最新法律動向

発展改革委員会、家電値下げキャンペーンを調査

 発展改革委員会は、8月に行われた家電値下げキャンペーンを調査したところ、価格詐欺が疑われるため、法に基づいて処理する意向だという。

 「家電値下げキャンペーン」は、既に政府の監督部門から高い関心を集めていた。国家発展改革委員会価格監督検査独占禁止局によれば、同局は既に家電値下げキャンペーンに対する調査を開始し、現時点までの調査によれば、値下げキャンペーンの過程で、家電量販店のセールスプロモーションにおいて、原価を欺瞞し、消費者を騙す行為があったことが疑われているという。発展改革委員会は、当該行為を法に基づいて処分する意向だが、現在のところ具体的な結論と罰金額は決まっていないという。

 家電値下げキャンペーンは、「雷が鳴るばかりで雨が降らない。」と揶揄された
 
8月中旬、京東・国美・蘇寧の3大家電量販店が家電値下げキャンペーンを開始した。8月14日、京東の劉強東CEOは、先ずミニブログ上で京東の白物家電は「3年間0利益」、全ての白物家電は、国美・蘇寧のチェーン店より10%以上安いことを保証し、価格調査員を国美・蘇寧に派遣する、と述べた。なお且つ、国美・蘇寧をライバルにすることに決めた。蘇寧易購の李斌執行副総裁は、当日の午後4時には、京東の挑戦に応じて、「蘇寧易購の全商品の価格は、京東より値下げします。蘇寧易購の価格が京東より高かった場合、ただちに価格を調整し、賠償金を支払います。」と述べた。国美の何陽青副総裁は、当日22時に家電値下げキャンペーンへの参戦を表明した。「国美も、値下げキャンペーンに参戦します。8月15日9時より、国美電器のネットショップ上の全ての価格を京東より5%安くします。」

これは、世論の幅広い注目を呼んだ。但し、多くのメディアの報道が証明したように、家電量販店の値下げキャンペーンは、「雷が鳴るばかりで雨が降ら」ず、「消費者を振り回す」ものだった。

3つのルートでの調査グループが調査を開始
 
確かなルートから得た情報によれば、当該事案が発生し、各界より高い関心を集めた後、関係部門は3調査グループを組織し、当該企業3社に対する調査を開始した。発展改革委員会は、家電量販店3社より価格値下げキャンペーンについて事情聴取を行った。聴取による情報を総合すると、今回発展改革委員会が3大家電量販店の「価格値下げキャンペーン」を調査した結果、主な問題は、原価を欺瞞する行為、つまりキャンペーン価格が原価より高いこと、価格に対する約束を履行せず、店に商品があるにも関わらず、ネットショップ上では品切れとして、消費者を騙したこと等である。

 中国の関連法規定によれば、所謂商品原価とは、セールスプロモーション開始前7日以内の商品取引の最低価格をいう。関係部門の調査が示すところによれば、家電量販店は価格値下げキャンペーンの過程で原価を欺瞞する行為があったという。つまり、実際のセールスプロモーション価格は、その開始前7日以内の最低価格を上回っていた。また、京東の劉強東CEOは、ミニブログ上で京東の白物家電は「3年間0利益」を保証すると述べた。しかし、関係部門が15種類の商品のサンプリング調査を行ったところ、これらの商品の総利益率は最低4%、最高で22.4%に上っており、セールスプロモーションを開始した後の総利益率でさえ10%に達していたことが判明した。

具体的な結論及び罰金額は未定
 
この他、ある家電量販店は、低価格で商品を販売することを約束していたものの、ネットショップ上では在庫切れと表示した。しかし、実際に調査した結果、当該店の倉庫には、在庫があったことが明らかとなった。また、ある家電量販店がセールスプロモーションを行った商品は、当該店のみの商品であり、他の店には全く存在しない商品であった。このため、約束した価格が本当に最低価格なのか否か比較することができないものであった。

 この事案が短期間では具体的な結論を得られなかった場合、調査プロセスに基づいて公聴会や告知等のプロセスを踏む必要がある。現在、具体的な結論及び罰金額は未定だが、関係部門は、法に基づいて処分すると述べている。上記の政府関係者は、正常な市場競争は奨励すべきだが、ネット上の販売も規則に則って行われるべきであり、消費者を騙してはならないと述べた。

資料
価格監督局
価格監督局とは、発展改革委員会価格監督検査独占禁止局の略称であり、去年7月1日に国家発展改革委員会価格監督検査司が名称変更したことにより設立されたものである。

その主な職能には、以下の3点が含まれる。
①国の各部門、省級人民政府及び部門、中央企業・事業者、社会組織の価格、費用徴収にかかる違法案件を調査し、処分すること。
②各省間の価格、費用徴収にかかる違法案件を協力して処理し、重大な価格、費用徴収にかかる違法案件を調査し、処分すること。
③価格独占禁止の法執行業務・調査に責任を負い、重大な価格独占及び案件を調査し、認定すること。

 「家電値下げキャンペーン」の中の4大「罪状」
1.原価の欺瞞
 セールスプロモーション価格が原価より高かった。家電量販店3社いずれにも原価を欺瞞する行為が存在していた。つまり実際のセールスプロモーション価格は、その前の7日以内の取引最低額よりも高かった。

2.「0利益」という約束の未履行
 京東は、全ての白物家電で今後3年間は0利益を保証すると述べていた。しかし、関係部門のサンプリング調査によれば、一部の商品では、セールスプロモーション後の最高総利益率は、10%にも達していたことが発覚した。

3.「在庫切れ」なのに実際には在庫が存在していた
 多くのネットユーザーから、家電量販店の在庫切れが著しかったという意見が寄せられた。ある家電量販店は、低価格で商品を販売すると約束しながら、ネットショップ上では、在庫切れと明示されていた。しかし、実際に調査した結果、家電量販店の倉庫には、在庫が存在していたことが明らかとなっている。

4.競合する同一製品が少ない
 値下げキャンペーンでは、家電量販店間で同一商品が競合する割合が極めて低かった。ある家電量販店がセールスプロモーションした商品に至っては、当該店だけの商品であり、その他の店には全く存在しない商品であった。従って当該価格が果たして最低価格なのか比較することが出来ない商品であった。

■関連法細則
 『価格法』第14条 経営者は、次の各号に掲げる不正価格行為をしてはならない。
(1)相互に通謀し、市場価格を操作し、他の経営者又は消費者の合法的な権利及び利益を損う。
(2)法により価格を下げて生鮮商品、季節性商品及び在庫商品等の商品を処理することを除き、競争相手を排除するか、市場を独占するため、原価を下回る価格によりダンピングし、正常な生産経営秩序を乱し、国の利益又は他の経営者の合法的な権利及び利益を損なう。
(3)価格上昇の情報を捏造するか、流布し、価格をつり上げ、商品価格の暴騰を推進する。
(4)虚偽か、人を誤解させる価格手段を利用し、消費者又は他の経営者を誘導・欺罔して取引を行う。
(5)同一の商品又はサービスを供与する際に、同等な取引条件を持つ他の経営者に対し価格的な差別を行う。
(6)等級をつり上げるか、等級を引き下げる等の手段を講じて商品を買い付けるか、販売するか、サービスを供与し、形を変えた価格引き上げを行うか、引き下げを行う。

 ■弁護士による分析
罰金額は、判断が難しい
 上海大邦弁護士事務所の遊雲庭パートナー弁護士は、行政上の職権という角度から見れば、発展改革委員会には、確かに価格詐欺に対して調査を行い罰金を科し、これにより消費者の権利及び利益を保証する権利を有する、と述べた。

 同弁護士は、京東・国美・蘇寧の家電値下げキャンペーンは言い過ぎたと考えている。例えば0利益で販売することなど、理論的にはありえない事だからだ。「コマーシャルは、最低限真実性を保証しなければならない。この事件は、全ての販売業界にとって行き過ぎた広告を行うことは法を犯すことになるという警鐘になったと思う。現在、中国の商業環境全体が誠実とは言えないものであり、今回の調査は販売業界に対して良い教訓になったと思う。」と話した。また、罰金額について、この事件の複雑さからみて具体的な金額を判断するのは難しいと述べ、これらの家電量販店は、確かに広告通りに値下げしていなかったというものの、約束を履行している商品が全くなかったとも言えない。従って各社に対する具体的な罰金額は判断が難しいが、最終的には数十万元になるのではないかと予想しているという。
 2010年に改訂された『価格違法行為行政処罰規定』の第7条によれば、「虚偽か、人を誤解させる価格手段を利用して消費者又は他の経営者を誘導・欺罔して当該経営者と取引をさせた場合には、これを是正するよう命じ、違法所得を没収するものとし、違法所得の5倍以下の罰金を併科する。違法所得がない場合には、5万元以上50万元以下の罰金を科す。事案が重大である場合には、営業停止・整頓を命じるか、工商行政管理機関が営業許可証を取り消す。」と規定されている。

■商務局の反応
商務部は、今回の家電値下げキャンペーンに対し態度を表明した
 今回の家電値下げキャンペーン騒動に対して、商務部は政府監督管理部門として最初に態度を表明した機関であった。8月16日、商務部の瀋丹陽スポークスマンは、「商務部として、個別の電子商取引企業が値引きという方法によりセールスプロモーション活動を展開していることに注目している。なお且つこれにより惹起された熱い論議及び消費者並びにサプライヤーに高い関心を持っている。今後も商務部は事態の推移を見守っていく。今回の家電値下げキャンペーンが違法か否かの判断については、法律法規に基づく判断が必要である。」と述べた。

 現在、値引きセールスプロモーションに関する法律規定には、『不正競争防止法』、『独占禁止法』及び『価格法』などがある。価格を所管する部門、工商法執行部門等が法執行の主体として法に基づく調査・証拠収集を行った上で、結論を下すことができる。」

 8月17日、商務部流通発展司の王徳生副司長は、次のように述べた。「電子商取引の各側の権利、責任及び義務 は、関連法規を完備する以外に、関連基準についても細分化及び補足する必要があり、『電子商取引運営規範』等の基準は、既に制定計画に組み込まれている。商務部は、電子商取引、ネットショッピングの発展の必要性に適応するため、『ネットショップ信用度評価についての指針』、『ネット団体購入企業管理規範』、『ネット団体購入企業信用度評価システム』、『電子商取引運営規範』の制定を計画に組み込む等、今後もこの分野の基準の制定に力を注いでいく。」

(新京報より)

作成日:2012年09月24日