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中国の海洋汚染の根治の難しさ 環境保護局の管轄は海に及ばず、海洋局の管轄は陸地に及ばない

6月8日は世界海洋日であり、中国の全国海洋宣伝日でもある。海と人類社会の発展の歴史には密接な関係がある。海は地球の気候の「調節機」であるばかりではなく、人類のために様々な水産資源を提供し、国際貨物の運輸業務の3分の2以上を担っている。しかし、沿海地区と海上経済活動の迅速な拡大に伴い、人類が海から得る資源の数と種類が急速に増えたが、海洋の自浄能力は濫用され、母なる青い海が耐えられないような重い負荷が与えられている。

緑潮や赤潮は、母なる青い海の涙である。

国家海洋局北海予報センターは、最近渤海および黄海北部において大規模な緑潮を観測した。6月7日の観測データが示すところでは、黄渤海の緑潮の面積は約286平方キロメートル、分布面積は約19,801平方キロメートル、山東省日照市に最も近い場所では約10キロメートル、山東省青島に最も近い場所で約14キロメートルに接近し、徐々に北方向へ移動を続けている。

緑潮は今年も山東省の一部の沿海地区に押し寄せてきている。緑色の綿状の緑潮が、またしても砂浜に積み上げられ、強い海藻の匂いを放ち、作業員が一台また一台とその緑潮を埋立地に運搬して処理している。2007年以降、この緑潮が山東省の沿海地区に影響を及ぼすのは今回で8回目であり、沿海地区の旅行業と養殖業に打撃を与えている。

現在、科学研究者による緑潮形成のメカニズムと大繁殖の原因は未だに研究段階であり、定説はないが、基本的な共通認識は海水中に大量に含まれたアンモニアと窒素が緑潮形成の必須の要素とされている。したがって、緑潮は沿海の経済活動により海に排出された大量の汚染物質がもたらした悪影響であり、大海原に緑潮が大発生し、海水中に過度に含まれたアンモニアと窒素を吸收し、自ら水質を回復しようとしているのは、人類に警告を発するものである。

突発的な重油漏れは、母なる青い海の活力を著しく傷つける

重油漏れは、近年の海洋環境の主な汚染源の一つである。船舶の正常な航行により発生する油汚れ、油漏れおよび陸地を発生源とする工業汚染物質のほか、大型船舶の衝突による沈没、油田掘削基地および沿海の石油精製工場で発生した事故等、重大な突発的な重油漏れ事故は海洋の生態環境に著しい損害をもたらしている。

2010年7月16日、大連新港の石油パイプラインに爆発事故が発生した。汚染された海域は約430平方キロメートル、うち重度の汚染海域は約12平方キロメートル、軽度の汚染海域は約52平方キロメートルに及んだ。

2011年6月初め、渤海蓬莱19-3油田B、C基地にて相次いで重油漏れ事故が発生した。事故により汚染された海水の面積は少なくとも5,500平方キロメートルにおよび、主に蓬莱19-3油田周辺の西北部海域に集中している。うち劣四類に分類された海水海域の面積の累計は約870平方キロメートルとなった。

2013年11月22日、中石化東黄石油パイプラインで発生した爆発事故は原油の海への流出をもたらした。検測結果によれば、海面の油膜の分布の多い地区は、青島団島から黄島を結ぶラインの膠州湾内側の海域に集中しており、一部の海域の石油類濃度は、第二類海水水質基準を超え、黄島大石頭から西岸の砂浜に石油汚染の分布が広がっている。

重大な重油漏れ事故は、海洋の生態環境に悪影響を及ぼす。海洋環境の専門家は、更に悲観的な見方である。専門家は、重油漏れ事故は、渤海の生態システムに長期的な悪影響を及ぼし、特に海底の油汚れは希釈や自浄が難しく、海底に生息する生物に危害を及ぼし、海洋の生物連鎖全体に悪影響を及ぼすと見ている。

14.4万平方キロメートルの海域が第一類水質の基準に達していない

国家海洋局が発表した『2013年中国海洋環境状況声明』によれば、2013年の中国の海洋環境の状況は総体的には悪くないが、陸地を発生源とする排出汚染は依然として大きく、近海の一部海域の汚染が著しく、第一類海水水質に達していない海域の面積は14.4万平方キロメートルであり、富栄養価状態を示す海域の面積は約6.5万平方キロメートルにのぼっている。著しい汚染区域は主に黄海北部、遼東湾、渤海湾、莱州湾、江蘇塩城、長江口、杭州湾、珠江口等の近海海域に分布しており、主な汚染要素は無機アンモニア、活性燐酸および石油類である。

国家海洋局北海観測センターの孫培艶研究員は、新聞の取材を受けた際、海洋環境汚染源の80%以上は陸地からのものであり、これには河流からもたらされ、沿海の養殖業および工業汚染物質の排出等が含まれていると述べた。したがって陸地の汚染物質の海への総排出量を厳しく抑え、陸地から海へ流入する汚染物質が排出基準に到達しているかどうかを監督管理しなければならないと述べた。

しかし、一部の海洋および漁業機関からの情報によれば、陸地を発生源とする汚染物質の海への排出と監督管理は「環境保護局の管轄は海に及ばず、海洋機関の管轄は陸地に及ばない」という窮地に立たされている。海洋管理機関は、「海への排出口」および「海洋投棄地区」の監督管理のみしか行えないため、上流の河川からの汚染に対する監督管理は難しい。各地の環境保護機関も現地の河川のみしか監督管理できないため、地区を跨ぐ河川には手段がない。海への排出部分については、海洋機関との管轄権が不明確である。

このほか、海洋法の専門家は次のように指摘する。海洋環境保護法は、1999年に改訂されたのを最後に改訂されていない。海洋環境に汚染という損害を招いた場合、加害者が如何に賠償するか、海洋の生態を如何に修復するか等の内容について付帯規定および法的根拠が欠けているため、新たな改訂が待たれる。

(北京青年報より)

作成日:2014年07月18日