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『消費者権益保護法実施条例』-7月1日より実施 -NEW-

   毎年3月15日は「世界消費者権利デー」です。同日、午後8時に中国の国営中央テレビ(CCTV)で放映されたスペシャル番組「315晩会」でも話題になりました。今年、国務院の李強総理は「世界消費者権利デー」に当たる日に国務院令に署名し、『中華人民共和国消費者権益保護法実施条例』(以下『条例』と略)を3月19日に公布しました。この『条例』は2024年7月1日から施行されるため、今回は当該『条例』から、日系企業の皆様にご参考いただけるポイントをご紹介いたします。

1.消費者による賠償請求に際し、クレーム・通報行為は規制を受ける
   実務において、一部のプロクレーマーが不当な利益を得る目的で、市場監督管理部門に恣意的に事業者に対するクレームを申し立て、正常な経営や合法的な事業者権益にも影響が及んでいることがあります。
   以下の例に見られるように、この『条例』は消費者によるクレーム行為を規制するものとなっているため、コンプライアンスを遵守する事業者にとって朗報とも言えます。
(1)苦情・通報は恣意的にではなく、法令を遵守し実施すべきであり、不当な利益を求め、事業者の正当な権利を侵害する目的で苦情・通報が行われた場合には、責任を問われる可能性があるとされています。 (第27条)
(2)事業者が提供する商品・サービス上のラベル、マーク、取扱説明書、販促パンフレットなどの瑕疵が、その品質に影響を与えておらず、また消費者に誤解を与えていない場合は、費用の3倍を賠償するなどの懲罰的損害賠償規定は適用できないことになっています。 (第49条)
   すなわち、当該『条例』では消費者が常識的な方法で権利を守る必要があるという点に注意喚起しています。また、事業者側は消費者のクレーム・通報行為や権利保護の案件に直面した場合であっても、問題の発生原因を素早く調査・確認し、消費者と良好なコミュニケーションを維持しながら、平和裏に解決する方法を採用することで、問題の激化を回避することが可能となります。

2.消費者における個人情報の収集範囲と必要性に留意する
   事業者によっては、商品やサービスを提供する際、デフォルトで授権同意させるものや、一括で授権同意するシステムによって消費者の個人情報を収集しているケースが見られ、消費者が同意して個人情報を提供しない場合は、その商品やサービスを享受できないという事例が散見しています。こうした方法は消費者に対し個人情報の収集・利用に同意するよう強制しているか、若しくは消費者が強制されていると気づかずに同意したと認識される可能性が高いと考えられます。
   これによって、実務上、経営者は経営活動やサービス提供の特徴に応じ、消費者の個人情報収集の必要性や収集方法(暗黙的な明示によるもの、単発若しくは一括での同意授権)、収集範囲などを考慮しなければならず、経営活動と直接関係のない個人情報(個人の年齢、誕生日など)を収集することで処罰されることのないよう注意する必要があります。(第23条)

◆日本企業の皆様へのアドバイス
   当該『条例』では、『消費者権利利益保護法』の実施をさらに細分化したものであり、不良品の取り扱い、虚偽の宣伝公告、標準的な契約条項の使用方法、品質保証責任の履行、前払い消費に関する新たな要求を定めており、これらは今後事業者においても、遵守する指針となりうるものです。
   実務において、新たに加えられた細則について当該『条例』施行前に、各企業が把握しておく必要があることを意味しています。各日系企業においても、事前の社内調査を進め、現地の法執行動向に注意を払いつつ、事業運営・管理を新たな『条例』に沿ってコンプライアンスの調整をしておくならば、行政処分やメディアによるマイナス報道など、企業の評判や信用に影響を及ぼすトラブルを出来る限り避けることができるでしょう。

作成日:2024年03月21日