コロナ及びその他のホットな話題

従業員の職務怠慢による重大損害発生時の解雇について -NEW-

   実務上、従業員の職務怠慢により企業に重大な損害が生じた場合、従業員を解雇するケースがあります。しかし、十分な証拠がないまま解雇すると、労務紛争を引き起こす恐れがあり、結果として企業が違法解雇による賠償金を支払わなければならない事態に陥る可能性もあります。そこで今回は、労務リスクを低減するための留意点についてご紹介いたします。

1.「重大な職務怠慢」行為の該当範囲
   『労働契約法』では、「重大な職務怠慢により企業に重大な損害を与えた場合、企業は一方的に従業員を解雇できる」と定められています。しかし、どのような状況が「重大な職務怠慢」に該当するかについては明確ではありません。
   実務上、従業員の「重大な職務怠慢」を判断するには、まずその職務内容を書面にて明確化する必要があります。職務内容は、法定の民主的手続きを経て「職務内容説明書」などの管理規定を制定するか、労働契約で約定することで法的効力を持ちます。
   職務内容について具体的かつ運用可能な客観的事項が明記されておらず、原則的な記述のみである場合、エビデンス不足とされることが多いので注意が必要です。

2.「重大な損害」の定義に留意
   現行法では「企業に重大な損害が生じた」場合の具体的状況が明確に規定されていないため、実務上、司法機関では契約内容や社内規程に重きを置いて「重大な損害」にあたるかどうかを判断する傾向が強まっています。また、「重大な損害」は直接的な経済的損失に限定されておらず、行政処分・信用毀損・重要な取引機会の喪失なども含まれます。
   なお、従業員の「重大な職務怠慢」行為と企業側の「重大な損害」との間に直接的な因果関係があることを企業が十分に立証できない場合、企業による一方的な解雇にはやや大きなリスクが伴うことになります。

3.手続きの順番と適切な対応
   企業が従業員を一方的に解雇する場合、労働組合への法定通知など民主的手続きを履行するだけでなく、事前に従業員の申立てを聴取したか否かという点も、司法機関が解雇の合理性を判断する重要な審査基準の一つとなりつつあります。
   また、従業員の意見に対し適切かつ迅速に対応するには一定の実務経験や交渉スキルが求められます。不適切な発言が逆に従業員に利用され、不利な立場に追い込まれることのないよう留意が必要です。

◆企業へのアドバイス
   現行法には解雇事由や判断基準が網羅されていないため、企業には一定の裁量権が認められています。ただし、企業がその裁量権を行使するには、具体的かつ運用可能で客観的な社内規程や労働契約の約定、及び十分な証拠(証拠収集・証拠固めには一定の実務スキルが必要)による裏付けが不可欠です。

作成日:2026年03月11日