法律情報

従業員による頻繁な病気休暇申請への対応策

Q.最近、当社では頻繁に休暇を申請する従業員がいます。特に、長期病気休暇を取得する一部の従業員については、社内への影響もあり、対応に大変苦慮しています。会社としての対処に何か良い方法があれば教えて下さい。

A.ご相談の通り、従業員による病気休暇申請は、確かに多くの会社の管理者を悩ませる問題となっており、紛争となることも少なくありません。病気休暇の取得を勧める病院の診断証明書が比較的とりやすいといった社会の現状に鑑み、会社として、こうした現象の発生を根絶することは難しいと思われます。弊所の実務経験を踏まえ、従業員より頻繁に病気休暇申請を受ける場合の対応策として、次の通りアドバイスいたします。

1.会社の病気休暇申請に関する規則制度を整備します。病気休暇の真実性を可能な限り保証するため、会社の規則の中で、従業員が病気休暇を申請する際には、病気休暇期間の長短に応じて病院(所定レベル以上)が発行する診断書、検査報告書、診察費用の伝票等の書類を提出するものと定めます。また、会社が指定する病院で再検査等を受けることを要求できるという会社側の権利についても、規則の中で定めておくようにします。

2.整った賃金体系を制定します。会社は、従業員の病気休暇日数に基づいて賃金を相応に減額することができるとされています。労働部より山東省労働庁に転送された『「企業従業員の疾病又は業務によらない負傷による医療期間の規定」の公布に関する通知』及び『山東省企業賃金支給規定』によれば、業務を停止して治療を受ける期間の累計が180日に達するまでは、会社は本人の賃金の70%に相当する病気休暇賃金を支給しなければならないと規定されています。累計が180日を超えた場合は、本人の賃金の60%に相当する疾病救済費を支給しなければならないと規定されています。また病気休暇賃金又は疾病救済費は、所在地の最低賃金基準の80%を下回ってはならないと規定されています。

3.従業員が取得している病気休暇期間が規定の医療期間を超えてもなお、病気休暇を勧める内容の診断証明書が提出される場合について、法律規定では、会社がまずは職務を調整し、それでも業務に堪えないようであれば、一方的に労働契約を解除することができるとされています。一方的に労働契約を解除する場合は、法的プロセスの履行に注意し、会社が職務の調整を行ったことと、本人がそれでも職務に堪えないことに関する証拠を残し、以後労働紛争が発生して会社が不利な立場となることを避けます。また、実務においては、一方的に労働契約を解除した場合には紛争が発生しやすいうえ、病気休暇中の従業員に対し、職務に堪えないことを理由として一方的に労働契約を解除するためには、会社が法定の経済補償金と医療補助金を支払う必要があります。このため、コストとリスクを考慮すれば、状況をみて従業員との協議による労働契約解除とすることを検討されたほうがよいかと思われます。協議による解除では、ケースごとの事情をよく考慮してタイミングを計ることと、交渉テクニックを運用することが極めて重要となります。また、紛争の徹底的な解決と、以後の潜在的なリスクを避けるために、労働契約を協議解除することについて、従業員と合意書を締結しておくことがお勧めされます。

作成日:2017年05月16日