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債権株式化弁法、来年より施行―三種類の債権を株式化可能に―

 国家工商総局は、11月23日に『会社債権の株式化登記管理弁法』(以下「弁法」という。)を正式に公布し、2012年1月1日より施行すると発表した。債権偽装・水増し資本を有効的に防止し、市場取引の安全を維持・保護する等実体経済における切実な需要を解決するため、制度上の保障を提供する。弁法では、債権者、会社の評価査定、出資検査を行う会社が違法行為をした場合、資格証書の取消及び営業許可証の取消処分をすること等が含まれる。この法規は、中国の商事債権の登記管理を規範化する初めての行政法規といわれている。

債権の株式化は、直接の債権に限られる
 
弁法が規定する債権の株式化とは、債権者がその法に基づいて中国国内に設立した有限責任公司又は株式有限公司(以下「会社」と総称する。)の債権を、会社の株式に転換させ、会社の登録資本を増やす行為である。弁法は、会社債権の株式化について限定的開放の原則を保持し、債権者が会社の直接債権を会社の持分とすることにのみ適用し、第三者の債権を以て出資する場合には適用できない。
 分析:債権は、経済生活において普遍的に存在する財産上の権利であり、債権の株式化を実行することにより企業の資金難を解消させ、資金構造を向上させ、融資能力を向上させる等のプラスの効果がある。しかし、その他の非貨幣出資方法に比べ、債権の現金化には不確実性があり、形式は法定的ではなく、内容は非公開という特徴がある。このため債権による出資は、社会的な取引及び会社登記管理の秩序という面において一定のリスクが存在する。債権の期限が到来しても現金化できず、債権価値を評価できないこと及び当事者による債権偽装等は、いずれも会社の登録資本を水増しする結果となり、その他の利害関係者の権利及び利益に影響を与える等の社会的な危険が存在する。従って、弁法は、債権者の会社に対する直接債権を会社の株式とすることができるのは、契約の債権、判決の発効により確定した債権、裁判所が認可した破産計画又は和解協議の3種類であることを明確にする。

 契約の債権で会社を株式化することが可能に
 
弁法は、「経営において債権者と会社間で発生した契約の債権を会社の株式に転換する前提について、債権者が既に対応する契約義務を履行し、なお且つ法律、行政法規、国務院の決定又は会社定款に違反しない」と規定した。
 分析:上記の規定は、主に3方面の要素を考慮している。
第一、債権の種類は多岐に渡る。これには、契約の債権、権利侵害行為の債権、不当に得た利益の債権、管理問題に因らない債務等が含まれる。経営活動の中で発生した契約の債務以外、その他の種類の債権は、金額及び公正価格を確定することが難しい。
第二、法律、行政法規及び国務院の決定等の上位法を違反することを避け、これと同時に会社の自主的権利の行使を尊重するため、弁法は、法律、行政法規及び国務院の決定又は会社定款が規定している出資とすることを禁止している債権を排除している。
第三、会社の正常な経営における契約は、一般的に双務契約である。双方の債権債務関係は対応しており、債務を履行するまでは、いずれの一方の当事者は、債権者であるばかりでなく、債務者である。従って、一方の主な契約義務を履行した後、漸く債権を株式化することができる。即ち、弁法は、「会社の債権を株式化する場合、債権者は、債権に対応する契約義務を履行していなければならない」と規定している。

 判決が発効して債権と確認されたものは会社の株式に転換することが可能に
 
弁法は、「裁判所が下した判決により確定された債権は、会社の株式に転換できる。」と規定している。
 分析:裁判所が下した判決により確定した権利は、法的な拘束力がある。これと同時に、行政機関も裁判所に協力して判決文書を執行する法定義務を負わなければならない。債権者が発効した判決に基づいて債権を会社の株式に転換することは、債権の真実性及び合法性が既に法的拘束力の認可及び支持を得ていることに基づく。会社債権の株式化を実施することは、権利者の権利実現及び司法裁判の有効な執行を保証するものである。

破産手続中に債権と確認されたものは会社の株式化に転換するが可能に
 
弁法は、「会社の破産更生手続又は和解期間中、裁判所の承認による再建計画又は、裁定の認可された和解協議に入れる債権を会社の株式に転換することができる。」と規定している。
 分析:会社破産更生手続き又は和解期間中、会社債権の株式化を実施することは、破産企業の更生又は和解計画の制定及び執行に有益であり、破産企業が困難を抜け出し、活力を取り戻すのを促進し、破産手続きに入った企業の債務負担軽減、資金構造の改善、キャッシュフローの困難緩和等の現実的な意義を有している。

 債権者が複数の場合には事前に分割し、それぞれの権利を明らかにする
 
弁法は、「株式化に利用する債権に2名以上の債権者が存在する場合、債権者の債権は分割する必要がある」と規定している。債権者の人数が複数の場合、債権は比例債権と連帯債権に分けられる。
 分析:出資に用いる財産は、独立して存在することが可能で、なお且つ価値を確定する必要がある。従って、債権の株式化に伴うリスクを抑制するため、債権が比率債権であるか連帯債権であるかについて、株式化を図る前に債権の分割を約定するべきである。

 当事者は、書面にて承諾する必要がある
 
弁法は、「会社が債権を株式化する時に登録又は提出する書類の中に、債権者及び会社が締結した債権の株式化承諾書を提出する必要がある」と規定している。
 分析:出資に用いる財産が確かに存在し、その権利帰属が明らかであることは、社会投資、企業経営及び取引の安全及び企業の登記管理秩序に必須である。従って、債権者及び会社が債権を株式化する過程においては、債権の真実性、合法性、有効性に責任を負う必要がある。

 債権の株式化には評価査定と出資検査が必要
 
弁法は、「式化に用いる債権は、法に基づいて設立された評価査定機関による評価査定を受ける必要がある」と規定している。出資検査証明には、「債務の基本情報、評価査定状況、債権の株式化の完成状況及び法に基づいて承認された場合には、その承認の状況等が含まれている必要がある」と規定している。
 分析:債権は、非貨幣財産に属する。債権の株式化のリスクを防止するため、『会社法』の規定に基づいて、非貨幣財産による出資には、法に基づいて設立された評価査定会社により債務に対する評価査定を行う必要があり、その後で法に基づいて設立された出資検査会社により出資検査を行い、なお且つ出資検査証明書を発行する必要がある。

 規則違反は、営業許可証を取り消すことができる
 
弁法は、「債権者、会社及び評価査定、出資検査を担当する機関の違法行為に対して、法に基づいて処分する」と規定している。
 分析:債権者、会社及び評価査定、出資検査を担当する会社が『会社法』、『会社登記管理条例』及び本弁法の規定に違反した場合、会社の登記機関は、『会社法』、『会社登記管理条例』の関連規定に基づいて処分する。処分の種類には、違法所得の没収、罰金、業務停止命令、資格証書の取消及び営業許可証の取消等が含まれる。

 債権の株式化登記情報は公開する必要がある
 
弁法は、「債権を株式化した会社の登録情報について、会社の登記機関は、法に基づいて公開する」と規定しており、更に「誰でも、工商局に照会を申請することができる」と規定している。
 分析:企業登記管理の重要な機能の一つは、登記情報の公開である。会社債権の株式化の情報公開には以下の二つの内容が含まれる。一つは、債権を株式化した会社の基本登記情報の公開。もう一つは、債権を株式化した会社が違法行為により処分された場合の情報公開及び評価査定、出資検査を行った会社が債権の株式化についての評価査定・出資検査において違法行為を行った場合の行政処分の結果が含まれる必要がある。

(法制ネットより)

作成日:2011年12月01日