法律相談Q&A

「マイナンバー」の提示による日本人駐在員への影響は

Q: 中国に派遣されている日本人従業員です。中国の銀行で口座を開設しようとしたところ、日本人の納税者番号にあたる「マイナンバー」の提示を求められましたが、なぜこの情報を銀行に提出しなければならないのでしょうか。また私自身にどんな影響があるでしょうか。

A: 「マイナンバー」は、日中両国間の金融口座情報交換を実施するうえでの要求の一部とされています。
(1)ここ数年、中国政府ではあらゆるルートを通じて、中国の租税徴収管理体制の強化と整備が進められています。2018年、中国と日本はともにCRS(「共通報告制度」)の実施を約束する第2陣の国家となり、両国で初回の金融口座情報交換を行いました。その中に日本人の納税者番号である「マイナンバー」が含まれています。
(2)クロスボーダーの租税回避を国際間協力により取り締まり、信用に基づく納税・租税徴収管理体制を強化、整備することが、CRS実施の主な目的とされています。

CRSの概略紹介
(1)CRSとは簡単にいうと、その実施を約した国又は地域間で、定期的に租税徴収の対象となる居住者の金融口座情報を交換するというルールです。中国は2018年以降、毎年定期的に参加地域との情報交換を行うことを約束しています。
(2)統計によると、CRSのカバー範囲として、すでに100余りの国家や地域がCRSの導入に署名しており、ほぼ全ての先進国及び世界の主要なタックス・ヘイブンやオフショアセンターが含まれています。
(3)CRSにより交換される情報は個人又は企業の銀行口座に関するものに限らず、エスクロー機関、投資機関及び特定保険機関に開設した金融口座に関する情報も含まれますが、不動産、車両、宝石類、名画等の情報は含まれません。

日本人駐在員への影響
   中国がCRSの実施を約束したことによる中国の非居住納税者への影響は、銀行での手続きにとどまらず、納税においてより深いレベルでの影響を与えることとなります。グローバルな税務の透明化の動きがますます進み、逆転できない趨勢となる中で、中国の租税徴収への管理においても、さらなる整備と透明性向上が必然の方向性となっています。
   また、中国政府が2018年8月31日に公布された改正『個人所得税法』(今年1月1日より施行)では、租税回避防止条項(第8条規定)を初めて盛り込み、個人が合理的な商業目的のない関連者との取引、オフショアのスキームやその他の特殊な取り決めにより納税義務を回避することを防止しています。この条項は、租税徴収管理体制のいっそうの整備に法的根拠を提供するものとなりました。
   中国の居住者か非居住者かを問わず、納税義務者として税務の問題を重要視し、管理とリスク防止を強化する姿勢が求められています。同時に、税務コンプライアンスコストの必然的な増大についても意識をもつ必要があります。

作成日:2019年01月14日