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就労ビザの制度が変わる~「二証統合制度」政策について~

背景        

中国で就労する外国人の管理サービス体制の整備を進め、管理業務における審査認可の重複を減らすとともに手続の効率を高めるため、国家外国人専家局が外国人の中国での就労の許可制度に関する取組み(以下「二証統合」という。)を策定し、近く実施されることになりました。

 「二証統合」とは

従前の「外国人専家訪中勤務許可証」及び「外国人就業許可証」を合わせて「外国人訪中就労許可通知」に統合することを指します。これには電子データ方式が採用され、雇用者及び外国人申請者がウェブサイト上でデータ入力したフォームを印刷できるようになります。従前の「外国人専家証」と「外国人就業証」は統合されて「外国人就労許可証」へ一本化されます。

 政策のポイント

(1)審査認可プロセスを一元化し、「1つのウェブサイト」上で取得申請が手続できるようにし、中国全土統一の「外国人訪中就労管理サービスシステム」が作られます。同時に申請書類が簡素化・統合され、個人の旅券と写真の電子データを除いて、申請書、専家証又は就業証の申請表、許可証若しくは控え、中国語・外国語による履歴書、雇用意向書等の7件の書類を廃止したため、提出書類の数がほぼ半減されることになりました。

(2)訪中して就労する外国人をA:外国のハイレベル人材、B:外国の専家人材、C:国内の労働力市場ニーズに適合するもののうち、短期的、季節ごと、技術をもたないか、サービス業に従事するといった特性をもつ外国人に分け、ポイント制を導入します。Aの人材には就労が奨励されますが、Bについては抑制、Cについては厳しい制限を加えるとしています。

(3)外国人訪中就労許可制度を制定するうえで、外国のハイレベル人材に対しては「手続上の優先待遇」の措置を特別に設けるとされています。具体的には、外国のハイレベル人材が「外国人就労許可通知」を申請し、ビザの取得申請を行い入国する前段階において紙ベースの書類審査を行わないことで審査認可時間を短縮し、「告知+承諾」制を採用し、また外国のハイレベル人材の無犯罪記録証明にも誓約制を採用するなど、申請者への便宜を図った措置となっています。

(4)2016年10月1日から2017年3月31日までにおいて、北京市、天津市、河北省、上海市、安徽省、山東省、広東省、四川省、寧夏回族自治区等の地域で外国人訪中就労許可制度の試行が行われた後、2017年4月1日より、全国で一斉に「外国人訪中就労許可通知」と「外国人就労許可証」を導入し、これ以降「外国人専家訪中勤務許可証」と「外国人就業許可証」は発行しないことになります。

企業に留意されたいポイント

上記の情報に見るように、この政策の実施により、外国人の中国での就労に関する手続時間は確かに一定程度短縮されます。ただし、政策で言及されている中国で就労する外国人を3種類に分けてそれぞれの待遇を区別することについては、今なお詳細な規定が定められていません。しかも、各地の状況が異なると考えられることから、全国で統一的な基準のもとに人材の種類の区分を制定することには難しさがあるため、各地方の地方自治体が所在地の経済発展の状況と人材についてのニーズを見て人材の種類の区分に関する実施細則や内部業務用の指針を制定することになる可能性があります。各企業におかれましては、所在地域の自治体による人材の種類の区分の基準と、それがどのように設定されるかの情報に十分留意されることが大切かと存じます。

作成日:2016年09月20日