2025年度最新立法計画 -NEW-
2025年5月14日、全国人民代表大会常務委員会(以下「全人代」という。)は、中国の2025年度立法作業計画を公布しました。全人代は最高立法権を有する機関として、毎年その年度の立法計画を策定しています。当該立法計画は、今後一定期間における法制度の変化の動向を反映するものであり、現地の日系企業にとっても注目すべき内容となっています。
当該立法計画には、数十件の法律が含まれており、審議の優先度に応じて、継続審議、初回審議、予備審議の3つに分類されています。そこで今回は、日系企業の参考となるポイントを、以下に簡潔に解説いたします。
1.継続審議法律案(14件)
本分類に属する法律案の件数は、2024年の16件に比べやや減少しました。全人代は本分類の法律案について具体的な審議期間を明示しており、2025年度中にすべての審議を完了する予定です。そのうち3件の法律(『全国人民代表大会・地方各級人民代表大会代表法』、『民営経済促進法』、『伝染病防治法』)については2025年5月までに既に審議を通過しています。継続審議法律案の中で、日系企業にとって注目すべき内容は以下の通りです。
(1)『金融安定法』:2022年12月30日に草案が公布され、意見募集が行われたのち、2024年6月28日に草案第二次審議稿が公布されました。当該法の制定は、銀行、証券、保険等の金融業における組織機構や内部管理メカニズムに重大な影響を与えるものであり、金融業に対する規制が一層強化される可能性があります。また、当該法は2022年、2023年、2024年と連続して立法計画に組み込まれており、立法の進捗が緩やかであることから、全人代が当該法の制定に対して慎重な姿勢をとっていることが伺えます。
(2)『治安管理処罰法(改正)』は2024年にも「継続審議法律案」として立法計画に含まれていましたが、2025年も引き続き継続審議に分類されていることから、全人代の慎重な姿勢とともに、改正内容が比較的多くなる可能性があることを示しています。
(3)2024年に「初回審議法律案」に分類されていた『反不正競争法(改正)』、『原子力法』、『危険化学品安全法』、『突発公共衛生事件対応法』等の法案が「継続審議法律案」として再び立法計画に組み込まれています。これは、各法律の制定および改正作業がある程度進展していることを意味します。
2.初回審議法律案(23件)
本分類に属する法律案件数は、2024年と同様に23件となっています。本分類で日系企業が注目すべきものとしては、『金融法』、『企業破産法(改正)』、『入札募集・入札法(改正)』、『民間航空法(改正)』、『銀行業監督管理法(改正)』、『食品安全法(改正)』、『生態環境法典』、『国家賠償法(改正)』、『サイバーセキュリティ法(改正)』、『対外貿易法(改正)、『道路交通安全法(改正)』等が挙げられます。
これらの法律案審議には通常一定の時間を要するため、短期間で可決する可能性は高くありませんが、今後一定期間における全人代の動向を反映しているため、引き続き注視する必要があります。
3.予備審議項目
本分類は、調査及び起草が予定されているものの、まだ正式な審議日程には組み込まれていない法律案であり、今後の状況に応じて審議が行われることになります。日系企業が注目すべき内容は以下の通りです。
(1)制定項目:『国有資産法』、『電信法』、『消費税法』、『医療保障法』。
(2)改正項目:『商業銀行法』、『税関法』、『商標法』、『弁護士法』、『政府調達法』、及び財政税収制度やインターネット違法行為の取締り及び人工知能の健全な発展に関する立法項目。
◆日系企業へのアドバイス
これまでと比較し、2025年の立法計画では日系企業にとって注目すべき法律案件数が増加しています。これは、中国政府が国内経済の景気回復を図る中で、法制度の見直しを進めている動きと一定の関係があると考えられることから、各日系企業も関連法律の審議状況に適時注目しつつ、早期に情報を把握し相応の対応策を講じることをお勧めします。
作成日:2025年06月05日