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法定代表者の法的責任(1):刑事責任編

   企業を代表し、民事活動の責任を担う立場として、法定代表者は経営及び管理の面で、様々な権利を有しています。しかし同時に、法定代表者はその享受している権利に相応する義務を履行する上で、刑事、行政、民事、その他の法的責任及びリスクも負わなければなりません。
   そのうちの刑事責任には最も重い処罰が含まれるため、一般的に考えて、個人に与える影響が最も大きいといえます。そこで今回は法定代表者が負う可能性のある刑事責任と、それに伴うリスクのポイントについて紹介いたします。

1.個人の行為による刑事責任及びリスクの負担
   法定代表者個人が、贈収賄、職務上横領、資金流用などの不正行為を実行し、中国の『刑法』が規制している処罰のレベルに達した場合、事実上、①無期懲役、②有期懲役、③拘留、④罰金などの刑事処罰リスクに直面することになります。
   例えば、日系企業およびその幹部の皆様が注目できる点として、2022年には、非国家公務員の収賄罪、職務横領罪の刑事立件の基準要件が「6万元」から「3万元」に引き下げられていることが挙げられます。つまり、現在中国では、贈収賄や不正行為に対する処罰を強化しているということがここから読み取れます。

2.企業経営行為のコンプライアンス違反に伴う責任
   通常、企業として行った犯罪行為に対しては、企業自体が刑事責任を負うべきであり、法定代表者が直接刑事責任を負うわけではありません。
   しかし、中国の『刑法』が規定するいくつかの罪状には、企業を処罰するものの他に、「直接責任を負う主管者とその他の直接責任者」に刑事責任も追及するものもあります。例えば、非国家公務員の贈賄罪、重大責任事故罪、増値税専用証憑の虚偽発行、又は輸出還付税の騙取若しくは税金の相殺控除に用いる証憑の虚偽発行罪などが挙げられます。(『刑法』第134条、第164条、第205条)
   上記でいう「直接責任を負う主管者」の具体的な範囲については法律で明確に規定されていませんが、実務上では、法定代表者が企業の「直接責任を負う主管者」と見なされ、刑事責任を追及されるリスクが存在します。

◆日系企業へのアドバイス
   法定代表者は、企業の設立、経営管理、解散・清算、閉鎖に至る全プロセスに関与する立場にあり、そのプロセスにおいてわずかでも慎重を欠くと、企業として、また個人としてのあらゆる側面から、様々な法的責任やリスクを負うことにつながりかねません。
   そのため、日系企業においても、現地の弁護士と相談し、法定代表者や董事等の経営幹部に対する企業の実情に即したコンプライアンス研修を実施し、企業自体と経営幹部の刑事罰に関わるリスク回避スキームを共同検討しておく必要があるでしょう。

作成日:2023年07月17日