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新『会社法』解説(3):企業の減資プロセスと実務上の留意点

   今回の新『会社法』改定により、登録資本金払込み期限を最長で5年間(会社設立日から算出)とする規定が導入されたことは、各企業、とりわけ払い込む出資金を高く設定し、実際はまだ払い込みを完了していない有限会社や株主から高い注目を集めています。
   こうした状況下での減資という方法は、一時的に出資能力がない、あるいは出資したくない株主にとっては、確かに賢い対応策の一つであります。そこで今回は、減資のプロセスとその実務上の留意点について簡単に紹介いたします。

1. 減資前の税務評価及び処理
   株主が未払い部分である出資を減らしたとしても、一般的には払込資本の減少や株主の減資対価の支払い、及び企業所得の増加などに影響することはありません。そのため原則的に、法人税や個人所得税が発生しないのであれば税務評価及び税務処理を行う必要はないということになります。
   但しこれは、あらゆる減資において税務評価や税務処理をしなくても良いという意味ではない、ということを認識しておく必要があります。例えば、株主が減資する状況によって、実質的に企業の払込資本が減少する場合や、会社が株主に減資対価を支払い、会社の所有者持分総額(即ち純資産)が減少する場合は、財務および税務上の処理を行うことが必要です。

2. 工商部門の減資プロセスと実務留意点
   新『会社法』には、減資の一般的なプロセス上において以下のような規定があります。(『会社法』第224条)
(1)株主(会)又は董事会が減資計画に関し検討し策定する。
(2)株主又は株主会が登録資本金を減少する決定又は決議を行う。
(3)会社の貸借対照表及び財産目録を編成する。
(4)債権者に通知し、公告する。
(5)会社が債務を返済、若しくは担保を提供する(必須ではなく債権者からの申し出があった場合に対応が必要)
(6)会社定款を修正し、工商部門に減資登記を行う。
   なお、上記(4)のプロセスで、債権者への通知や公告の期限及び方法にミスがあり、正当性を証明する証拠がない場合、後続で減資登記手続を進めることが難しくなる可能性があるという点に留意する必要があります。
   減資の際、原則、上記の手続プロセスを省略してはならず、1つでもプロセスを怠るなら違法な減資と見なされる可能性があります。例えば、通知・公告義務の履行を怠るなら、債権者は減資の範囲内で相応の法的責任を負う可能性があります。

◆日系企業の皆様へのアドバイス
   実務上、出資引き揚げや虚偽出資の手段はますます隠蔽、多様化の傾向にあり、これは企業が減資業務を行うにあたり、より高いコンプライアンスを要求されている原因の一つとなっています。 減資業務には、工商部門関連にとどまらず、税務、財務会計、株主・債権者との折衝、政府との折衝など、あらゆる側面があります。また、減資の目的や減資の性質が異なれば、法律面のプロセスや、財務、税務面で求められるコンプライアンス基準も異なってきます。 企業は、減資の目的に応じて、現地弁護士、会計士らと共に適切なコンプライアンス基準を見極め、実行可能且つリスクの少ない減資計画を練り、減資業務を進める際、株主、取締役、経営陣が不必要な法的リスクや負債を負うことがないよう、気を配る必要があります。
   また、自身の企業が出資していない場合であっても、関連会社や取引先がコンプライアンス違反の状況により処罰を受けた場合、自社との正常な取引に影響が及ぶ可能性があることにも注意しなくてはなりません。この点は、法律そのものを理解していても、実務上経験したことがない場合、ビジネスリスクを招く可能性が高いポイントでもあるため、実務経験のある現地弁護士のアドバイスを経て、減資という新たな課題から生じる一連の対応方針を検討するようお勧めします。

作成日:2024年01月29日