法律情報

社会保険料の納付先が税務署になることについて

Q.青島にある日系企業です。今後、社会保険料は、税務署に払うことになると聞きました。社会保険料の納付先が税務署となることで、会社にとってどのような影響があるでしょうか。また注意する点があれば教えてください。

A.ご理解の通り、これまで中国の社会保険料は、大部分の地域で社会保険機関へ直接納付しており、一部の地域でのみ税務署が社会保険機関に代わる納付先となっていました。しかし、今年3月21日の党中央による『党及び国の構造改革深化案』の公布で、省レベル以下の国税局と地方税務局を統合することが明確に打ち出され、社会保険料の納付方法も変更されることになりました。即ち基本養老保険料、基本医療保険料、失業保険料等の各保険料は、今後は社会保険機関ではなく、税務署に納付することとなりました。

【会社への影響】

1.手続き面での対応では、会社で現地の社会保険機関や税務署による関連の通知に注意を払い、定められた期限までに社会保険料の納付先の変更手続きを済ませるようにし、社会保険料の滞納とならないように留意する必要があります。

2.税務署では従業員の賃金収入を含む会社の財務データ、個人所得税納税賃金データ等を把握しているため、社会保険機関よりも強力な徴収管理の手段と能力をもっていると言えます。今回は、納付先が変更するのみで、社会保険料の納付率及び計算方法は変更されません。しかし、社会保険料の未納や過少納付がある会社では、税務署による監督管理を受け、納付又は追納を求められる可能性が今後高まり、ひいては労務コストの増加につながるものと思われます。法定の通りに従業員の社会保険料を正しく納付している会社にとっては、手続き上の変化に過ぎず、労務コストが変更することはないと思われます。

【留意点】

現在、中国では、社会保険料の徴収能力を高めるためのさまざまな措置が講じられています。上記の政策のほかにも、民用航空局、人力資源社会保障部、税務総局等8つの機関が連名で公布した文書では、社会保険料の未納や過少納付があるか、是正を拒む等により、信用失墜が著しい企業の責任者を、航空機への搭乗制限者のリストに入れるとしています。また、ビックデータ時代が到来し、今後運用がますます普及する中で、政府機関による監督管理において、企業情報の透明化がいっそう進むことが予想されます。

日系企業の皆様におかれましては、社会保険料の納付状況について、全社的に詳細なコンプライアンスチェックを行い、その結果に基づいて、現行の法令と合致しない部分があれば適時改善されることを、お勧めいたします。また、今後、各地方及び所管の政府機関より、上記の政策の実施に関する法律規定が公布される可能性があります。このため、所管の政府機関による政策執行の動きに注目していくことも重要です。

作成日:2018年05月16日