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2016年10月1日より「外資三法」が実施され、外商投資企業の行政審査認可方法の改革

 Q: 2016年10月1日より「外資三法」が実施され、外商投資企業の行政審査認可の方法が大きく変更になると聞きましたが、それについて詳しく教えてください。

A:2016年9月3日、全国人民代表大会常務委員会では、「外資三法」(『外資企業法』、『中外合資経営企業法』、『中外合作経営企業法』)の改訂に関する決定が可決され、新たに改訂された「外資三法」が、2016年10月1日より実施されることとなりました。新法の実施後、外商投資企業の行政審査認可の方法が大きく変更されることとなります。今後は外商投資企業に対して、案件ごとに審査認可を行ってきた従来の管理モデルを適用するのではなく、代わりに届出管理とネガティブリストによる管理モデルが実施されることになります。

1.改訂の背景

(1)2013年8月30日、全人代常務委員会が国務院に権限を委譲し、「外資三法」に規定されている一部の行政審査認可事項の実施を暫定的に停止し、届出管理にネガティブリストの使用を合わせた管理に改める改革を上海自貿区において行うこととなりました。この改革措置は3年間にわたり試行され、2016年9月30日に試行期間が終了することになります。関係機関による評価では、自貿区におけるこの改革措置は良好な効果を挙げたとされ、全国範囲にこのモデルを複製して適用を拡張するための条件を満たしているものと認められました。

(2)現在、国際間で外資誘致競争がますます激しさを増している中で、「届出管理+ネガティブリスト」の管理モデルを全国範囲において実施適用することには、外商投資企業にとっての中国でのビジネス環境をより魅力あるものにするというねらいがあります。

(3)2015年1月、商務部より『中華人民共和国外国投資法(草案意見聴取稿)』が公布されました。『外国投資法』の草案は中国の外国資本関連の法律体系を全面的、根本的に変革しようとするものになっています。現時点での外国投資法の改訂はまだ時期尚早と見られていることから、今回の「外資三法」の改訂は『外国投資法』草案において言及されている、行政の審査認可方式の変更のみに関するものとなり、『外国投資法』草案で規定される「外資三法の統合」や、国家安全審査等の重要規定には及ばない内容のものとなっています。

2.改訂された点

(1)外商投資企業の行政審査認可方法が大きく変更されました。

新法の実施前においては、自貿区を除いて、外商投資企業の設立及び変更には、いずれも案件ごとの審査認可制度が実施されていました。新法実施以降は、国家規定の参入許可特別管理措置(即ち、「ネガティブリスト」)に記載されていない外商投資企業が設立や変更の手続きをするにあたり、従前の審査認可ではなく届出管理が行われるようになります。

(2)今回の外資三法の改訂は、外商投資企業の行政審査認可条項の改訂のみとし、その他の項目の改訂は行われません。

3.日系企業への影響及び留意点

(1)法律の変更移行をスムーズに進めるため、「外資三法」の改訂を公表したのと同日に、商務部よりウェブ上で『外商投資企業の設立及び変更にかかる届出管理の暫定施行弁法』(意見聴取稿)が公開されました。『暫定施行弁法』では、届出管理の受理機関、届出の具体的手順、手続き及び必要書類などの内容についてかなり具体的に規定されています。今後、ネガティブリストに記載のある項目でない限り、外商投資企業は当該『暫定施行弁法』の通り、設立・変更の情報を商務機関に届出ればよいとされ、商務機関による審査認可を取得する必要はなくなります。

(2)外商投資企業の行政審査認可方式については、「外資三法」以外にも、外資審査認可に関する多くの行政法規、地方性法規、各機関や地方の政府規則、制度的文書が関係してきます。このため、「外資三法」が施行されると、国と地方の関連法律法規制定機関では、現行の行政審査認可規定に対する整理・修正が相次いで必要となってきます。各地の行政審査認可改革の具体的な執行状況は、今後もなお注意深く見守っていく必要があります。

(3)今回「外資三法」の修正及び『暫定施行弁法』の公布は、特定の期間中に外商投資関連の法律体系を変革するうえでの過渡期的な改革措置と見ることが可能です。今回の行政審査認可方式の改革措置を、まずは一定期間実行してみます。その後、行政審査認可制度の改革のメリットが最大限引き出され、条件が完全に整ったタイミングを見て、外商投資法律体系の全面的な再構築を行う法律となる『外国投資法』が満を持して打ち出されることになるでしょう。日系企業の皆様におかれては、外商投資に関する法律への修正の動向に引き続き留意されるようお勧めします。

(4)実は、近年来政府は、審査認可の効率を引き上げ、投資環境を改善するために、外商投資行政審査認可について行政の簡素化・権限委譲を進めていました。今回の外資三法の改訂により、審査認可が届出に変えられることで、企業にとっては行政審査認可に費やす事務コストがある程度軽減されることは確かです。

しかしながら、同時に留意する必要のあることとして、外資企業の参入前の行政審査認可方式の簡素化(手続きや監督管理の緩和)が徐々に進められる一方で、政府は外資企業が参入を果たした後、生産経営活動が展開されてからの段階における、監督管理のレベルや強さを強化しつつあります。(実質的な監督管理の強化)これには労働者の使用、環境、税務、安全生産、製品品質等の面における適法性監督管理及び処罰の強化を挙げることができます。このため、日系企業の皆様は、行政審査認可方式の改革がもたらす利便性を享受する傍らで、生産経営活動の全面的なコンプライアンス規制に対してはいっそうの注意を払うことが必要となるでしょう。

 

作成日:2016年09月19日