法律相談Q&A

『環境保護税法』が日系企業にもたらす影響

Q.青島にある日系企業です。2018年1月1日から『環境保護税法』が施行され、税務署も環境保護税の徴収を開始したと聞いています。この法律の施行による企業への影響と、留意すべき点を教えて下さい。

A.ご認識の通り『環境保護税法』(以下『環境保護税法』という)と『環境保護税法実施条例』(以下『実施条例』という)が2018年1月1日から施行されています。

1.日系企業への影響

『環境保護税法』の施行により、環境保護税の徴収が開始されたことで、汚染物質を排出している企業にとっては以下のような影響が想定されます。

(1)一部地域の企業における税負担の増大

「税負担不変」の原則に基づき、環境保護税の適用税額は、汚染物質排出の費用基準を「そのまま移行」して決定されています。環境保護税の税率は、『環境保護税税目税額表』の定める税額の範囲内とされているものの、『環境保護税法』では、各省、自治区、直轄市の人民政府は、大気汚染物質及び水質汚染物質に対する税額の決定や調整を行う権利を持つものと定められています。例えば北京市・天津市・河北省周辺地域にあたる山東省は、大気汚染防止の重責を担っていることにより、省政府は、大気汚染物質の徴税基準を他省と比べて高いレベルに設定しています。また、各省、自治区、直轄市の人民政府は、管轄地域の汚染物質の排出を減少させる必要性から、同一の排出口に対して徴収する環境保護税の課税汚染物質の項目数を増やすことができるとされています。このように『環境保護税法』は、地方政府に有限の権利を与えるとともに、一部の企業にとっては環境保護税の税負担増加をもたらすものとなる可能性があります。

(2)新法の施行に伴う企業の経営コストの増加

『環境保護税法』の施行で、企業の汚染物質排出物質に対するモニタリングが強化されることにより、企業では汚染物質の自動モニター装置の増設と、汚染物質を低減する設備の交換・レベルアップが求められるようになります。例えば『環境保護法』の規定により、汚染物質を排出する重点企業に対しては、自動モニター設備の設置と使用が義務付けられます。(それ以外の企業においても、自動モニター設備を設置し、このデータを排出量の基数として納付すべき環境保護税を割り出すことができます。)新法の施行により、企業の環境保護業務における費用支出が増加することは確実と思われます。

(3)費用から税金への改革、徴税管理、取締の強化

『環境保護税法』により、「汚染物質排出費」から「環境保護税」への移行を実現したことが、今回の立法における最大の成果とされています。2018年1月1日より以前に実施されていた「企業汚染物質排出費」は、行政上の費用徴収のようなものであり、これを滞納した規則違反に対して受けるのは、主に行政処分でした。しかし、環境保護税が施行されるようになった今、規則違反行為を犯したとなれば、法により強制的な税金の追徴を受け、滞納金等の行政処分が科せられるだけでなく、刑事犯罪となると、刑事責任の追及を受ける可能性もあります。このように、徴税管理、取り締まりが大幅に強化されています。

2.留意点

『環境保護税法』施行後における企業の留意事項は以下の点です。

(1)『環境保護税法』、『実施条例』を十分に理解し、環境保護税の計算根拠、徴税方法、税の減免条件、納付申告といった、具体的な関連規定にも目を通しておく。政策や徴税プロセスへの不理解のために、納税においてコンプライアンス上の問題が発生することを避ける。

(2)汚染物質を排出し、納税を行う日系企業では、将来的に可能性のある環境保護コストの増加に対して十分な対策と準備を行い、政府の補助政策には随時関心を払い、省エネ・排出削減の能力を高めて、税制優遇をより多く獲得できるようにする。

(3)チャンスをみて、地元の環境保護管轄機関と交流するようにし、情報交換と相互理解を深め、問題の発生を未然に防ぐ。また、できる限り理解と支持を得て処分が回避又は軽減できるようにする。

作成日:2018年03月14日