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長期介護保険制度導入についての実務対応

   3月25日、中国共産党中央委員会弁公庁と中国国務院弁公庁は『長期介護保険制度整備の加速に関する意見』(以下、「本意見」という。)を発表しました。これは、長期介護保険制度が、2016年に開始された一部地域での試験的運用から全国規模へと段階的に拡大するフェーズに入ったことを意味します。
   本意見でいう長期介護保険は、従来の五険(中国の社会保険における5つの保険)に加わる「第6の保険」ともいわれており、大きな注目を集めています。そこで今回は長期介護保険制度における実務対応ポイントをQ&A形式で解説いたします。

Q1:長期介護保険の対象者は?加入前に要介護状態でも給付を受けられるか?
A1:本意見によると、長期介護保険には企業従業員やフレキシブルワーカーだけでなく、退職者や都市部・農村部の未就労者も加入することができます。
   また、要介護者(疾病、不慮の事故、または身体機能損傷により、日常の自立生活能力を喪失した状態にある人)もこの保険に加入することが可能です。要介護状態が継続している(通常6ヶ月以上)保険加入者が審査を経て要介護者と認定された場合、関連する給付を受けることができます。ただし、認定前に発生した介護費用は精算対象外となります。

Q2:長期介護保険の保険料率は?保険料の納付はいつからか?未納の場合の罰則は?
A2:長期介護保険の保険料率は一律0.3%程に設定されています。被保険者のうち企業従業員は雇用主と本人で同率(各0.15%)を負担します。自営業者や退職者、および未就労者は個人負担となりますが、一定の条件を満たす場合は政府からの補助を受けることもできます。
   なお、本意見では、3年を目処に長期介護保険制度を全国的に確立するものの「一律対応」は行わないとしており、これは各省や市が地域の実情に応じて段階的に実施することを意味しています。また、現時点では当該保険料の未納についての罰則は設けられていませんが、制度確立後は法定義務となる見込みですので、今後の動向には注意が必要です。
   各日系企業が現地での新政策や具体的な納付方法を正確に把握するためには、政府部門とのコミュニケーションが重要となるでしょう。また、企業が従業員の長期介護保険料を納付する際は、給与明細、給与規定、および給与計算システムなどの調整にも留意する必要があります。

Q3:介護費用は全額精算できるか?精算の上限額や支給の方法は?
A3:長期介護保険は、主に規定に合致する長期介護サービス機関が提供する「基本的生活ケア」および「医療的ケア」の費用に充てられます。指定機関外での介護費用および高級付加価値介護サービス費用は自己負担となります。
   長期介護保険には特定精算率が設定されており、例えば、企業従業員には70%、未就労者には50%が給付されます。自己負担額の上限は設けられていませんが、年間給付には上限があり、統括地区の前年度の都市・農村住民一人当たり可処分所得の50%を超えないとしています。例えば、2025年度の一人当たり可処分所得が89,090元の北京市では、年間給付上限額は44,545元を超えません。
   また、長期介護保険は原則として要介護者への現金支給はせず、指定介護サービス機関に直接支払われます。

◆日系企業へのアドバイス
   この長期介護保険は、高齢化社会に対応し、要介護者の基本的生活ケアおよび医療的ケア費用の負担軽減を目的としており、社会の長期的発展に寄与するでしょう。ただし各地の経済発展レベルに差異があり、地域によって政策実施状況も異なる可能性があるため、現地の政策動向には留意する必要があります。
   また、本介護保険制度の全面的な実施に伴い、専門介護サービス業界、介護補助器具産業、要介護認定・事務代行サービス、ロボット介護など、介護関連業界の需要も大幅に増える見込みです。そのため、発展戦略の調整や関連産業への投資も重要な検討事項となるでしょう。

作成日:2026年03月31日