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契約中の紛争解決条項はどう約定するか

   日系企業の経営過程において、サプライヤー、取引先との取引行為は常時発生するものであり、それらの取引において、ときに紛争や争議が発生することも免れないため、いかにして契約中に有利な紛争解決条項を約定するかは、日系企業が関心を持つ問題です。そこで今回は契約中の紛争解決条項に関してご紹介いたします。
◆ 契約における紛争解決条項に関するポイント
1.紛争解決の方法
(1)協議

   穏便な取引、対立の緩和への考慮から、各企業に最もよく採用される紛争解決方式です。
(2)仲裁
   仲裁は国際的にも国内でも通用する紛争解決方式の一つであり、主に民商事仲裁、投資仲裁、労働仲裁等があります。『仲裁法』第16条の規定により、仲裁条項は以下の要件を満たす必要があるとされています。
① 仲裁を請求する旨の意思表示がある。
② 仲裁事項についての約定が明確である。
③ 選択した仲裁委員会が明確かつ具体的である。
   日系企業が約定した仲裁条項に上記の内容が含まれていないと、仲裁条項が無効となることもあります。また、仲裁は終局判断とされ、裁定が下されると即各当事者に対し法的拘束力を持つものとなります。
(3)訴訟
   訴訟においては、契約の各当事者が受理する裁判所を選択します。『民事訴訟法』第24条では、契約もしくはその他の財産権益をめぐる紛争は主に、被告又は原告の住所地、契約の履行地/締結地、目的物の所在地等、紛争と実際に関係する地点の裁判所が管轄するものとなり、かつ、級別管轄や専属管轄にかかる規定に違反してはならない点に留意して、管轄裁判所を約定する必要があります。
2.紛争解決条項への法律による制限
   『民法典』第507条では、契約の不発効、無効、終了等は、契約中の仲裁条項の効力に影響しないことが規定されていますが、なお以下の点に留意する必要があります。
(1)仲裁条項そのものが、民事法律行為が効力を生ずるための一般要件に適合していること。具体的には『民法典』第143条の規定の通り。
(2)当事者が仲裁条項を約定する際、仲裁事項が法律規定に抵触しないようにする。
(3)訴訟管轄について約定する場合、受理裁判所は紛争と実際の関係があり、かつ級別管轄や専属管轄にかかる規定に違反しないよう注意する。例えば、不動産取引に関わる訴訟においては、不動産所在地の裁判所による管轄しか約定できない等。

◆ 日系企業へのアドバイス
   自らに有利となる優れた紛争解決条項を設けておくことは、後に自らの権利を保護するうえで非常に重要です。各日系企業では、日常経営において、サプライヤー、取引先と重大契約を締結するにあたり、契約の紛争解決条項について慎重に検討し、契約の取引背景、取引高、取引先の信用レベル等の要素に鑑みて総合的に考量したうえで、自らに適した紛争解決方法を選択する必要があります。その際、経験ある法律事務所に委託して事前に契約内容の全面的なレビューを受けたり、取引先についての信用調査を行うことも可能です。

作成日:2021年03月31日