最新法律動向

商務部は外商投資制限を緩和  外資系企業へ新会社法の適用を明確化

【主な内容】『外資の審査認可管理業務の改善に関する通知』(以下「通知」という。)によれば、『中外合資経営企業合弁各側の出資にかかる若干の規定』及び『「中外合資経営企業合弁各側の出資にかかる若干の規定」の補足規定』を廃止し、『中外合資経営企業法実施条例』、『中外合作経営企業法実施条例』及び『外資企業法実施細則』の登録出資資本に関する内容を改訂することを決定したとの事である。

6月24日、商務部は「通知」を公布し、外国人投資家による企業への投資の最初の出資割合及び最低登録資本の制限を廃止した。 これは、外国人投資家による投資制限を緩和する重要な措置であり、外資系企業へも政府機関による管理を簡素化し、経営管理権を企業へ移譲することを中心とする新会社法を適用することを更に明確化した。

商務部のウェブサイトに掲載された「通知」によれば、商務部は外国人投資家による投資(台湾、香港、マカオからの投資を含む。)の会社による第一回目の出資割合、現金出資割合及び出資期限の制限又は規定を廃止し、これと同時に法律、行政法規並びに国務院が登録資本の最低限度額に別途規定を設けることを決定した場合を除き、最低登録資本の制限を廃止することを決定したという。

また「通知」は、払込出資額、出資方法、出資期限を会社の投資家(株主、発起人)が自ら約定し、なお且つ合弁(合作)契約、会社定款の中に明記するとした。各級の商務所管機関は、認可回答の中で上記の内容を明確化すべきであるとした。国務院が暫定的に登録資本の払込登記制を実行しないと定めた業界を除き、今後会社の登録資本の納付状況は審査しないとした。

条項から見て取れるように、「通知」における外資系企業へ開放する登録の規定は新会社法の範囲を超えてはいない。新会社法は、会社設立の際の最低登録資本の規定を廃止することを最大の目玉としており、今回の「通知」は、新会社法が2014年3月1日に施行された後、監督管理機関が外資系企業専門に公布した初めての行政法規である。

フランス基徳法律事務所の範建年パートナー弁護士は、新会社法と現在運用されている外国人投資関連の法規、特に商務部の出資に関する規則制度と抵触する部分があり、法運用の面で矛盾が生じていたため、今回の「通知」は法運用の問題をクリアにするものだと述べた。

「通知」によれば、『中外合資経営企業合弁各側の出資にかかる若干の規定』及び『「中外合資経営企業合弁各側の出資にかかる若干の規定」の補足規定』を廃止し、『中外合資経営企業法実施条例』、『中外合作経営企業法実施条例』及び『外資企業法実施細則』の登録出資資本に関する内容を改訂することを決定したとの事である。

外資に法を適用することに関する問題の実務は、従来から特に複雑である。会社法は、この分野における一般法として、三資企業法は、外国人投資分野の特別法として、この二者間の関係及びその具体的な適用原則は相当複雑なものであった。2005 年会社法が改訂され、且つ2006年1月1日に施行された後、実務において大きな混乱を招いたことがあった。最終的には2006年4月に国家工商行政管理総局、商務部、税関総署、国家外貨管理局が『外商投資企業の審査登記管理に法律を適用することに関する若干の問題についての執行意見』(以下「執行意見」という。)を印刷・発行し、全体的な整理を行った。また、上記の4機関が「執行意見」を発行した後、国家工商行政管理総局より「執行意見」施行の通知を公布したほどである。ここからも実務上の問題の複雑さは窺い知ることができる。

範弁護士は、法理上から言えば、会社法は政府機関の規則に優先され、政府機関の規則は今後適用されるべきではないが、所管機関から明文化された廃止の通達が無ければ、当該所管機関の各地方機関は、実務において従前の規則制度を適用し続ける可能性があると述べた。「今回、商務部は関係法規を廃止することを明確化し、各地方の商務機関の実務上の取り扱いに直接的なガイドラインを与えた。」

上記の法律文書が廃止されたものの、アナリストは商務部の今回の審査管理業務に関する通知には欠陥が存在するかも知れないと指摘する。同様に会社法と抵触する若干の関連法規には明確な廃止指令が出ていないため、実務上から見れば、法律規則の適用に違反していたとしても、明確な廃止指令が出ていない規則制度を審査認可機関が引き続き適用する可能性があるという。

例えば、2002 年に公布された政府機関の規則『外国人投資家が印刷会社を設立することに関する暫定施行規定』では、出版物・包装物の印刷に従事するか、その他の印刷物の印刷の経営活動に従事する外商投資企業に対し、それぞれ人民幣1,000万元及び500万元の最低登録資本を設定している。

インドの法律事務所D.H. Law Associatesの白大山(Santosh Pai)パートナー弁護士は、「通知」が言及している改革措置の主たる受益者は商社であり、ベンチャー企業等の中小企業や、資金力が旺盛で長期的に中国で発展することを計画している大企業にとって、会社の登録、出資割合、登録資本などの面で問題は存在しないと述べた。「外資にとって、中国市場の中心的な問題はトータルなマーケット環境及び外国製品の受け入れ能力である。」

経済成長の鈍化に引きづられ、中国の今年5月の外資導入額は同期比で下落し、その幅は16ヶ月以来最大のものであった。商務部は6月17日に開催した月次定例記者会見の席上で、中国が5月に実際に使用した外資(FDI)の金額は86億米ドル、同期比で6.7%の下落となり、2013年1月以来最大の下げ幅となり、4月より3.4%の成長にとどまったと発表した。累計で見ると、中国の1月から5月のFDIの金額は489.1億米ドル、同期比で2.8%の伸びで、この一年来で最も悪い数字であり、4月の成長は5.0%だった。

現在、三資企業法の改訂又は新めて立法する作業は、第12期全国人民代表大会常務委員会の立法計画に組み込まれ、商務部は間もなく法律草案の作成業務に入り、既にパブリックコメントの募集を開始している。

これに先立ち国務院は通知を発表し、監督検査グループの派遣を決定して、政策措置の実施状況について、習近平政権が発足して以来最初の全面的な監督検査を実施するとした。6月25日から7月5日迄、各監督検査グループは、国務院の関係機関、事業所、一部の省(区、市)に別れ、実地調査を行う。重点的に監督検査する内容には、行政審査認可事項の廃止と下部移譲、政府機関による管理を簡素化し、経営管理権を企業へ移譲することの促進が含まれる。

 (21世紀経済報道より)

作成日:2014年08月25日