法律情報

『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定施行弁法』が日系企業へもたらす影響

Q.当社は、青島の日系企業です。A社も日本企業B社が青島に独資で設立した外資系企業です。当社は、B社がA社に持つ全株式持分を買い取る準備をしています。2016年10月から、外資系企業への審査制度が変わったと聞きました。当社は、今年12月から持分譲渡手続を始める予定ですが、当社が手続を行うにあたり、どのような点に気をつければ良いでしょうか。

A.理解の通り、2016年10月から、外資系企業への審査方法が大きく変更となりました。これまで、外資系企業の設立及び変更では、何れも商務局を通じて順次審査が行われていました。しかし2016年10月8日に『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定施行弁法』(以下「弁法」という。)が施行されてから、ネガティブリストに該当しない外資系企業には届出制が行われるようになりました。A社がネガティブリストに該当しない企業であれば、貴社はB社がA社に保有する株式持分を買い取る際にも、届出制が適用されます。貴社におかれましては主に次の点に、ご留意願います。

①商務局は、ネガティブリストに該当しない外資系企業の管理を審査制から届出制に変更しました。これによって商務局の届出は、工商登記を行う上での前提条件ではなくなりました。これは、相当程度外資系企業の設立、変更手続を簡素化するものです。

②商務局は、中国全土の範囲でインターネット届出を行います。外資系企業が商務局での届出手続を行う場合、商務局のホームページ上で外資系企業、その投資家及び海外の実際の支配者に関する情報を入力してアップロードする必要があります。同一の海外の投資家または海外の実際の支配者が中国国内に投資して設立した各々の外資系企業は、届出情報が一致しないか矛盾する箇所があるため、不要な面倒が起きることを避けるため各々の間での情報の交流と共有を強化し、投資家・海外の実際の支配者が商務局に届出している情報を一本化する必要があります。

③弊所の実務上の経験に基づけば「弁法」施行前に設立された外資系企業の定款には、「審査機関(又は商務局)で審査を受け、認可を取得する。」という類の条項が記載されている場合が殆どでした。こうした条項は、現行の法令の規定には適合しなくなりました。定款は、企業内部での経営管理のための重要な準則であり、適時コンプライアンス審査を行い、なお且つ現行の法令の規定に適合しない内容を改訂する必要があります。また改訂された定款は、所管の工商局にて届出手続を行う必要があります。

④定款が効力を生じる時期について、「弁法」が施行される前までは、外資系企業が定款を制定するか改訂した場合、審査機関が認可してから効力を生ずると定められていました。しかし「弁法」施行後は、ネガティブリストに該当しない外資系企業に対して、商務局は定款に対する審査を行わなくなりました。また、外資系企業が制定するか改訂した定款が効力を生じる時期については、各地の政府機関及び各政府機関の担当者の違いや、法律規定に対して異なる理解が存在する可能性があります。このため所管の商務局、工商局へ直接出向いて確認されることを、お勧めいたします。実際の手続では、所管の商務局、工商局からの回答が基準となります。

「弁法」は実施されて日が浅いため、実務において、各地政府機関で充分な連携が取れていない可能性があります。日系企業の皆様におかれましては、各所管の政府機関の動向と具体的に実施される政策に着目されることを、お勧めいたします。

作成日:2016年12月14日