最新:定年後再雇用者権益保障に関する新規意見募集 -NEW-
2025年7月31日、人力資源社会保障部は『「高齢労働者の基本権益保障暫定規定(意見募集稿)」意見募集に関する通知』(以下、「意見募集稿」という。)を発表し、2025年8月31日までパブリックコメントを公募しています。
この意見募集稿は、主に企業と「高齢労働者」(法定定年年齢を超えた労働者。定年退職手続きや養老保険待遇の享受にかかわらず、定年退職後に再雇用された人を指す。)の間における権利及び義務に関する規制です。
今回は当該新規則の内容から、中国の地場企業や日系企業が定年後再雇用者を雇用管理する上で特に重大な影響を与える注目ポイントを以下に紹介いたします。
1.定年後再雇用者への時間外勤務手当
これまでは、すでに養老保険などの待遇を受けている定年後再雇用者と企業の間に紛争があった場合、裁判では双方の労務関係に基づいて処理していました。中国では、労務関係は『民法典』などの民事法律が適用されるため、『労働法』や『労働契約法』などが定める労働報酬や時間外勤務手当、社会保険、病気休暇、経済補償金といった労働関連の規定は適用されていませんでした。
意見募集稿では、一部の内容は『労働法』などの労働関連法規が適用されることになっており、例えば、企業が高齢労働者の時間外勤務を手配する場合は、双方の約定ではなく『労働法』などの規定(平日は150%、休日は200%、法定祝日は300%)に基づき時間外勤務手当を支払う必要があると規定されています。(『意見募集稿』第9条)
2. 社会保険等の納付に関する主な変更内容
意見募集稿では、企業が定年後再雇用者の社会保険を再納付する場合について、細かく調整されています。
(1)労働災害保険
定年後再雇用者に対する労働災害保険の納付が法定義務になりました(従来は、建設業では高齢労働者である農民工に対しては労働災害保険の納付義務があるなど、一部の業界や地域に限られていた)。(『意見募集稿』第15条、第16条)
また、定年後再雇用者は、まだ退職していない正規労働者と同様に、労災保険の給付や職業病関連の給付を受けることができるとしているため、企業のコストが一定程度増加することになります。
(2)養老保険と医療保険
意見募集稿では、実情に応じて以下の規定が適用されます。(『意見募集稿』第17条、第18条)
① 基本年金保険や医療保険をすでに受給している場合は、給付内容に変更はなく、そのまま受給を継続することができます。
② 保険料の納付期間が国の定める納付年数に達していない場合、個人は従業員基本養老保険や基本医療保険の加入継続を選択することができます。この場合、事業主が従業員基本養老保険と医療保険の保険料を納付する義務はなく、個人が実状に応じて自主的に保険料を納付するかどうかを選択できます。
(3)失業保険
失業した定年後再雇用者が失業手当の要件を満たしている場合は、失業手当を受給することができます。但し基本養老保険をすでに受給している人は、失業手当を受給できないという点に注意が必要です。(『意見募集稿』第19条)
◆日系企業へのアドバイス
今回の意見募集稿が施行された場合、現行の雇用制度や定年後再雇用制度、定年後再雇用者の給与基準などに大きな影響を与えるため、社内の再雇用者数を随時確認し、新たな規定に合わせた対応方法の見直しが求められます。
各日系企業も常に政策動向に注目し、企業内の雇用制度や定年後再雇用制度、給与基準などを適切に調整することにより、再雇用者との契約などにおける労務リスクを可能な限り軽減することができるでしょう。
作成日:2025年08月14日