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株主が突然他界した場合に持分をどう処理するか

Q1.当社は、1人の日本人と日本の企業が共同で出資し、中国に設立登記した有限責任公司です。会社のCEO・筆頭株主は、業務能力の極めて高い日本人だったのですが、最近、この株主が不慮の疾病により亡くなりました。生前に遺書は残しておらず、既婚で一子もうけているものの、妻も息子も会社経営の経験がなく、他に相続人となる人もいません。現在、会社の経営は困難に陥っています。持分の相続は、他の財産の相続と同様に行うことができるでしょうか。

A1.有限責任公司の持分は、一般の有形財産とは異なり、財産属性と地位属性を兼ね備えています。株主が死亡した後、その相続人は、『相続法』により持分に対応する財産権益を相続することができますが、これに伴って株主としての資格が当然取得されるというわけではありません。完全な意味での持分には、持分の財産権益と株主としての地位とが含まれています。これについて『会社法』では特段の規定を設けており、株主は、会社定款の中で自ら協議を行い株主の地位の相続問題について規定することができるとされています。例えば、定款の中で株主の地位を承継するための資格条件、或いは相続によってはその地位が取得できないこと等を定めることができます。今回のケースでは、死亡した株主は遺書を残しておらず、会社の定款にも特段の規定がないことにより、死亡した株主の法定の相続人である妻と息子には、当該株主の地位を承継する資格があるということになります。会社のその他の株主には、当該相続人が会社の株主となることを受け入れ、各自が承継した持分を株主名簿、会社定款に記載して工商変更登記を行う義務があります。

Q2.死亡した株主名義の登記された持分は全て遺産相続できるでしょうか。

A2.『婚姻法』及びその司法解釈に関連する規定によれば、婚姻が存続している期間中、持分そのものの運用は、株主の地位のある一方が支配し、株主としての権利を直接行使することができますが、当該持分に相応する財産権益は、夫婦が共有するものとなります。したがって、株主の死亡により夫婦の共同財産に関わる問題が生じる場合、まず夫婦の共同財産を分割する必要があります。そのうえで、『相続法』に基づき死亡した株主の全ての財産権益の分配・相続を行います。今回のケースでは、夫婦の共同財産を分割することになるため、死亡した株主の妻には持分の財産権益の2分の1に対する所有権があり、残りの2分の1が、死亡した株主の相続されるべき遺産となります。当該部分の遺産は、『相続法』の規定に基づいて分配・相続を行うことになり、結果として、死亡した株主の妻には、持分の4分の3の財産権益、その息子には持分の4分の1の財産権益が分配されます。

株主間で良好な協力関係を維持し、会社が正常に運営されて発展していくためには、会社定款の制定時において、株主の資格の承継に関する条項を適切に作成し、自然人の株主が突然死亡したことにより会社の経営が困難に陥る等のリスクが発生しないようにしておくことがお勧めされます。このケースにおいては、経営困難となった会社の現状を改善するために、その他の株主が協力して死亡した株主の相続人による法定の相続を完了し、持分譲渡に向けて協議を行い、会社には経験のあるマネージャーを雇用するといった手立てが必要となるでしょう。

作成日:2017年06月21日