会社の抹消・休眠・不動産処理

合弁会社を「自然消滅」させることは可能か

【Q】当社は日本の企業で、中国企業と共同で合弁会社を設立しました。当社は20%の株式を有しています。しかし、合弁会社の設立後、様々な理由によって実際には経営が行われていないにもかかわらず、従業員への賃金や工場建物の賃貸料などの費用は支払わなければならない事態となっています。合弁会社がこのまま存続すれば損失は益々拡大し、当社の合法的な権利と利益に多大なる損害をもたらすことが予想されます。会社の解散プロセスは複雑で時間もかかると聞きましたが、そうであれば当社は合弁会社の経営に関与せずに「自然消滅」するまで放っておいても宜しいでしょうか。

【A】実務において、正常な会社の解散、清算プロセスを踏まずに会社の存続を終了させるケースは確かに存在しています。こうした事態に対して、工商機関は営業許可証の取り上げ等の処分を科すほか、『「中華人民共和国会社法」の適用に関する若干の問題についての最高人民法院の規定(2)』には、「会社の株主、株式会社の董事、株式所有者の履行義務の怠慢により、会社の重要な財産、帳簿、重要文書等が滅失し、清算プロセスを行うことができず、債権者が会社株主、株主会社の董事、株式所有者に対して会社の債務について連帯で弁済責任を負うよう主張した場合、裁判所はこれを支持しなければならない。」と明確に規定されています。

 このため、もし清算義務を負う者(即ち会社の株主)が履行義務の怠慢により会社の財産、帳簿、重要文書等を滅失させ、会社が清算プロセスを行うことができなくした場合、株主は会社の債務について連帯責任を負い、会社の債権者は株主に対して債務の弁済を求めることが可能となります。

 この場合、会社株主の責任は、合弁会社の出資額をもって対外的責任を負うことに限らず、債権者の損失に対して無限の連帯責任を負う可能性がある点についても注意が必要でしょう。貴社が中国においてその他の投資を行っているか、財産を所有している場合、裁判所がそれらの投資または財産をもって債務の返済を行うよう命じる可能性も十分にあります。

 したがいまして、きちんとした清算プロセスを経ずに「自然消滅」するまで放っておくという方法は、非常に大きな法的リスクがあるといえ、株主にとって清算よりさらに大きなコストを費やすこととなる可能性もあります。このため、『会社法』等の法律規定に照らして、会社の清算、登録抹消手続きを行なわれることをお勧めします。

作成日:2013年07月22日