法律相談Q&A

企業の訴訟時効リスクをいかに防止するか

Q.当社は、中国で内販を行っている日系企業です。一部の債務者が当社の商品代金を支払わず、従業員にずっと催促をさせていましたが、さまざまな理由を付けて支払いを先延ばしにされたため、やむなく訴訟を提起したのですが、訴訟時効を過ぎているという理由で当社が敗訴するという結果となりました。企業が日常経営の中で訴訟時効のリスクを防止するには、どのような方法があるでしょうか。

A.債権回収の問題は、日系企業が中国で内販を行う中でしばしば遭遇している難題の一つです。契約精神の欠如や、現在形成されつつある社会的信用の懲戒体制がまだ完全には整備されていないために、内販においては証拠の保管に注意し、法的リスクを防止するための具体的措置を講じておかないと、債権回収のための法的な最後の砦を失ってしまうことになりかねません。
 今回遭遇された訴訟時効の問題も、債権回収においてよくある問題の一つです。取引をしているうちに、情に負け、後の取引への影響を懸念するあまり、未払代金の弁済遅延を追及せず、支払いの催促も従業員が口頭で催促するのみで、訴訟時効中断の証拠を残していないといった理由により、債権の訴訟時効を過ぎて勝訴の権利を逃すということが往々にしてあります。それでは、訴訟時効の徒過を有効に防止するには、どうすればよいでしょうか。一般によく行われている方法をご紹介いたしますので、参考にしてください。

1.双方で定期的に財務帳簿の照合を行う。
会社で毎年売掛金の点検を行い、定期的に(半年又は1年に1回)債務者と帳簿を照合する。この方法により、双方の記帳が一致しているかどうかを審査できるだけでなく、訴訟時効を中断する効果もある。債務者が捺印確認した帳簿照合確認書を残すことに注意する。

2.債務者に催促状等の文書を送付する。
催促状は、債権者が債務者に対して権利を主張したことの証明になり、訴訟時効を中断させることができる。催促状の送付及び送達の証拠を残しておくようにする。

3.債務者に明確な弁済計画を提示させる。
会社は債務者と連絡を取り、債務者に自らの債務弁済を認めさせ、一定期間にいくら返すかの明確な弁済計画を提示させることで、債権債務関係を認める旨を表明させるとともに、訴訟時効の中断を証明することもできる。債務者が提示した弁済計画の書類や電子メール等を保存しておくようにする。

4.議事録を作成する。
議事録は、債権者と債務者が未払金弁済の問題について、双方で会議形式で協議を行った後、弁済の問題についての議事録もしくはメモを作成し、双方の法定代表者が署名し社印を捺印したものである。これには、債権者が権利を主張した過程が記載されており、訴訟時効を中断する効力をもつ。

5.小額でも支払いを請求する。
債務者に訴えを提起しない場合、債務者に対してまず比較的小額の支払いを請求してもよい。金額の多寡にかかわらず、支払いが行われたことによって時効中断の効果がもたらされる。

以上が訴訟時効の徒過を防ぐための方法、措置となります。企業は、自社の状況に合わせて上記のうち複数の方法やその他の方法を組み合わせて利用することにより、債権者の債権が訴訟時効を過ぎることを防止し、会社の不要な経済的損失を減らすことができます。どのような方法を使う場合でも、関連の証拠を適切に保管し、訴訟となった場合の使用に備えるようにします。特に外資系企業では、契約管理に注意し、債務の適時弁済催促を重視するようにし、訴訟時効に対する理解不足のために会社で必要のない経済的損失を負担する結果になることを回避する必要があります。

作成日:2019年05月16日