最新法律動向

突発性疾病で死亡した場合でも救急医療48時間以降は労災と認定されない

 ボイス・オブ・チャイナ「イブニング・ニュース・ラッシュ」番組での報道によれば、最近、山東済寧市の楊さんが残業をしていた際、突発性の脳溢血に罹患して亡くなったという。しかし葬儀を済ませた後、家族は「規定によると残業中に倒れたとしても、救急医療を受けて48時間以内に亡くなった場合にしか労災として認定されない。」ということを建設会社から告げられた。このため「労災認定は48時間以内まで」という規定の妥当性について、世論の関心を呼ぶこととなった。

 建築会社は、従業員が脳溢血を罹患して48時間以降に亡くなった場合、労災とは見なさないという。楊さんは、今年で51歳になる。ある建築会社に勤務していて、お昼の残業の際に突発性の脳溢血のために気絶して倒れた。従業員仲間は、すぐに楊さんを近くの病院へ救急医療を受けさせるために運んだ。家族は楊さんの健康回復を願い、病院も最大限の努力を尽くしたが、4日後に楊さんは救急医療の甲斐なく、帰らぬ人となった。職場での突発性疾病であるため、家族は労災認定を希望し、山東省農民工権利維持センターの李強弁護士に認定手続きの代行を依頼した。李強弁護士は、楊さんの働いていた建設会社、労働部門と交渉した結果、相手から「楊さんは救急医療を受けて48時間以降に死亡したため、労災とは見なされない。」という答えが返ってきた。労災と認定されれば、その家族は20万元から30万元の補償金を受け取れる。しかし、労災に認定されなければ2万元から3万元の葬儀費補助金が得られるだけに過ぎない。これは、48時間以降か以内かの差にすぎないのである。

 山東省農民工権利維持センターの李弁護士は、「死亡後、家族が建設会社に行ったところ、建築会社からは48時間以降は労災に認定されないと言われた。家族は、これを信じられなかったため、労働局に行って労災認定を受けようとした。すると労働局からは『このケースは労災ではなくなったため、労災待遇を受けることはできない。』と明確に告げられました。」と話した。また、労働災害の認定についての根拠である『労働災害保険条例』第15条では、「労働時間及び業務上の職位において、突発的疾病により死亡したか、48時間内に緊急救助を経たけれども効果がなく死亡したとき。」を労災と見なすと規定されていると述べた。把握しているところでは、『労働災害保険条例』が保護するのは勤務中に事故に遭い発生した傷害に対してであり、「突発性疾病」を労災保護の中に組み入れたのは、労働者に対する保護の為である。このため48時間と限定している理由は明白である。つまり突発性疾病の範囲としての労災認定が際限なく拡大されることを避けるためである。

 「48時間」制限は、新たな不公平を生んでいる。多くの突発性疾病を患う従業員は、人命維持か労災維持かの選択を迫られている。これは一部の悪徳会社に法の隙間を与え、故意に治療時間を延長し、最後には労災認定を逃れさせている。甚だしきは会社が「積極的に」救急医療を施すのに対し、家族が「どうして良いかわからない」というケースさえ生んでいる。李強弁護士は言う。「会社は、48時間を超過させるために、故意に人工呼吸器を使用して呼吸させている。家族が一目見れば当該医療を施すべきだと思えるほどだが、実際には患者を助けるためではない。」これは道徳的に問題であるにも関わらず、確かにこの点に法の空白が存在していると言える。

 専門家は、「48時間」の時間制限を緩和し、労働者の権利及び利益の保護を呼び掛けている。労働者の労働強度が高まるにつれ、「過労死」等の医学と法律上の境界線が曖昧なケースが日々増加している。一旦「勤務時間及び勤務職位」に発生した場合、「48時間」の制限のために労災待遇を受けることができなくなることは、死亡した労働者の家族が感情的に受け入れ難いのみならず、一般人の常識という観点から見ても、同じようにこうした規定に対する疑問を抱かずにはいられない。

 市民の劉さんは言う。「私の個人的意見では不合理だと思う。労災には様々なケースがある。実情に基づいて具体的に分析すべきだと思う。」李強弁護士は、「医療レベルの向上により、救急医療が48時間を超えることは珍しくなくなった。こうしたケースについて、救急医療を施した後、人工呼吸器等の補助設備により生命を維持されている場合、48時間の制限を緩和することが出来るとするなど、元々の融通の利かない48時間について法律は若干の補足規定を設ける必要があると思う。極めて特殊なケースについては、補足が可能だと思う。脳溢血のような病気又は特別な医療機器を使用する際、人工呼吸器を使用し、植物人間となり、人工呼吸器で数日生命を維持できるだけとなった場合、こうした状況は死亡に等しいため、労災認定を申請できるとした方が良いと思う。」と話す。

 専門家は、立法の本来の趣旨は、労働者が作業により受傷したか死亡した際に救済を得られることを保障することだと認識している。「48時間」で労災に該当するか否かに境界線を引くことは適切ではないため、できる限り労働者保護という観点から修正すべきであると考える。

 泰山管理学院の解鹏教授は言う。「我々が現在直面している問題はより複雑かも知れない。従って我々には労災認定のこうした条件及び基準についても適切に調整することが求められている。例えば一部の労災による死亡は、48時間を経過しているかも知れず、こうしたケースが労災として認定されないことは、我々一般の労働者にとって確かに不利なことである。従って速やかに是正し、調整する必要がある。こうすることは、法律が保護すべき範囲の確保に有益だと思われる。」

(中国ラジオネットより)

作成日:2012年10月18日