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コロナ下における中国現地法人の不正対策シリーズ(1)—社内不正行為をもたらす原因

   新型コロナウイルスの世界的な大流行に伴い、駐在員が一旦帰国してからはリモート会議でしか会社管理に参与できなくなったり、本社が現地企業に対して例年行っている内部監査の実施が難しくなった等のために、現地企業の社内不正に対する日本本社の有効な監督手段が失われています。しかしながら、いかにして中国現地企業の社内管理を監督し、不正を予防するかは日本の本社が関心をもつ問題です。
   今回から、コロナ下における中国現法での不正対策について数回にわたって解説いたしますので、現地企業管理にご参考いただければと存じます。
   理論上、社内不正行為をもたらす原因として、会社又は個人が以下3つの条件のいずれかが具備されていれば、不正行為が発生するとされています。もし、3つの条件のすべてが具備されているようであれば、不正行為の発生率が高まり発生は不可避となり、いつ発生するかのタイミングの問題となります。
(1)プレッシャー
   プレッシャーの要素は不正行為者の動機となる。生活から来る経済的プレッシャーや、上司の要求水準が実際の能力範囲を明らかに超えている等。
(2)チャンス
   チャンスとは、不正を働くことが可能であるうえ、それを隠蔽できれば見つからずに済むか、懲罰を回避できるという時機を指す。不正行為を発見する内部コントロールの欠如、業務の質が判断できない、懲罰措置の欠如、情報の不対照や監査制度の不全等。
(3)自己合理化
   自己合理化は、不正行為者が理由を見出すことであり、不正行為を本人の道徳観念、行動原則に合致させ、その解釈が真に合理的かどうかは問題としない。「一時的に金を借りただけ」、「会社の賃金制度は不合理であり自分はより多く支給されるべきだ」等。

◆日系企業へのアドバイス
   コロナ対策の長期化で、海外子会社の社内管理体制の見直しが必要となりつつあります。駐在員の不在により、現地法人への内部監査が実施できなくなると、現地の一部従業員がこの特殊な時期の管理の抜け穴を利用して不正を働こうとする可能性があり、監督を受けない現地企業で従業員の不正があっても日本の本社で発見することができず、結果的に現地企業と本社に甚大な損失をもたらすことにもなりかねません。次回は、中国現地企業でよく見られる不正にはどのような種類のものがあるか、ご紹介します。

作成日:2021年03月24日