最新法律動向

医療保険に関する問題

申告すべき内容を隠していた場合、保険会社は契約を解除する権利があると裁判所が判決

 自分の子供に病歴があることを知っていながら、保険会社を欺いて、医療保険に加入した。暫くして子供が病気になり入院治療を受けたため、その親は保険会社に保険金を請求し、保険会社から保険金の支払いを拒否された。この事件が発生してから保険加入者と保険会社の双方は法廷で争うことになった。結果はどうなっただろうか。最近、ウルムチ市天山区人民法院は、保険会社には、この契約を解除する権利があるという判決を下した。

 原告の文氏は、ウルムチ市の個人経営者である。文氏は、訴状の中で、こう述べている。「私の息子は2008年12月に出まれました。2009年に息子の為に被告=ウルムチ市のある保険会社の保険に加入しました。この保険会社の担当者2名は息子を見て、『お子さんは健康で、すくすく育っていますね。』と言いました。その時、乳幼児アンケートに記入しませんでしたが、保険会社の担当者達も私に出産の際の状況と、子供が生まれた際の状況を尋ねませんでした。2010年7月、子供が急にひきつけを起こしたため、病院に入院させたところ、息子が継続性てんかんと脳性マヒの合併症に罹っていることを知らされました。退院後、保険会社に保険金の支払いを求めたところ、この保険会社から支払いを拒否され、なおかつ保険契約を解除されてしまいました。」

 文氏は、更にこう述べている。「この保険については既に2年間分の医療保険料を支払っているし、保険契約は型通りの契約だったため、私は署名しただけで、契約のその他の部分は、私自身が書いたのではないため、保険会社を騙したわけではありません。したがって、この保険会社は契約を履行すべきだとと考えます。裁判所に保険会社が契約を継続して履行するという判決を下すよう求めます。」

 これに対し、保険会社の担当者達は、法廷においてこう反論した。「文氏が保険加入の際に事実をありのままに申告する義務を履行しなかったため、私達は、2010年8月に契約を解除し、保険金の支払いを拒否し、なお且つ保険料も返金しないと決定しました。この決定は、当時双方が締結した保険契約の約定に適合しており、『保険法』の規定にも適合しています。」

 裁判所は、法廷審理の中で、以下のことを明らかにした。文氏が息子の為にこの保険に加入した当初、保険会社から「医療保険加入書」の健康告知義務について、保険加入者、被保険者が過去一年間に病院で治療を受けたか、心臓及び脳の血管に疾病があったか、被保険者が生まれた際に外傷があったか、窒息等の異常があったか、奇形があったか、発育が遅くないか、けいれん、ひきつけ、脳性マヒ、先天性及び遺伝性疾病等の健康状況に関して尋ねられたが、文氏はこのような状況は無かったと答えた。なお且つ保険加入者、被保険者は保険者の表明欄に、保険加入書に記入した健康、経済状況及びその他の内容は何れも真実であると表明していた。

 法廷審理の中では、文氏の息子が生まれた時に軽度の窒息状態であったため、病院の新生児科に収容され、四時間後に突然全身が青紫色になり、心臓と呼吸が停止したため、救命措置を取って正常を回復した後、出生6時間後に病院から新生児は軽度の窒息に状態になり、吸入性肺炎、低血糖症、頭蓋骨出血等の病状にあったと診断されていたことも明らかにされた。その後24日の入院治療を経て、文氏の息子は軽度の窒息合併肝機能・心筋の損傷・吸入性肺炎から回復し、その他の症状も好転した。2009年1月にウルムチ市の病院が作成した医学証明によれば、文氏の息子の健康状態は良好で、異常は見つからないとされていた。2010年7月、文氏の息子はひきつけを起こして入院し、20日余り治療を受けた。この時に発生した費用について、文氏は保険会社に保険金の支払いを請求したが、文氏が子供の健康状態を偽っていたことを理由として、保険会社から拒否された。

 裁判所は、医療保険契約は、人の生命及び健康を保険目的とした一種の民事契約であり、保険目的の特殊性から、保険契約の締結には保険会社からの説明義務及び保健加入者の告示義務という最大限の信用原則が必要であると考える。本案において、文氏は保険会社の各種条項に対して、いずれも確認の署名をしているため、被告は既に説明義務を尽くしたと見なされるべきである。従って、文氏が保険証書を読んでいなかったという意見を裁判所は採用しない。

 裁判所は、最終的に、文氏の訴訟請求を却下する判決を下した。事実を偽って保険に加入した文氏の行動は、結局何も得られないという結果に終わった。

契約における誠実義務を無視してはならない

 文氏が保険会社と締結した医療保険契約は、保険金を得られないばかりか、支払った保険料も返却されないという結果に終わった。これは明らかに保険会社に過失がない。如何なる契約の締結も当事者の主観的な信用に基づく申し込みであり、これは医療保険契約でも同じである。なぜならその目的物は財産よりも貴重な生命であり、締結した契約が当事者の一方が欺瞞という手段によって利益を得たもので、情状が著しく悪質な場合は刑法が適用されることになり、その目的物は財産のように重複が可能なものではないからである。保険会社が保険加入者に保険証書に署名する際に「医療保険加入書」を詳細に読むように求めるのは、信用に基づく申し込み要約であり、文氏が契約に署名した時点で双方の申し込みは既に完了しており、署名は文氏が契約の内容を読み、契約中の義務を履行することを承認したことを示すものである。すなわち、自分の子供の保険加入前の健康状態がこの医療保険契約に適合することを保証するものであるため、文氏の保証した子供の健康に問題が発生した時点で民事契約中の基本原則―信用―に違反したと見なされる。従って保険会社は契約を解除するか破棄することが可能となる。

 全ての民事活動において、法律が保障するのは当事者双方が自由意思により契約を締結するという原則である。公共の安全に危害を及ぼさないか、重大な財産的な損失は、一般的に民法によって調整される。但し、当事者、例えば文氏が契約条項の規定する義務を無視し、完全に読んでいないために、誠実義務を果たしていないと解釈されるのは当然である。契約は子供の遊びではない。契約には条項及び条項に付帯する解釈がある。口先だけの一方の言い分は解釈ではない。従って道徳に基づいて信用を守らなければ、契約は法律の求めに基づいて信用を守る当事者となる。なぜなら、こうしてこそ契約における利益を最大限に保障することができるからである。

(法制ネット)

作成日:2011年09月30日