法律情報

雇用者が労働契約を解除する場合、従業員に30日前までに通知する必要性

Q.雇用者が労働契約を解除する際は、1ヶ月前に通知するか、1ヶ月分の賃金を余分に支給する必要があると聞いていますが、その通りでしょうか。

A.『労働契約法』 の関連規定によれば、複数の法定のケースにおいて、雇用者は従業員との労働契約を解除しても良いとされています。具体的な法定ケースの違いにより、履行が必要とされる通知の手順及び経済補償金の支給義務も異なってまいります。ご質問いただいた1ヶ月前に通知するか、1ヶ月分の賃金を余分に支給する(「通知代用金」)ことは、雇用者が『労働契約法』第40条に基づいて一方的に労働契約を解除する場合に履行が必要とされている義務ですが、この義務は全ての雇用者が労働契約を解除するケースで履行が必要な訳ではありません。わかりやすくするため、雇用者が労働契約を解除するケース及び各ケースにおいて履行の必要な通知手順並びに経済補償金の支給義務について、次の表にまとめました。ご理解の一助となれば幸いです。

番号

ケース

根拠

通知の手順

経済補償金

従業員が著しく法律・規則に違反したため、雇用者が一方的に契約を解除する場合。 『労働契約法』第39条第1項第(1)号乃至第(5)号 ①30日前迄に通知する必要はなく、解除日迄(解除日当日を含む。)に従業員に通知すればよい。勿論、通知代用金の支給も不要。②解除する前に事前に解除の理由を労働組合に告知すること。

支給不要

従業員が罹病したか、業務に因らず負傷し、元の業務に従事することができず、従業員が職務を全うできないか、客観的な状況に重大な変化が発生し、労働契約が履行できなくなった場合、雇用者は一方的に契約を解除することができる。 『労働契約法』第40条第1項第(1)号乃至第(3)号 ①30日前迄に通知するか、余分に通知代用金を支給する必要がある。②解除する前に事前に解除の理由を労働組合に告知すること。 支給する必要がある。うち、罹病したか、業務に因らず負傷し、元の業務に従事することができずに契約を解除する場合は、医療補助金の支給も必要。

法定の経済的人員削減のケースに合致し、雇用者が一方的に契約を解除する場合 『労働契約法』第41条第1項第(1)号乃至第(4)号 ①30日前迄に労働組合か全従業員に人員削減案を説明する必要がある。(これは必須の手順で、このケースでは通知代用金による代用はできない。)②労働行政機関へ人員削減案を報告すること。(実務上、審査・認可の意味合いが強い。) 支給する必要がある。

協議による解除 『労働契約法』第36条 ①30日前迄に通知する必要はなく、通知代用金の支給も必要ない。②労働組合への通知義務なし。 雇用者側から労働契約の解除を提起し、従業員と協議による解除で合意した場合、支給が必要。

実務において、雇用者が労働契約を解除することに、従業員からの理解が得られない場合、労働紛争が発生しやすくなります。

実際に手続される場合には、多くの要素に注意と配慮をする必要があります。必要な場合には、弊所にお越しいただければ、詳しく説明いたします。

作成日:2016年03月23日