法律情報

社会保険料の未納付に対して労働機関から調査・処分されることについての時効

Q.当社は、在中の日系メーカーです。2010年に入社し、3ヶ月の試用期間を設けた従業員がいました。試用期間中は、社会保険料を納付していませんでした。この従業員は、2016年5月に退職しました。その後、この従業員から試用期間中の社会保険料を追完納付するよう会社に要求が出され、また労働保障行政機関に通報されてしまいました。当社は、労働保障行政機関から調査を受け、処分されてしまうのでしょうか?

A.『社会保険法』の関連規定では、従業員の為に社会保険料を納付しないことは違法行為とされています。しかし、労働保障機関の違法行為に対する処分には、時効という制限も存在しています。『労働保障監察条例』第20条には、違法行為終了の日から2年以内は、労働保障機関が処分を行う権利を行使することができると規定されています。

時効の起算日である「違法行為終了の日」について、青島市人力資源社会保障局は、2016年5月12日に『人力資源社会保障機関の一部の行政紛争事件の処理に関する意見についての通知』(以下「当該通知」という。)を公布しました。当該通知第1条により、社会保険料の未納事件に対する行政処分の起算日に対して新たな境界線が設けられました。

(1)旧規定における時効の起算日は、労働関係解除又は終了の日です

当該通知公布前の旧規定では、社会保険料未納事件の「違法行為終了の日」の起算日は、「労働関係解除又は終了の日」であり、「社会保険料の納付が停止した日ではありませんでした。これは、現在は社会保険料未納という違法行為が発生した時期(2010年)から既に2年が過ぎてしまっているものの、旧規定によると労働関係解除又は終了時点(2016年5月)から2年以内で時効を計算することになっているため、2年という時効を超えていないと判断され、労働保障機関には、こうしたケースを調査・処分する権利を持っていることを意味します。

(2)新規定における時効の起算日は、正常に社会保険料の納付を開始した日となりました

しかし、当該通知による新たな規定では、雇用者が以前法定の社会保険料を未納していたものの、その後正常に社会保険料を納付しているケースは、違法行為が既に終了したものと見なし、それ以前の社会保険料を未納していた行為は「連続又は継続状態にある」と見なさないこととなりました。貴社のようなケースでは、貴社が正常に社会保険料の納付を開始した日から計算されます。貴社の2010年の試用期間は満了し、違法行為は停止し、その後は正常に社会保険料が納付されていました。正常に社会保険料の納付が開始した日から当該従業員が通報した日は既に2年を超えています。このため、既に行政処分の時効を超えており、労働保障行政機関は調査・処分の権利を失ったものと存じます。

青島市人力資源社会保障局の新規定は、それ以前は時効の規定についての大きな変更となっています。この規定では、これまでのケースにおける時効の起算日を変更しているため、雇用者と従業員に多大な影響を及ぼすもので、特に設立当初に法定の社会保険料を納付していなかった雇用者と納付されていなかった従業員に対する影響は大きいでしょう。

作成日:2016年05月20日