監督・管理制度の完全化を深化させ、国際投資貿易通行規則とリンクする制度イノベーション体系を形成する。(第1条)

(2) 政府職能の転換を加速。社会信用体系の応用を強化する。総合的な法律執行体系を健全化する。社会勢力による市場監督制度への参与を健全化する。企業年度報告の公示及び経営異常リスト制度を完全化する。国家安全審査及び独占禁止審査業務協力体制を完備する。サービス業及び製造業等の分野における開放をより一層拡大する。外商投資及び国外投資管理制度改革を推し進める。(第2条)

(3) 商事登記制度改革の深化。企業の所在地、企業名、経営範囲等の登記にかかる改革を模索し、集中登記にかかる試行を試みる。「先に営業許可証を取得し、後に行政許可証を取得する」改革を推し進める。許可証リスト管理モデルを模索する。企業抹消手続を簡易化、完全化し、個人工商業者、未開業企業、無債権債務企業にかかる簡易抹消手続を試行する。(第2条)

(4)企業の参入許可にかかる「窓口の一本化」制度を完全化する。電子営業許可証及び企業登記全過程電子化にかかる試行の展開を模索する。工商営業許可証、組織機構コード及び税務登記証にかかる「まとめて許可証を取得する」又は「三つの許可証の一本化」登記制度の実行を模索する。(第2条)

(5)貿易監督・管理制度のイノベーションを積極的に推し進める。企業が「自主的関税申告、セルフ通関、自動審査・通過、重点審査」等の監督・管理制度にかかるイノベーションの試行に参与することを奨励する。国際貿易にかかる「窓口の一本化」の建設を推し進める。(第2条)

(6)国内外人員による出入国、外国籍人員にかかるビザ、居留、就業許可、運転免許証の申請・受領等手続の利便性を引き上げる。(第2条)

2.今後の注意点

当該案に基づき、投資及び貿易を促進する税収政策を研究し、完全化する。税制改革の方向及び国際慣例に適合し、かつ、利益移転及び税源が蝕まれないという前提で、対外投資所得免除方式を調整し、完全化する。国外持分投資及びオフショア業務に適用する税収制度を研究し、完全化する。(全2条)

 

五、中国(天津)自由貿易試験区総案

2015年4月8日公布  2015年5月8日施行

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/20/content_9625.htm

1.主な内容

(1) 戦略的位置づけ。京津冀協同発展にかかる対外開放のハイレベルなプラットフォーム、全国改革開放先行区及び制度イノベーション試験区となり、世界のハイレベル自由貿易園区と向き合うよう努力する。(第1条)

(2) 政府職能の転換を加速。総合的かつ統一的行政審査・認可機関を確立し、「一つの印鑑により審査・認可を管理できる」サービスを実施する。集中的かつ統一的法執行総合機関を確立し、法執行能力を整え、「一機関が法執行を管理する」体制を実行する。行政審査・認可管理リスト制度を確立して完備し、「ワンストップ」サービスを完備する。(第3条)

(3) 投資分野開放の拡大。投資に参入する敷居を低くする。国際航運サービスを増強する。リース業の発展レベルを引き上げ、国のリース・イノベーション・モデル区の建設を加速化する。(第3条)

(4)  京津冀協同発展戦略を推進。京津冀税関区域における通関の一体化及び検査・権益通関業務の一体化改革を完全化する。区域における金融監督・管理協力を強化し、地域的な制限を打ち破る。国の規定の遵守を前提とし、京津冀三地域における財産権取引市場、技術取引市場、汚染物排出権取引市場及び二酸化炭素排出権取引市場は、自由貿易試験区において協力を展開し、区域汚染物排出権指標の有償での分配・使用を促進することができる。京津冀三地域の政府が規定に従い共同出資し、国家新興産業ベンチャー投資誘導基金及び国家科学技術成果転化誘導基金と協力体制を形成することをサポートする。(第3条)

2. 今後の注意点

当該案に基づき、税制改革方向及び国際慣例に適合し、かつ、利益移転及び税源が蝕まれないという前提で、国外持分投資及びオフショア業務の発展に適合する税収政策を積極的に研究し、完全化する。(全4条)

 

六、中国(広東)自由貿易試験区総案

2015年4月8日公布   2015年4月8日施行

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/20/content_9623.htm

  1. 主な内容

(1)  戦略的位置づけ。自由貿易試験区を広州、香港及びマカオにかかる協力深化モデル区並びに21世紀の海のシルクロードの重要な機軸、及び全国における新たな改革開放の先行地域として建設する。(第1条)

(2)  受け入れを緩和し、管理を厳しくする市場参入許可及び監督・管理制度を確立する。(第3条)

(3)  広州、香港及びマカオにおけるサービス貿易自由化の推進を深化させる。香港及びマカオ投資家への資格麺の要求、持分割合制限及び経営範囲等の参入許可制限をより一層取り消し、又は緩和し、金融サービス、交通航運サービス、商業貿易サービス、専門サービス及び科学技術サービス等の分野において重点的にブレイクスルーを図る。香港及びマカオによる現代型サービス業の集中発展区を建設する。企業が自由貿易試験区において本部を設立することを奨励し、自動車の並行輸入にかかる試行をサポートする。広州、香港及びマカオ三地域にかかる機関が自由貿易試験区において共同で人民元海外投資貸付基金を設立することをサポートする。自由貿易試験区における金融機関及び企業が香港、マカオ及び国外から人民元資金を借り入れることを許可する。自由貿易試験区における企業が香港株券市場において人民元株式を発行することを研究し、模索する。(第3条)

(4)  自由貿易試験区による影響・推進機能を高める。珠江デルタ地区における加工貿易のモデルチェンジ・グレードアップを導く。自由貿易試験区と泛珠デルタ地区が広範な経済貿易協力を展開するよう推し進める。(第3条)

2. 今後の注意点

当該案に基づき、税制改革の方向及び国際慣例に適合し、かつ、利益移転及び税源侵食をもたらさないという前提で、国外持分投資及びオフショア業務の発展に適合する税収政策を積極的に研究し、完全化する。また、条件に適合する地区は、政策及び規定に従い国外旅客による買物にかかる出国の際の税還付政策の実施を申請することができる。(全5条)

 

七、自由貿易試験区外商投資届出管理弁法(試行)

2015年4月8日公布  2015年5月8日施行

http://www.mofcom.gov.cn/article/b/c/201504/20150400946303.shtml

  1. 主な内容

(1)  外商投資企業にかかる契約及び定款の届出を企業設立又は変更にかかる登記手続から切り離す。つまり、届出を登記の前提条件としない。(第2条)

(2)  情報報告制度の導入。区内のすべての外商投資企業は、必ず年度報告義務を履行しなければならない。(第4条及び第5条)

(3)  外商投資にかかる監督・検査要求を細分化し、検査機関、方式、内容及び監督・検査において発見する問題の処罰処置を明確にする。(第13条、第14条及び第15条)

(4)  外商投資信義誠実档案システムを確立し、各機関の間における届出、信用情報の共有を実現する。(第16条)

  1. 今後の注意点

この弁法の趣旨は、対外開放をより一層拡大し、外商投資管理制度の改革を推し進め、自由貿易試験区において外商投資の利便性をより一層高めることにある。外商投資企業の契約及び定款にかかる審査認可制から届出制への変更を確実に実施し、同時に関連する部門による協同監督・管理というサービス体制を確立し、投資家及び外商投資企業は「法が禁止していなければ可能」、政府は「法による授権がなければ不可能」、「法定の職責は必須」となるよう、公開、透明、国際化、市場化、法治化された投資環境を確立する。(全19条)

 

八、人民法院における登記立件にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定

2015年4月15日公布  2015年5月1日施行

http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-14175.html

  1. 主な内容

(1)  人民法院は、法により受理すべき一審の民事起訴、行政起訴及び刑事自訴について、立件登記制を実施する。(第1条)

(2)  起訴及び自訴について、人民法院は、一律に訴状を受理し、書面による証憑を発行し、かつ、受領日を明記しなければならない。(第2条)

(3)  当事者が提出する訴状及び資料が要求に適合しない場合には、人民法院は、指定期間内に補正するよう一括して書面により告知しなければならない。(第7条)

(4)  人民法院は、起訴及び自訴について、受理せず、又は立件しない場合には、書面による裁定又は決定を発行し、かつ、理由を明記しなければならない。(第9条)

  1. 今後の注意点

立件業務において、訴状の不受理、訴状受理後に書面による証憑を発行しない、当事者に訴状の補正内容を一括して告知しない、案件があるのに立件しない、立件を遅らせる、立件に干渉する、かつ、立件せず、裁定又は決定もしない、等の法令・規律違反事由がある場合には、当事者は、受訴する人民法院又は上級人民法院に苦情を申し立てることができる。(全20条)

作成日:2015年04月30日