最新法律動向

日系企業と密接に関わる『刑法改訂案(11)』

   今年3月1日、全国人民代表大会常務委員会で可決された『刑法改訂案(11)』が正式に施行されました。今回の改訂案は全48条からなり、そのうち15条は新たに罪名を増設したもので、企業の生産経営管理に重大な影響をもたらす条文内容も少なくありません。今回はこれについて簡単にご紹介いたしますので、ご参考いただければと思います。
◆ 改訂案の主な変更点
1.生産安全面で企業の責任を加重

   改訂案では新たに「危険作業罪」を設け、損害の結果がもたらされなくても、特定の事由に該当し、事故となる現実的なリスクが存在する場合には犯罪を構成するものとされました。例えば、火災の発生しやすい製造型企業について、消火栓が使用不可能な状態になっていると、重大なリスクが存在するとして、当該罪名を構成する可能性があります。
2.知的財産権面で企業の保護を強化
   改訂案では、知的財産権侵害犯罪に対する処罰を加重しました。偽造粗悪商品の商標登録罪、著作権侵害罪、営業秘密侵害罪等の罪名について最長の刑期を7年から10年に引き上げ、最も軽い刑であった「拘役」と「保護観察」が削除されました。
3.会社の経営、財産侵害の罪名について詳細化、修正
   改訂案では、企業財産権侵害罪の処罰にかかる基準及び程度をより詳細に定め、2段階を定めていた刑期は3段階になり、刑期の上限が引き上げられました。また、職務横領罪及び国家職員以外の収賄罪について罰金刑を設けました。このほか、会社資金を流用した者が、控訴が提起される前に自発的に返却、賠償を行った場合は、軽きに従い処罰するか、処罰を減軽することができると定めています。

◆ 日系企業へのアドバイス
   新型コロナウイルスの影響を受け、現地企業では本社や駐在員の監督不在によって会社財産の侵害等の不正行為が発生する可能性が高まっているため、企業で刑事コンプライアンス制度の確立と有効な履行を不断に強化していく必要があります。すでに施行されている『刑法改訂案(11)』について、日系企業やその高級管理職は関連法規を詳細に把握している必要があります。日系企業や従業員が刑事罰を受ける事態を回避するために、弊所では豊富な経験をもとに、皆様との座談会、セミナー、交流・検討のサービスをご提供しております。

作成日:2021年04月19日