最新法律動向

従業員のメンタルヘルスと企業の留意点

   感染対策のための長期にわたる隔離、他者とのコミュニケーションの不足、勤務再開後の仕事のストレス、感染流行の再発、将来的なキャリアへの不安等により、心理面の問題を抱える人が増えています。従業員の心理面の問題への適切な対応を行わないことで使用者が負担しうる責任や相応の対策について、以下で簡単にご説明いたしますので、ご参考ください。

◇使用者の責任
(1)従業員が焦りや鬱屈等を抱えているために、機器操作時に注意力が散漫し、操作ミスをして業務事故が発生したり、通勤中に交通事故が発生する等、従業員が負傷した場合は一般に労災と認定され、使用者は労災責任を負担することが必要となります。
(2)従業員が精神疾患のために休暇を取得することになり、病院の休暇証明を取得した場合は、医療期間中の病気休暇申請が可能となります。この場合は労災とはなりませんが、使用者は医療期間待遇を支給する必要があります。
(3)精神疾患が重篤となり、勤務時間外、勤務場所外において自殺した場合は、業務によらない死亡にあたり、労災とはなりませんが、法律規定により、使用者は死亡した本人の扶養する直系親族に対し、長期にわたり生活費を支給することが必要となります。

◇企業経営管理上の対策
(1)感染流行期間において、使用者は普段にも増して従業員のメンタルヘルスに配慮する必要があります。その方式にはさまざまなものがありますが、例えば、中国人の中間管理職、労働組合組織等を通じて従業員の仕事や家庭の状況に困難や異変がないか把握し、状況によって一定のサポートを提供するといった方法があります。
(2)感染対策期間において可能な範囲で、より多くの文化・スポーツの活動や、交流研修活動を企画することで、従業員のネガティブな感情を解消し、仕事や生活に対する自信や意欲を高めるのに役立ちます。
(3)精神疾患の病状が重い従業員に対しては、積極的に医療・治療を受けるよう勧めるほか、病状が従業員のプライバシーに関わる場合は、会社で秘密保持の措置を取り、事情を知る人員の範囲を最小限度に留めることも、本人の心理的負担の軽減につながります。

作成日:2020年08月27日