朗報!中小企業の代金回収を保障する条例が6月1日より施行 -NEW-
2025年6月1日より施行された『中小企業代金支払保障条例』(以下「条例」という。)は、社会一般および多くの企業の間で大きな関心と議論を呼んでいます。6月10日以降、複数の大手自動車メーカー(中国第一汽車、東風汽車、広汽集団、吉利、長安、比亜迪など)も、サプライヤーへの支払期限を60日以内に短縮することを続々と発表しています。
当該条例は、行政機関、公的機関および大企業が中小企業に対して代金を支払う際の期限を短縮し、支払方法についても一定の規定を設けています。中小企業にとっては好ましい内容となっておりますので、以下にその概要を簡潔にご紹介いたします。
1.行政機関・公的機関の支払期限は最長60日
当該条例では、行政機関および公的機関が物品、工事、またはサービスを購入した場合、原則として納品日から30日以内に代金を支払うことが定められています。例えば政府部門が事務設備を購入した場合は、引き渡し確認書に署名した日から30日以内に支払う必要があります。契約に別途の定めがある場合でも、支払期限は最長で60日を超えてはなりません(「条例」第9条)。
また、契約で「検査または検収の合格」を支払条件としている場合、支払期限は検収が完了した日から起算されます。検収が遅延した場合、支払期限はあらかじめ定められた検収期限の満了日から自動的に起算されることになりますので、契約書には検収期限を明確に定めておくことをおすすめします。(「条例」第10条)
さらに、行政機関や公的機関が「内部承認手続」や「社長の交代」などを理由に支払を遅延させた場合でも、中小企業は当該条例に基づき正当に抗弁することが可能です。
2.大企業による中小企業への支払期限の新設
当該条例では、大企業(国有企業や企業グループなど)による中小企業への支払期限が新たに規定されました。原則として、大企業は中小企業から物品、工事、サービスの提供を受けた場合、納品日から60日以内に代金を支払う必要があります。例えば、自動車メーカーが部品サプライヤーから部品を購入した場合は、受領後60日以内に支払わなければなりません。なお、支払期限が60日を超える場合であっても、それが業界の慣行や取引の習慣に照らして合理的であれば、例外的に認められることもあります。(『条例』第9条)
また、取引契約において大企業が第三者からの支払いを受けた後に支払うといった条項や、第三者の支払状況に連動して支払うといった不合理な条件が設定されている場合には、中小企業は当該条例に基づき交渉を行うことができます。
◆日系企業へのアドバイス
当該条例の適用範囲および対象は、政府機関や公的機関および大企業が中小企業から物品、工事、サービスを購入した際の支払期限や支払方法などの規制に限定されています。なお、中国と日本では大企業および中小企業の区分基準が異なる可能性があるため、自社の企業区分がどちらに該当するかを確認し、当該取引が本条例の適用対象となるかどうかを見極める必要があります。取引の際に、自社が「中小企業」であることを文書で明示していない場合、将来的に当該条例に基づく自身の権益保障に影響が出る可能性があります。
そのため、速やかに当該条例の内容を把握し、コンプライアンスを前提とした上で当該条例の規定を適切に活用し、日本本社および現地企業の合法的権益を保護することが重要です。また、納品書や製品の検収記録などの証憑書類を適切に保管し、将来的な権利行使の証拠として備えることも必要となるでしょう。
作成日:2025年06月16日