法律相談Q&A

合弁会社の出資金の回収について

【Q1】当社は、2年前に中国企業と中国に合弁会社を設立いたしました。当社は現金で出資し、中国側は土地と工場建物で現物出資することになっており、当社側は既に合弁契約に約定された出資期限通りに合弁会社の銀行口座に出資金を払い込み、出資検査も完了しています。しかし中国側が現物出資する筈であった工場建物の竣工が遅れ、合弁契約に約定した出資期限までに出資が完了しませんでした。このように中国側が合弁契約に違反した場合、当社は合弁会社の銀行口座の中から直接当社の出資金を回収することが可能でしょうか。
【A】貴社は、既に出資金を納付し、出資検査を完了しているため、その払い込んだ出資金は、現時点では合弁会社の登録資本金となってしまっています。このため貴社が合弁会社の銀行口座から直接出資金を回収する行為は、『中華人民共和国会社法』第36条の「会社が設立された後で、株主は出資金を引き出してはならない。」という規定に違反するため、法的責任を追及される可能性があり、法的リスクがあるかと思われます。
中国側が合弁契約の約定通り出資しない場合、貴社は法に基づいて合弁契約を解除し、合弁会社を解散して、合弁会社の財産を清算することができ、合弁会社の約定に基づいて中国側の違約責任を追及し、貴社の損失を賠償することを要求することが可能です。また、中国側と協議して、貴社の持分を中国側に譲渡するという方法をとることも可能です。

【Q2】上記の合弁契約を解除して合弁会社を清算するという方法をとる場合、中国側の同意が必要でしょうか。中国側が同意しなかった場合はどうすれば良いでしょうか。
【A】『中外合資経営企業合弁各側の出資に関する若干の規定』第5条には、「合弁各当事者が法律に定める期限までに出資の払い込みをすることができない場合には、合弁会社は自動的に解散したものとみなす。……」と規定されており、中国側の同意は必要ないものと思われます。ただし実務において、工商機関及び商務機関(外資による投資を審査認可する機関)は、将来的に合弁双方間で紛争が生じることを避けるため、通常上記の法律規定に基づいて、合弁会社の登記抹消手続きを行うことはなく、合弁双方が合弁会社の解散に合意し、なお且つ合弁会社の董事会で当該決議を行った後、正常な解散、清算プロセスに基づいて手続きを行うよう求めるケースが多いようです。
したがいまして、合弁会社を解散し、迅速に出資金を回収するため、貴社は中国側と合弁の解消について先ず協議することをお勧めいたします。協議では双方が自らの最大限の利益えお主張するため、中国側と交渉する際には、中国側の交渉の落とし所を探り、相手側の弱点(例えば相手側が違約、法を犯している部分等)を掴むとともに、貴社の最終目標と優位な点を明確化し、交渉戦略を十分に練る必要があると思われます。つまり、相手を知り自分を知ることにより、交渉において最大限にイニシアチブをとれるよう努力しましょう。
それでも最終的に双方の協議が成立しなかった場合、法律の規定に基づいて合弁契約を解除し、中国側の違約責任を追及する訴訟を提起することとなります。訴訟となった場合の戦略は、合弁契約の履行状況、合弁会社の経営管理状況、証拠材料等の要素を勘案し、法律事務所と相談しながら進めることをお勧めいたします。

作成日:2013年04月22日