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証拠として裁判所に認可されるAlipay記録

操作がしやすく、手軽で効率的であることから、Alipayを生活ツールの1つとして、ますます多くの日系企業や中国で生活する日本人によって日常の各場面で使用され、日常生活中の衣食住から企業間のビジネスのやりとりにも、Alipayが登場するようになっています。書面の債権証憑として借用書、発票、契約書等がないという場合にも、Alipayの送金記録を証拠資料として裁判所の認可を受けることが可能です。以下ではAlipayを証拠として使用する際に注意すべき問題について、簡単に分析します。

1.裁判所で立件後、弁護士によりAlipayの証拠調査・取得の申請が可能
Alipayの送金がもとで金銭経済紛争案件が引き起こされた場合、裁判所で立件された後、弁護士のサポートにより調査令を申請し、Alipayの運営会社での送金関連証拠資料の調査取得を実施することができます。現在この調査は弁護士が裁判所の発行した調査令、弁護士資格証等の資料を持参し、浙江省杭州市にある前記運営会社の所在地を訪ねて調査を実施することが可能とされているだけで、遠隔調査を行うことはできません。

2.利用前に相手方の身分の確認を
通常、Alipayアカウントは携帯電話番号又はメールアドレスにより登録されるうえ、Alipayアカウントの名称にはニックネームか仮名が用いられます。このため、送金前にはそのアカウントの使用者の身分や、アカウントについて実名認証が行われているかどうか、Alipayの使用者が送金受取人かどうかを確認したうえで送金の操作をする必要があります。

3.チャット記録の運用で資金やりとりの経緯を明らかに
Alipayのチャット記録は電子データの形式で存在し、『民事訴訟法』に規定された証拠の類型に属し、証拠として使用することができます。送金を受けたとき、なんらかの理由で書面証拠資料が形成できないという場合、Alipayのチャット記録で相手方の身分や債権債務関係等を確認することができます。また、対話中に形成される情報は、画像、音声、ビデオ、送金又は「紅包(金一封)」を含め、注意して保存しておくようにします。

4.資金の使用用途を備考欄に記入
Alipay送金を利用する際、Alipayアカウントへの送金、銀行カードへの振込みのいずれの場合にも、20字以内の内容を書き込める備考欄があります。備考欄はかならず記入し、資金の用途を明記するようにします。「資金の使用用途」の記述のみによって双方間に存在する相応の法律関係を証明することはできませんが、「資金の用途」の記述はその他の証拠と組み合わせることにより、より確実に法律関係の存在を証明できるものとなり、裁判官の支持がより得やすくなります。

5.電子明細を忘れずにプリントアウト
Alipay送金を利用した後、一部の取引や送金業務等には電子記録が残されるようになっており、利用者は自分で「サービス窓口」にアクセスして電子明細を印刷し、これを支払証憑として保管することができます。

以上、弊所の実務経験からAlipayを証拠として使用する際の注意事項についてまとめました。Alipayの普及・利用拡大につれ、日系企業や駐在員にもその利用が徐々に受け入れられていますが、Alipayのもたらす手軽さ、利便性、効率を享受するとともに、自身の適法な権益を有効に保護するための措置を取ることにも、注意を払うようにしたいものです。

作成日:2019年09月09日