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新規:通報の対象になる社会保険の違反操作

   2023年1月17日、人力資源と社会保障部は『社会保険基金監督通報業務管理弁法』(以下『管理弁法』とする)を公布し、2023年5月1日から実施を開始しました。『管理弁法』は、いかなる組織や個人も、社会保険基金の搾取や横領の疑いを人力資源社会保険部門に通報することができると規定しています。今回は、この『管理弁法』について簡単に紹介し、日系企業の皆様の参考に供したいと思います。

1.社会保険費納付の第三者への委託による通報リスク
   『社会保険法』の規定により、企業が従業員のために社会保険を納付するのは、両者が労働関係にあることが前提となっています。日系企業の中には、中国各地に事務所を置いているものの、さまざまな理由で従業員のために現地では社会保険の納付ができず、代替措置として、企業が第三者に従業員の社会保険の納付を委託することがあります。このような場合、企業が第三者と従業員の架空の労働関係を使って社会保険を納付する行為として、通報の対象となる可能性があります。(『管理弁法』第7条)

2.社会保険資料の偽造で処罰されるリスク
   実務上、年金保険の納付年数が、退職時に法律で規定された15年に達していない従業員もおり、年金保険を受け取るために、企業に架空の労働関係期間を設けるよう要請し、社会保険を追納して、年金保険を受け取る条件を満たすようにしている事例があります。
   別の事例として、従業員が自主的に退職する際、失業保険金を受け取るために、企業に労働関係解除事由の改ざんを要請して、従業員が失業保険を受け取る条件を満たすようにしている場合もあります。『管理弁法』の規定によると、上記のように、従業員が社会保険を追納するために資料を偽造したり、資料を偽造して保険待遇を騙し取ったりする行為は、違反行為に属するため、通報や行政処罰の対象となる可能性があります。(『管理弁法』第7条)

3.企業が通報によって被るマイナスの影響
   企業が上記の原因で通報されることで、人力資源と社会保障部は、企業に対し様々な調査を進め、各種資料やデータの提供を繰り返し要求するため、企業の正常な生産経営に影響を与える可能性があります。
   調査の結果、もし企業に上記の違法行為や違反行為があることが判明すれば、違反が軽い場合は罰金を科され、重い場合は、企業の信用に影響を与える「ブラックリスト」にも登録されてしまいます。また刑法に抵触している場合、日本の駐在員も刑事責任を追及される可能性があります。

◆日系企業へのアドバイス
   『社会保険基金行政監督弁法』は2022年3月18日より実施されており、その補助的措置としての『管理弁法』は2023年5月1日から実施が開始されます。すでに、浙江省、山東省など各地の省クラス政府は、相次いで関連通報奨励政策を打ち出しており、最高奨励金は20万元に達します。つまりこれは、国家が社会保険分野に対する管理をより厳格にしており、従業員がさまざまな事由で会社を通報する可能性が高くなったことを意味します。
   在中日系企業は、『管理弁法』が実施される前に、従業員の社会保険納付、追納、会社制度の制定執行など、関連する点において、専門弁護士のアドバイスのもと、コンプライアンス審査を行っておく必要があるといえます。弁護士と共に、規範にそぐわない部分については解決策を検討し、民主的に法的手続きを履行し、従業員、人社局、労働監察機関などの政府機関と交渉、折衝し、政府機関からの指摘や処罰を極力避けるようにしましょう。

作成日:2023年02月21日