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朗報:9月1日から増値税の未控除仕入税額の還付に関する新制度が施行

2025年8月22日、中国財政部および国家税務総局は「増値税の期末未控除仕入税額の還付制度の整備に関する公告」(財税公告2025年第7号、以下「第7号公告」という。)を発表しました。また、同日には国家税務総局より「増値税の期末未控除仕入税額の還付に関する徴収・管理手続に関する公告」(2025年第20号、以下「第20号公告」という。)が公布されました。これらは2025年9月1日より施行されますが、それに伴い2019年および2022年に発表された増値税の未控除仕入税額の還付に関するいくつかの政策は廃止されます。
そこで今回は、企業にとって重要となるポイントを簡潔にご紹介いたします。

1. 期末未控除仕入税額還付の要件
この制度はすべての一般課税企業が利用できるわけではなく、次のすべての要件を満たす必要があります(第7号公告第2条)。
(1)納税信用等級がA級またはB級である
(2)申請前36ヶ月以内に、未控除仕入税還付や輸出還付の不正取得や、虚偽の増値税専用発票の発行歴がない
(3)申請前36ヶ月以内に、脱税行為による税務処罰を2回以上受けていない
(4)2019年4月1日以降、増値税の即時還付や課税後の返還政策による税制優遇措置を受けていない(第7号公告に別段の定めがある場合を除く)
なお、(1)については申請時の納税信用等級が基準となりますが、申請中または審査中に等級がCまたはDに下がった場合は、還付が却下される可能性があります。
また、(3)について仮に税務処分を受けた場合でも、処罰事由が脱税ではない場合、または脱税であっても1回のみの処分であれば申請も可能です。

2. 業種による差異
第7号公告では、対象企業を業種ごとに区分しており、業種によって還付の範囲や計算方法が異なります。
例えば製造業、科学研究・技術サービス業、ソフトウェア・情報技術サービス業、生態保護・環境整備業(以下「製造業等4業種」)に該当する企業は、期末未控除仕入税額が発生するごとに毎月還付申請が可能であり、不動産業やその他の業種と異なり還付割合にも制限はありません(第7号公告第1条)。
なお、対象業種かどうかについては、申請前12ヶ月間における当該業種による増値税売上が全体の50%以上を占めているかどうかで判断されます(第7号公告第3条)。業種判定を誤ると正しい政策を適用できず、追加納税や滞納金のリスクが生じる可能性があるため、注意が必要です。

3. その他の留意事項
今回の制度改正は、条件を満たす一般課税企業(小規模納税者は本政策の適用対象外)にとって大きなメリットとなり、企業のキャッシュフローの改善や資金調達コストの削減にもつながると期待されています。ただし、実務においては税務当局からの指摘を回避するために以下の点にも留意が必要です。
(1)還付方法の選択
企業は「即時還付」と「未控除仕入税額還付」のいずれか一方のみを選択可能で、一度選択すると36ヶ月間は変更できません。企業にとってどちらが有利となるか、慎重な分析と判断が必要です。
(2)未控除仕入税額還付と輸出免税・仕入税額還付は併用可能
日系企業の中には、製品やサービスを国外へ輸出しているケースもあります。このような企業は、まず「輸出免税・仕入税額還付」の申告を行い(当期の輸出売上がゼロであっても、ゼロ申告が必要)、その承認後に未控除仕入税額還付の申請を行う必要があります。
(3)未控除仕入税額の変動に注意
還付申請中であっても、納税申告や税務調査、追徴などの理由により、期末の未控除仕入税額が変動する可能性があります。売上の計上や仕入税額控除の適切な処理には常に留意し、税額の異常な変動により還付額の算定に影響を及ぼすことがないよう注意が必要です。
(4)申請関連書類の保存
還付申請後も、税務当局による事後の監査や抜打ち検査が行われる可能性があるため、以下の資料を適切に保管しておく必要があります。
・増値税納税申告書
・未控除仕入税額還付申請書
・仕入税額控除の証憑
・業種判定に関する証拠資料
・未控除仕入税額の変動に関する説明書類など

作成日:2025年08月30日