最新法律動向

最低賃金基準の引き上げ 6大権利に影響

 2017年になってまもなく、一部の省では最低賃金基準の引き上げが発表された。現在安徽省では『安徽省最低賃金規定』が公布され、今年2月1日より施行されている。天津市では適切な時期に最低賃金基準を調整し、企業従業員の賃金収入の引き上げに力を入れるとしている。

  昨年、中国全土では北京市、上海市、天津市、重慶市、河北省、山東省、江蘇省、遼寧省、海南省の9地方で最低賃金基準が引き上げられた。平均引き上げ率は10.7%となった。最低賃金基準の引き上げは我々とどんな関係があり、我々の権利や利益にどのような影響を与えるのだろうか。

 2017年も、一部の地方で引き続き最低賃金基準が引き上げられる見込み

 《安徽省》

現在安徽省では『安徽省最低賃金規定』が公布され、今年2月1日より施行されている。

この新規定では、年次有給休暇、出産休暇、計画出産手術休暇、帰省休暇、慶弔休暇等の休暇を、いずれも「正常に労働」したものとみなし、労働者が最低賃金待遇を受けられるようにしている。

 《上海市》

今年、再び最低賃金基準の適切な調整を行い、企業賃金指導ラインが発表される予定。

 《天津市》

2017年は、企業従業員の賃金収入の引き上げに力を入れ、適切な時期に最低賃金基準を調整するとしており、最低賃金が2,000元を超える見込みがある。

 《最低賃金基準及び適用の範囲》

最低賃金は、労働者が法定の勤務時間内で正常に労働を提供するという前提のもと、企業が支給すべきとされている最低の労働報酬のことである。一般的には、月最低賃金基準と時間最低賃金基準の形式が採用される。『最低賃金規定』により、月最低賃金基準は全日制の労働者に、時間最低賃金基準は非全日制の労働者に適用される。

 中華人民共和国内の企業、民営非企業組織、従業員を雇用している個人工商業者やそれらと労働関係を結ぶ労働者及び国家機関、事業者、社会団体並びにそれらと労働関係を結ぶ労働者には、全て最低賃金が適用される。

 《最低賃金基準引き上げがもたらす影響》

1.もと最低賃金基準ラインにあった労働者の賃金が向上

中国の『労働法』では、国は最低賃金保障制度を実行し、雇用者が労働者に支払う賃金は、その地方の最低賃金基準を下回ってはならないことが明確に規定されている。

最低賃金の引き上げは、それに伴って手取り賃金も増加することを意味し、直接の影響がある。

 2.病気休暇期間の病気休暇賃金の引き上げ

労働部による『「中華人民共和国労働法」の執行徹底にかかる若干の問題に関する意見』第59条により、「従業員が疾病又は業務によらない負傷の治療期間において、所定の医療期間内に企業の関連規定により当人に病気休暇賃金又は疾病救済金を支給する場合、病気休暇賃金又は疾病救済金の金額は所在地の最低賃金基準を下回ってもよいが、最低賃金基準の80%を下回ってはならない」と規定されている。

最低賃金基準が引き上げられれば、最低賃金基準に基づき計算・支給される病気休暇賃金もこれに伴って引き上げられることとなる。

 3.有給休暇期間中の賃金の引き上げ

『従業員年次有給休暇条例』では、従業員が年次休暇期間において受け取ることのできる正常に勤務した期間と同等の賃金収入について規定している。『労働法』では、労働者が法定祝休日及び慶弔休暇期間ならびに法に基づき社会活動に参加する期間について、雇用者は法により賃金を支払わなければならないことを規定している。

基本賃金が最低賃金基準に設定されている人にとっては、最低賃金基準が引き上げられると、手取りの有給休暇賃金も相応に引き上げられることになる。

このほか、女性が産休を取得する際の賃金は、一般に企業の前年度の平均賃金に基づき支給されるものであるが、最低賃金基準が引き上げられると、平均賃金も必ず相応に増加するはずであることからすれば、手取り賃金がより高額になるといえるだろう。

 4.失業者が受け取る失業保険金額の引き上げ

関連規定により、失業者について、失業前の雇用先及び本人により保険料を納付した期間が累計1年を超え10年未満である場合、最低賃金基準の70%、10年以上の場合、最低賃金基準の80%を支給するとされている。最低賃金が引き上げられた後、従業員の受け取る失業保険金も相応に増額される可能性がある。

 5.試用期間従業員の賃金が増額

 労働部『「中華人民共和国労働法」の執行徹底にかかる若干の問題に関する意見』第57条により、労働者と雇用者が労働関係を結んだ後の、試用、訓練、見習い期間において、法定の勤務時間内に正常な業務を提供した場合、雇用者は当従業員に対し、最低賃金基準を下回らない賃金を支払わなければならない。最低賃金基準が引き上げられると、最低賃金基準に基づき受け取る試用期間の賃金も引き上げられることになる。

 6.雇用者が万一操業や生産を停止することになった場合に受け取る労働報酬が増加

『賃金支給暫定試行規定』第12条では、労働者の原因によらず会社が操業停止、生産停止することになり1回の賃金支払い周期以内である場合、雇用者は労働契約に所定の基準により労働者の賃金を支払うものとすることが規定されている。1回の賃金支払い周期を超過して、労働者が正常な労働を提供した場合には、労働者に対して所在地の最低賃金基準を下回らない労働報酬を支給することになる。

(「央視財経」より)

作成日:2017年03月16日