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民法典:印刷された遺言は有効か

   私たちは皆、生まれては老い、病気や死を経験します。亡くなった時に遺言がなく、配偶者や子供など、相続人が法律規定に従って遺産相続することもあれば、遺言があり、その遺言通りに遺産相続する場合もあります。様々な原因で遺言を手書きで作成することが不便な場合、印刷された遺言は有効なのか、という疑問が生じます。これについて、皆様の参考になる点について、以下に簡単に説明いたします。

1.印刷遺言の内容と形式には法的に特定の制限がある
   『民法典』第1136条では、旧『相続法』第17条の5種類の遺言形式の他に、新たに印刷遺言を追加しました。これは、印刷遺言も遺言の法定形式の1つであることを意味します。
   印刷遺言とは、印刷形式で作成された遺言のことです。法律上、印刷遺言の内容と形式に対する特定の制限があり、以下の条件に合致している必要があります。
(1)遺言者は遺言作成時に、完全な民事行為能力を有している。遺言は遺言者の真実の意思を表示している。遺言は詐欺又は強迫を受けて作成したものではない。
(2)2人以上の立ち会い証人が証人として現場に立ち会う。
(3)遺言者と立ち会い証人は、遺言書の各ページに署名し、遺言書を作成したときの年月日を明記する。
(4)遺言の内容は法律、行政法規の強制的な規定に違反せず、公序良俗に違反しない。
   上記(2)において、立会人は現場で遺言書の作成過程全体に立ち会わなければならず、立会人が作成現場に立ち会わずに、印刷した遺言書に後から追加で署名だけした遺言書は無効となる、という点に留意する必要があります。

2.遺言の証人になれない人
   誰もが遺言の証人になれるわけではなく、実務上でも、証人が法律規定に合致していないことが原因で遺言が無効になることは珍しくありません。以下に挙げる人については遺言の証人にはなれず、規定に反している場合、遺言が無効になる可能性があります。(『民法典』第1140条)
(1)民事行為能力がない人、民事行為能力を制限する人及びその他の証言能力がない人、
(2)相続人、遺贈を受ける者、
(3)相続人、遺贈を受ける者と利害関係のある者。
   上記(3)は、主に相続人、遺贈を受けた人の近親者、債権者、債務者、共同経営のパートナーなどを含みます。
   相続人や遺贈を受ける者と利害関係にある者、の定義は複雑であり、その具体的な範囲については現地弁護士が具体的な状況に基づいて具体的に分析することで、証人が法規定に合わずに遺言が無効になるリスクをできるだけ避けることができます。

◆駐在の皆さまへのアドバイス
   遺言とは、自身の財産処分を合法的、また自主的に決定する手段であり、遺言者の本音を体現できるツールです。中国では、遺言に6つの異なる形式があり、『民法典」では各遺言の形式に対し異なる要求を定めています。そのため、遺言を有効にするには、内容と形式が法的要求に合致している必要があります。もし法的要求を疎かにしたり、正しく理解していなかったりした場合、遺言が無効になり、家庭内紛争に至る可能性が極めて高くなります。今後も、遺言に関わる様々な問題を共有していきますので、読者の皆さまの必要がありましたら、いつでも弊所へご連絡ください。

作成日:2023年06月09日