2025年:治安管理処罰法の新たな変化 -NEW-
6月27日、第14期全国人民代表大会常務委員会第16回会議において、新たに改正された『治安管理処罰法』(以下『新改正法』という。)が可決され、2026年1月1日より施行されることとなりました。
当該法は2005年の公布後、2012年に1回目の改正が行われ、今回が2回目の改正となります。新改正法には駐在者や出張者と密接に関わる内容が含まれておりますので、以下に主なポイントをご紹介いたします。
1.「暴行されて反撃した場合」は処罰されない可能性
これまでは「暴行されて反撃した」場合でも、通常は「互殴(殴り合った)」と認定され、双方とも処罰の対象となっていました。しかし、新改正法の規定では「暴行されて反撃した」ことは「互殴」とは見なされず、治安処罰を受けない可能性があると規定されています。
ただし「暴行されて反撃した」ことが処罰の対象とならないのは、違法な侵害を防ぐための行為であることが条件であり、必要な限度を明らかに超えておらず、重大な損害を引き起こしていない場合に限られます。明らかに限度を超えていたり、重大な損害を与えたりした場合は、やはり処罰される可能性があります。(『新改正法』第19条)
企業が社員間の「暴力行為」に対応する際には、状況を適切に見極め、事実関係を十分に調査した上で対処する必要があります。単に社員が暴力に関わったという理由だけで、重大な規律違反として即座に解雇することは避けるべきです。
2.侵略行為を美化、宣伝する服装の着用は治安処罰の対象となる可能性
新改正法では「公共の場所において、侵略戦争や侵略行為を美化、宣伝する服装やマークを着用する行為」が治安管理処罰の対象として新たに追加されました。重大な場合には、10日~15日間の拘留、および5,000元以下の罰金が科される可能性があります。(『新改正法』第35条)
また、第35条には違法行為と認定される場面や条件、結果も明確に規定されています。例えば「国家主催の祝賀、記念、追悼、祭礼などの重要な行事の会場及びその周辺管理区域」において、意図的に行事のテーマや雰囲気に反する行為を行い、警告を無視して社会的に悪影響を与えた場合には、治安処罰の対象となります。この規定により、行政執行の恣意性や主観性が一定程度抑えられると考えられます。
3.「ペットによる人身被害」で飼い主が処罰される可能性
新改正法では「動物の飼育によって他人に危害を加えた場合」が治安処罰の対象とされました。例えば、猛犬を違法に飼育したり、リードを付けずに犬を散歩させて人を傷つけたりした場合、重大なケースであれば5日~10日間の行政拘留が科される可能性があります。(『新改正法』第89条)
4.その他の主な変化
上記以外にも、新改正法ではさまざまな分野で以下のような修正や規制が加えられています。
(1)18歳未満を酒席やカラオケに同席させるなどの業務に就かせた企業や組織の責任者は、10日~15日間の行政拘留の対象となる可能性がある。(『新改正法』第48条)
(2)学校が学生のいじめを所定の手続きで報告、処理しなかった場合の責任が新たに明記された。(『新改正法』第60条)
(3)高所から物を投げ捨てる行為、個人情報の違法な取得や提供、盗聴や盗撮機器の違法使用なども新たに治安管理の対象となった。(『新改正法』第43条、56条、第70条)
(4)治安違反記録を封印する制度を新設。これにより、軽微な違反が行為者の就業や進学に影響しないよう配慮される。また、外国籍者が小さなトラブルで処罰された場合でも、ビザや就労許可の更新には影響しない可能性がある。(『新改正法』第136条)
◆日系企業へのアドバイス
新改正法の施行は中国に駐在する社員や出張者に大きな影響を及ぼすことが予想されます。そのため、本法の改正内容および政府当局による今後の法執行の動向を、迅速かつ正確に把握することが非常に重要となります。
作成日:2025年07月18日