最新法律動向

北京市が『プリペイドカード条例』を整備へ

   5月28日、北京市の商務局、市場監督管理局が合同で『北京市単一用途プリペイドカード管理条例』(意見聴取稿、以下『プリペイドカード条例』という)を起草し、6月28日までのパブリックコメントが行われています。
   『プリペイドカード条例』中の多くの内容は、関連業界に従事する日系企業にとってもその生存、発展に重要な影響をもたらすものとなっています。また、関連業界でなくとも、北京で生活するうえで、逆に消費者の立場としても、自らの権利に関わる条例でもあります。

◆ 適用対象
   『プリペイドカード条例』は北京市内の経営者、特に消費者が費用をチャージして利用するプリペイドカード方式(前払式支払手段)によって消費者に商品又はサービスを提供する飲食、教育研修、美容健康、スポーツ・フィットネス等の経営者(外資系企業を含む)を対象とする規定となっています。
◆ 経営者の責任と義務
(1)書面の契約締結(電子契約書の形式を含む)
   経営者は消費者にプリペイドカードを発行するにあたり、消費者から賠償請求を受ける可能性に留意する必要があり、消費者は経営者から契約書が提供されなかったことを理由に、関係所管機関に通報することができ、その場合経営者には最高2万元までの罰金を科すか、操業停止・整理を命じるとされています。
(2)リスク提示、消費証憑の提供義務
   経営者は消費者にカードを発行するにあたり、サービス場所、決済画面の目立つ位置にリスク提示を表示し、消費証憑(レシート)を要求する消費者には必ず提供するようにする必要があります。これらの措置対応を行わずに消費者に通報された場合、2000元以下の罰金を科されることとなります。
◆ カード発行に必須となる内容
   事業者が消費者にカードを発行する際、書面の契約(電子契約書でも可)を締結し、契約中に以下の内容を明記している必要があります。
(1)プリペイドカードの用途、提供するサービス又は消費員の内容及び料金基準
(2)残高の照会方法
(3)返金の方法と計算方法
(4)契約の履行期間
(5)安全注意事項、リスク提示
   上記のほかにも明記すべきとされる事項が少なくないため、業界所管機関により今後定められる契約書サンプルを参照いただくことをお勧めいたします。
◆ 資金安全の保証
   今後、各業界所管機関にて地方金融監督管理局とともに、各業界の発展状況、前払いされた資金の規模、影響対象の規模等の要素に基づいた資金預託管理規則が制定される見込みとなっています。
   前払資金の預託管理範囲の対象とされた経営者は、指定の預託管理銀行に口座を開設したうえ、相応の比率で前払資金をその口座に預け入れ、監督管理を受けることとなります。対象外の経営者はリスク準備金や保険加入等の相応の措置を取り前払資金の安全を確保しなければならない。
◆ 日系企業の留意点
(1)関連する日系企業では、消費者にカードを発行する前に、業界所管機関への届出を行うことが必要となります。届出の内容や期限は現在まだ制定されておらず、各企業で随時関連業界機関による政策の動向に留意する必要があります。
(2)各日系企業で消費者にカードを発行するにあたっては、契約書、店頭の掲示、広告において「最終的な解釈権は経営者の所有とする/チャージ入金額は返金しない/記名式カードを紛失、毀損した場合は再発行しない」や、「終身サービス、終身無料保証」等の文言を記載してはならず、これに違反すると最高3万元の罰金を科されることとなります。
   『プリペイドカード条例』は現在意見募集の段階にあり、正式に実施されたものではありませんが、同法は北京市市政府の2021年立法計画に含められており、今年11月にも第三回審議を通過するものと予想されます。また商務部が2012年に制定した『単一用途プリペイドカード管理弁法』(試行)についても、商務部の2021年立法計画に含められていることから、プリペイドカードに関する関連法規が年内にも審議で可決される可能性が高くなっています。関連する日系企業では同法の法整備の動きに十分留意いただきたく、弊所でも引き続き分析と皆様への情報共有をおこなってまいります。

作成日:2021年06月11日