新規定:食品安全リスクに関する「内部関係者」通報制度 -NEW-
2025年7月3日、国家市場監督管理総局が開発した「全国食品安全内部関係者通報システム」(以下「通報システム」という。)が正式に始動しました。当該通報システムは「全国12315プラットフォーム」と連携しています。当該通報システムは食品生産販売企業の間でも大きな話題となっておりますので、簡単に概要をご紹介いたします。
1.「内部関係者」からの通報とは
「内部関係者」通報制度というのは、当該通報システムの始動により、食品の生産販売を行う企業(栽培養殖、食品や原材料の調達、生産、輸送、保管、配送、販売など全ての工程を含む)の「内部関係者」(正社員、臨時雇用者、派遣社員、1年以内に退職した元従業員など)が、当該通報システムを通じて、企業の食品安全に関する違法行為を通報することです。
調査の結果、通報内容が事実と認められた場合には、最大100万元の報奨金が与えられる可能性があります(金額は通報の内容による)。そのため、今後は報奨金を目的に一部の従業員(特に退職した従業員)が企業の食品安全上の不適切事案やリスク事案を通報する可能性が考えられます。
2.通報は実名でも匿名でも可能
食品関連企業の内部関係者が通報システムを通じて通報する際、当該通報システムでは、通報者が報復を受けないように実名通報と匿名通報のいずれかを選択できる仕組みとなっています。
また、市場監督部門へ直接通報するだけでなく、先に企業内部に報告するという選択も可能です。
3.通報の範囲
国家市場監督管理総局の公式サイトによると、当該通報システムが受理する内容には特定の範囲が定められています。
(1)禁止薬物や健康を害する可能性のある物質の使用。
(2)非食品原料や回収された食品を原料として使用して生産した食品。
(3)基準を超える食品添加物の使用または未認可食品添加物の使用。
(4)腐敗、期限切れ、不純物混入、粗悪品などの食品の生産・販売。
(5)登録商標の模倣、原産地の偽造、工場名や所在地の盗用など。
国家市場監督管理総局の見解によると、消費者権益に関する紛争について、通報の対象や内容が明確ではない場合、または違法行為の事実が明確ではない場合は、当該通報システムの受理範囲には含まれていません。これは、全ての食品安全に関する違反事項が受理されるわけではないことを意味しています。
◆日系企業へのアドバイス
7月7日、国務院食品安全委員会は『生産経営事業者の食品安全リスク及び潜在的な問題に関する内部通報と報奨制度の整備を推進するための意見』を発表しました。当該意見では、食品安全リスクに関する内部通報や報奨制度(以下「当該制度」という。)を構築するためのスケジュールが定められています。これは、今後一定期間にわたり、各地の食品安全委員会及び市場監督部門による企業への監督や抜きうち検査において、当該制度の構築及び実施が重点項目となることを意味しています。
そのため、現地の食品安全委員会及び市場監督管理局と速やかに連絡を取り、当該制度をどのように構築、導入すべきか、またはそのスケジュールを確認することが極めて重要です。また、不要な処罰を回避するためにも、企業は自社の生産経営活動におけるコンプライアンス体制を強化し、従業員向けの内部通報制度及び社内報奨制度を整備する必要があります。こうした取組により、従業員が直接市場監督部門に通報する事態を未然に防ぎ、企業の信用や資産へ損害を回避できるでしょう。
作成日:2025年07月11日