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日本ニコン、中国ニコンを訴えて勝訴―20万元の賠償金を獲得―

中国「ニコン電動車」は、商標専用権を獲得していた
 2000年3月28日に設立された金華市五星エレベータ有限公司は、数回名称変更した後、2006年6月27日に会社名称を最終的に浙江尼康(ニコン)に変更し、経営範囲を当初の人力三輪車、簡易エレベータの製造販売から電動自転車、電動アシスト車及び電子出版物並びに電子情報製品を除く電子製品の製造販売に変更した。 
 2001年8月27日、当時の金華市五星電動車両有限公司は、「尼康」という商標及びその図を登録出願し、2002年12月7日に商標局より認可を受けた。これにより「尼康」という商標及びその図の商標専用権を登録、商品への使用範囲は第12類「電動車両、電動スケートボード、電動オートバイ等。」と決められた。 
 当該会社は、そのウェブサイト上の写真、デパート売り場のディスプレイ、電動自転車及び電動三輪車の車体等に、それぞれ「尼康」及び「NICOM」の文字を使用した。会社入口、ビル外壁、社用車のボディ、広告資料、尼康広報誌等の中に「尼康車業」、「尼康電動自転車」、「尼康」の文字を使用した。この電動自転車は有名になり、電動自転車を専門に取り扱っている朱国平氏は、西安市太華市場にテナントを有し、当該自転車の卸売・小売販売を開始。キャッチコピーとして、「中国尼康電動車は、各地の取次店を募集しています」と書かれ、その中で「尼康」及び「NICOM」という文字は、特に字体が目立つように示されていた。

株式会社ニコンが浙江ニコンを提訴 
 この浙江尼康の行為は、百年近い歴史を有する株式会社ニコンに大きな不満をもたらした。そして一枚の訴状が浙江尼康、朱国平氏及び太華市場を法廷に招き、告発されることとなったのである。 
 株式会社ニコンによれば、原告は1946年よりカメラ製品に「Nikon」の商標を使用していたという。その後、当該商標は、日本及び世界の多くの国と地域にて登録され使用されるようになった。1979年8月15日に株式会社ニコンは、中国にて当該商標の専用権を獲得した。この商標を使用可能な商品は「類似商品及びサービス区分表」第9類「カメラ、映画カメラ、レンズ等。」と決められた。1986年2月15日に「尼康」の登録商標専用権も獲得した。この商標を使用可能な商品は第9類「カメラ、メガネ、光学設備及び器具等。」と決められた。 
 株式会社ニコンは、1979年8月15日から2008年1月14日までの間に、合計44種類の「Nikon」商標を登録、1986年2月15日から2005年9月14日の間に合計40種類の「尼康」商標を登録した。同時に、株式会社ニコンは、中国に工場を建設し、1996年から、広東省に広東尼康カメラ有限公司、杭州尼康カメラ有限公司等7社、ニコンの系列会社を相次いて中国国内に設立した。また、1995年9月11日から2008年12月15の期間、株式会社ニコンと南京江南光電(集団)股份有限公司、広東尼康カメラ有限公司等、中国の会社と商標使用許可契約を締結し、中国の会社が「尼康」という文字及び字母の登録商標及び商号を使用することを許可した。 
 株式会社ニコンは、1980年から2009年の期間、「写真とビデオ映像」、「デジタル撮影」、「揚子晚報」、「北京青年報」及びsina.com、QQ.com等、中国の定期刊行物、新聞、ウェブサイト上にその商品に関する多くの広告宣伝を掲出した。株式会社ニコンは、浙江尼康の「尼康」と、同社の登録商標である「尼康」は同一であり、浙江尼康が使用する「NIKOM」と、同社が登録した「Nikon」は類似していると考えた。浙江尼康は「ニコン」を商号とし、同時に株式会社ニコンの企業名称件も侵害しており、不当競争に当たるとして、これに関する各種費用及び損失合計200万元の賠償を請求した。

 

「Nikon」と「尼康」が周知商標であるか否かが焦点となる
 法廷審理において、浙江尼康は原告の商標は、周知商標として認められていないと主張し、株式会社ニコンは、裁判所が、これを周知商標として認めるように請求した。 
 これまでにも株式会社ニコンは、2007年12月5日、浙江尼康が「尼康」商標及び図を所有したことについて取消請求を行った。商標審査委員会は、2009年5月18日に浙江尼康の登録商標を取り消す裁定を行った。但し、浙江尼康側はこれを不服として、北京市第一中級人民法院へ行政訴訟を起こした。当該裁判所は、2009年12月29日一審判決を下し、商標審査委員会の出した裁定を維持した。この判決が下された後、浙江尼康は、これを不服として、北京市高級人民法院へ上訴した。2010年12月14日、北京市高級人民法院は、上告を却下し、一審判決を維持する最終判決を下した。 
 今回の両社の争点は、株式会社ニコンが所有する商標への侵害行為が発生した時点での当該商標の周知度である。これによって2つの問題が惹起された。太華市場、朱国平氏、浙江尼康の侵害行為は、株式会社尼ニコンの登録商標専用権を侵害したかどうか。浙江尼康が企業名称として「尼康」の文字を使用していることは不当競争に当たるかどうか。所謂周知商標とは、中国国内にて関連する公衆に広く知られている商標のことを指す。商標法第14条によれば、周知商標として認定される要素として、認定する際に考慮すべき要素は以下の5点とされている。
(1) 関連する公衆の当該商標に対する周知の程度
(2) 当該商標使用の継続期間
(3) 当該商標に関する何らかの広告業務の継続期間、程度及び地理的範囲
(4) 当該商標が周知商標として保護を受けた記録
(5) 当該商標が周知であることに関するその他の要素 
 法廷審理において、株式会社ニコンが所有する「Nikon」及び「尼康」の登録商標は、国家工商行政管理総局に周知商標として認定されているものの、浙江尼康は、この工商局の認定を承認しなかった。従って、株式会社ニコンは、裁判所に認定を請求した。この焦点となっている問題に対し、西安市人民中級法院のやり方は、最も道理に適ったものであった。彼らは工商局の認定レベルに留まらず、当事者が裁判所に認定を求め、なお且つその認定が他の要素を判断する基本的な事実であるとして、最高裁判所の規定に基づいて事実認定を行った。最高裁判所の関連する司法解釈では、「人民法院が周知商標かどうかを認定する場合、その周知の事実を根拠として、商標法第14条が定める各種の要素を証明することを総合的に考慮しなければならない。但し、案件の具体的な状況に基づいて当該規定の全ての要素を考慮して周知商標と認定する必要のないケースを除く。中国国境内で公衆に周知された商標に対し、原告が当該商標は周知されているという基本的な証拠又は被告に異議がない場合、人民法院は当該商標の事実を認定する。」と認定している。西安市人民中級法院は、これに基づいて、株式会社ニコンが所有する文字及び図形の商標登録は、既に周知状態に到達していると認定した。 
 浙江尼康が商号として使用している「尼康」と株式会社ニコンの中国語名は同一であり、使用している「NIKOM」と株式会社ニコンの所有する「Nikon」は、文字の読み方、字義及び字母の組み合わせ共に似通っており、公衆がその製品の出所に誤解を生ずるに十分である。なお且つ浙江尼康の元の登録商標は既に取消されている。従って浙江尼康、太華市場、朱国平氏の行為は権利侵害行為を構成している。 
 裁判所は、株式会社ニコンは「尼康」の登録商標権を有しているばかりでなく、同時に企業名称権を有しており、株式会社ニコンの「尼康」は、登録商標としてばかりではなく、商号としても浙江尼康より先んじていたと認定した。また、浙江尼康が、その企業名称を「尼康」に変更した日は2006年6月27日であり、当時株式会社ニコンは消費者に一定の知名度があったため、関連する公衆に周知するために、浙江尼康が「尼康」を商号として使用したことは明らかに消費者が誤認することを狙った疑いがある。従って、浙江尼康が企業名称として「尼康」の文字を使用しており不正競争を構成している。 
 最終的に、裁判所は3被告敗訴の判決を下し、原告に20万元を賠償することを命じた。浙江尼康は、再び「尼康」の文字を使用することはできなくなり、太華市場及び朱国平氏は、再び原告の登録商標を使用した広告を行うことができなくなった。

 (法制ネットより)

作成日:2011年10月28日