法律相談Q&A

人事考課の成績が最下位の者を「業務に堪えない」として退職させることは可能か

Q青島にある日系企業ですが、2年連続で人事考課の成績が最下位となっている従業員がいます。業務に堪えないとして、退職させることはできないでしょうか。

Aまず明確なこととして、法律上、「従業員が人事考課での成績が最下位である」からといって、これにより直接「従業員が業務に堪えない」という結論を導くことはできません。『労働契約法』第40条の規定により、使用者は従業員が業務に堪えないことを理由に、一方的に労働契約を解除できるとされています。しかしながら、従業員が業務に堪えないということについて、使用者が十分な証拠を示して証明することが必要になります。また、使用者が規定の手続きを踏み、経済補償を支給することも必要とされています。

1)「業務に堪えない」ことの証拠
実務において、従業員が業務に堪えないことを証明できる証拠材料には、主に以下のようなものがあります。

①使用者が法により制定した、合理的かつ有効な人事考課制度(制度で業務に堪えない状況について明確に規定してある必要があります)の内容が、従業員によく理解され、認められている。
②使用者と従業員で「労働契約書」中か職務責任書等の形で、従業員の職務の内容、範囲、業績に対する要求等が明確になっている。
③使用者が人事考課制度に基づいて従業員の業務の内容、職務責任を評価したうえで、当該従業員が業務に堪えないものと認定している。

2)履行が必要とされる手続き
従業員が業務に堪えないと認定されたら、使用者はなお『労働契約法』第40条の規定に基づき、以下の法定手続きの履行と証拠提示を行う必要があり、これらを履行したうえで初めて労働契約が解除できるようになります。使用者が以下の手続きを履行していないか、履行しても証明できる証拠が提示できないと、なお一定の法的リスクを残すこととなります。

①使用者が従業員に対してトレーニング又は担当職務の調整を行ったことが証明できる。
②従業員が職務調整を経ても、調整後の業務に堪えないことが証明できる。
③使用者が30日前までに書面で通知したか、追加的に1カ月分の賃金を支給したことが証明できる。

【留意点】
実務において、使用者が「業務に堪えない」ことを理由に従業員との労働関係を解除したいという場合、十分な準備作業と相応の証拠となる資料の収集なくしては、それを実現することができません。使用者が十分な証拠を提示して証明することができなければ、従業員本人への説得が難しいだけでなく、裁判所や仲裁委員会を説得することも困難となり、違法解除とみなされるリスクがあります。このため、使用者は日常の生産、経営管理の中で、関連の制度を制定、整備するとともに、証拠材料は適切に保管しておくことで、会社と従業員双方の関係への適度な制約と調和を図り、不要な紛争の回避に役立てるとよいでしょう。

作成日:2018年08月17日