最新法律動向

医薬品監督管理の新たな動向

8月26日、第13期全国人民代表大会常務委員会で『薬品管理法』改正案が可決され、改正法が2019年12月1日より施行されています。2015年版の『薬品管理法』に比べると、今回は主に、薬品上市許可保有者、医薬品のトレーサビリティ、薬物警戒制度等の重要な制度、並びにGMP/GSP認証から動態監督管理実施への切替え、臨床試験及び医薬品上市の審査認可の所要時間短縮、違法行為に対する処罰加重等の面にわたり、非常に多くの内容が改訂されています。日系企業に注目頂くべき重要な内容を以下で詳しくご紹介いたします。

1.薬品上市許可保有者制度の確立
薬品上市許可保有者制度とは、薬品技術をもつ薬品の研究開発機関、薬品の生産メーカー等の主体が、薬品上市許可を提示して薬品登録証書を申請取得することにより、自身の名義で製品を市場に投じることができ、薬品の全ライフサイクルに相応の責任をもつという現代的薬品管理制度の1種である。
規定により、薬品上市許可保有者は全ての薬品研究開発、生産、経営、使用において、法により管理責任を負うとされ、上市許可保有者は品質管理、リスク防止の能力だけでなく、賠償能力をも備えることが求められている。

2.薬品企業のGMP、GSP履行状況への動態監督管理
改正『薬品管理法』では薬品生産品質管理規範(GMP)、薬品経営品質管理規範(GSP)認証が廃止されたが、これはGMP、GSP基準の廃止を意味するものではない。GMP、GSP基準の履行状況は薬品の生産許可及び経営許可に直接関係するものであり、薬品監督管理機関では随時GMP、GSP等の履行状況を検査しており、将来的に製薬メーカーでは経常的でより厳格な通常検査や抜打検査を受けることになる点に、留意する必要がある。

3.違法行為に対する処罰の加重
今回、薬品にかかる違法行為に対する処罰が加重された。以下の内容を含む。

①財産罰レンジの引き上げ
許可証を取得せずに虚偽薬品を生産経営、生産販売する行為に対して科される罰金の基準は商品金額の2倍~5倍とされていたところ、15倍~30倍に引き上げられ、商品価値金額が10万元に満たないものは10万元として計算する。つまり、罰金の最低額は150万元となる。劣悪薬品を生産販売した違法行為に対する罰金についても、商品価値金額の1~3倍から10~20倍まで引き上げられた。

②資格処罰の加重
虚偽の薬品・劣悪薬品の違法行為があった責任者の資格に対する処罰は、従前は経営禁止を10年間としていたが終身禁止とし、虚偽の薬品を生産販売して許可証を取り上げられた企業に対しては、10年間関連の申請を受理しない。

③自由を制限する処罰手段の増加
虚偽の薬品・劣悪薬品の生産販売の情状が重大である場合や、許可証の偽造・改ざん及び不正な手段による取得等の情状が劣悪な行為に対し、公安機関より関係責任者に対し5日~15日の行政拘留に処することができる。

④違法行為による個人に対する処罰
企業で重大な違法行為のあった場合、企業に対して処罰を科すとともに、企業の法定代表者、主要責任者、直接責任を負う主管者及びその他の責任者にも処罰を科すことができる。処罰は、違法行為期間中に企業が取得した収入を没収し、取得した収入の3倍以下の罰金及び一定期間の経営禁止を併科し、終身禁止とする場合もある。

改正『薬品管理法』には一連の新たな薬品管理制度が導入されています。医薬品の研究開発、生産、経営に従事する関連日系企業では、改正法の変更内容について、速やかに業務を調整し、企業内部リスクの管理とコントロールを強化するとよいでしょう。薬品上市許可保有者制度に適合する日系企業は、自社の品質システム制度を整備し、研究開発、生産、販売、上市等の段階における全方位管理を強化し、健全なセルフチェックメカニズムを確立して生産、経営活動のコンプライアンス運営を保証することをお勧めします。これらの取組みをしっかりと行うと同時に、所管政府機関による新法の実施や関連の動きに注意を払い、コンプライアンス管理のシステムをいっそう整備していくことも大切です。

作成日:2019年12月13日