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WeChatグループ上の発言が権利侵害になる?

   WeChatは私たちの日常生活で今や最もポピュラーなコミュニケーションツールであり、さまざまなグループチャットや発言、コメントで溢れています。WeChatグループやモーメンツ上で、不用意に不適切な発言があると、これは権利侵害を構成し、結果、私たちにとってかなり面倒な問題を引き起こす可能性があります。今回は、これまでに最高人民法院が発表した具体的な事例を参考にし、以下に留意すべき点を挙げたいと思います。

1.事例紹介
   原告のA社は、北京のあるマンション内で美容室を開いており、黄さんはA社の株主兼美容師です。2017年1月17日、趙さんはマンション内のもう一人のオーナーと一緒にこの美容室で美容施術をしました。その間、趙さんは黄さんに以前この美容室で行った美容施術のことを問い合わせ、その後2人は美容サービスの問題でトラブルになりました。
   その後、趙さんは黄氏をこのマンションオーナーのWeChatグループから追い出し、WeChatグループ内で嘘や不当な発言を続け、黄さんとA社に対するデマ、誹謗、中傷を行い、A社の機器は正規品ではなく、顧客を騙している、などと主張しました。
   その後、黄さんとA社は訴訟を起こし、趙さん対し、①謝罪の要求、及び新聞に公告を載せることで影響を取り除き、名誉の回復を要求、②原告A社の損失2万元の賠償、③原告の黄さんとA社それぞれに5千元の精神的損害賠償金支払いを要求しました。

2.キーワード
   民事、名誉権、誹謗、中傷、ネットワーク侵害、WeChatグループ

3.本事例の紛争焦点
   WeChatグループ内での趙さんの黄さんとA社に対する発言は、名誉権の侵害を構成しているかどうか。

4.弁護士の分析
   趙さんの発言が黄さんとA社の名誉権を侵害しているかどうかは、主に名誉権侵害のすべての構成要件を満たしているかどうかにかかっています。同時に、その発言はWeChatグループから発信されているため、さらにネットワーク配信の特徴、権利侵害主体、配信範囲、損害程度などの具体的な要素を結合し、総合的に分析判断しなければなりません。本事案についての弊所の要点分析は以下の通りです。
(1)趙さんには黄さんとA社を侵害する違法行為があった
   趙さんはこのマンションオーナーのWeChatグループリーダーとして、WeChatグループに「精神分裂」「気違いを装ったセールス」など、明らかに侮辱的な発言を掲載し、黄さんの写真を添付画像として使用していました。また、A社は「美容師は非正規である」「顧客を騙す」などといった相手の評判を貶める発言をしていました。
   これに対し、黄さんは裁判所にマンションオーナーのWeChatグループ履歴と、趙さんの目撃者証言を提供し証明を行いました。
(2)趙さんの行為は主観的な過ちが明らかで、黄さんとA社の名誉を損害し、黄さんとA社への名誉毀損に因果関係がある
   趙さんは前述の偽りで不当な侮辱と誹謗性のある発言を、マンションオーナーの2つのWeChatグループ(メンバーはそれぞれ345人と123人)に送ったことにより、その主観的な過ちは明らかであると言えます。WeChatグループのメンバー構成、その他のWeChatグループのメンバーのフィードバック、およびネットワーク情報配信の利便性、範囲の広さ、迅速さなどの特徴から見て、本事案での発言は黄さんとA社が経営する美容室に対する推測と誤解を引き起こし、マンション区公衆におけるA社への信頼を損ない、また黄さんとA社へのマイナスの認識を生み出し、そのサービスに対する社会評価を下げたことにより、趙さんの行為には黄さんとA社の名誉毀損との因果関係が存在します。故に趙さんの行為は名誉権侵害のすべての要件に合致し、権利侵害を構成しています。
   このことから、『民法典』第995条、第1000条の規定に基づき、黄さん及びA社は趙さんに名誉回復、またその影響の除去、謝罪を要求し、それによる損失を賠償請求する権利があることになります。

5.日系企業及び駐在員の皆様へのアドバイス
   現在、ネットワーク媒体は社会情報配信の重要を成しており、企業経営社や駐在員の皆様も日常生活の中でインターネットメディア媒体を利用し、関連情報、言論の発表や共有をしています。しかし、時には過激とされるワードや何気ない発言が法律上の権利侵害を構成する可能性があり、権利侵害の結果、発した言葉そのものよりも多くの代価を払うことになる可能性があります。
   また、企業の権利を侵害された場合は、様々な対応方法がありますので、ご相談が必要な際はいつでも弊所へご連絡ください。

作成日:2023年05月29日