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北京、杭州、広州インターネット裁判所の管轄変更 -NEW-

   2025年10月11日、最高人民裁判所は『インターネット裁判所の事件管轄に関する最高人民裁判所による規定』(法釈[2025]14 号)(以下、「本規定」という。)を公布しました。本規定は2025年11月1日より施行されます。
   現在中国のインターネット裁判所は北京、杭州、広州の3ヶ所のみで、それぞれの所在市管轄地域内の条件に該当する事件を集中的に管轄しています。
   本規定により、2018年に最高人民裁判所が公布した『インターネット裁判所の事件審理における若干の問題に関する最高人民裁判所による規定』の一部条項が改正若しくは調整され、企業や個人が関係するネットワーク関連民事・行政紛争の管轄及び対応処理に重大な影響を与えることから、今回は本規定ついて解説します。

1.インターネット裁判所が集中管轄するネットワーク関連事件を4項目追加
   本規定では、インターネット裁判所が集中管轄するネットワーク関連事件に以下の4項目が追加されました。
(1)ネットワークデータの権利帰属、権利侵害、契約紛争。
(2)ネットワーク上の個人情報保護、プライバシー権紛争。
(3)ネットワーク上のバーチャル財産権の帰属、権利侵害、契約紛争。
(4)ネットワーク上の不正競争紛争。
   例えば外資系企業が、悪意によるデータ窃取、ネット上のバーチャル財産の権利侵害、タオバオなどのオンラインプラットフォーム上での不正競争や個人情報関連の紛争などに直面した場合、インターネット裁判所に訴訟を提起する必要があります。

2.削除または保留された管轄項目
   上述の追加項目のほか、本規定ではインターネット裁判所が管轄していた事件のうちの5項目が「地域管轄、指定管轄」などに調整され、以下のような項目については関連基層人民裁判所が管轄することになりました。
①締結と履行がいずれもインターネット上で行われる金融貸付契約紛争や小口貸付契約紛争。
②インターネット上で初めて発表した作品の著作権または著作隣接権の帰属紛争など、従来のネットワーク侵害紛争事件。

   また、以下に該当する事件は引き続きインターネット裁判所が管轄します。
①ドメイン名の権利帰属、権利侵害、契約紛争。
② ECプラットフォームを通じて締結または履行されたネットショッピング契約紛争。
③締結と履行がいずれもインターネット上で行われるネットサービス契約紛争。
④検察機関が提起したネット公益訴訟事件。
   管轄保留となった事件については、引き続き「ネット上の紛争はネット上で審理する」を原則とするため、外資企業がその訴訟に関わる場合でもオンラインプラットフォームを通じた立件・挙証が可能となり、国や地域を跨ぐ訴訟においても人的・物的コストを抑えることができます。

3.日系企業へのアドバイス
   上記のインターネット裁判所管轄事件については、国外、香港・マカオ・台湾に関わる場合もインターネット裁判所が管轄するため、インターネット裁判所が発表する典型事例を参考に取引上の合法性を確認することが重要となります。例えば、データの収集や使用における合法と違法の境界線を明確にするなどして経営活動を規範化することで、データ紛争に巻き込まれることを防ぐことができます。
   同時にインターネット裁判所の管轄案件の変更に注目し、現地の実務経験豊富な弁護士に紛争解決や権利保護の仕組みを確認することで、管轄の問題により権利が妨げられることを防ぎ、時間的コストと労力を削減することができるでしょう。

作成日:2025年10月17日