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貸倒損失の実務対応

   8月以来、中国恒大集団の債務問題が大きな注目を集めています。恒大の負う債務金額は1.95兆元という巨額に及び、全国各地の債権者による提訴が見込まれるため、広州中級裁判所で取りまとめて集中的に審理されるといわれています。
   恒大の債務問題の影響を被るのは不動産を購入した一般消費者や中国国内の不動産関連サプライヤー業者だけではなく、恒大に約96億円を投資した日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)にまで及ぶとされ、恒大の破産問題をめぐる議論が活発になっています。

   中国国内で経営活動を行う現地企業の多くは、貸倒れや不良債権をどのように回避し、回収できない際の損失について税務局にどのように説明すれば認めてもらえるか、対応に苦慮しています。これについて、以下説明いたします。

1.投資先、取引パートナーの経営状態に常に注意を払い、債権管理を重視する。
   多くの現地企業が普段は相手方の経営状態に注目することなく、相手方が持分譲渡を行ったり破産手続きに入ったことにも気づいていないことが、少なくありません。
   弊所で最近、企業からのご相談を受けたケースでは、会員権を取得していたゴルフ場が閉鎖・経営停止されたことを知って調査したところ、すでにゴルフ場が破産し、債権申告期間もすでに満了していたことがわかりました。幸い、破産財産の分配はまだ完了しておらず、追加配当に参加することができましたが、それでも申告遅れにより破産管財人に発生させた追加費用を企業が負担しなければなりませんでした。

2.どうしても回収できない債権を「帳簿から落とす」には法定プロセスの履行が必須
   帳簿上、貸倒損失として処理するための条件及び基準は、各国の会計準則の基準によって異なります。中国では、『企業資産損失の損金算入政策に関する財政部、国家税務総局の通知』(財税〔2009〕57号)の規定により、通常、以下のいずれかに該当して回収できなかった未収金、前払金は、貸倒損失とすることができるとされています。 
① 債務者が法により破産を宣告され、閉鎖、解散、取消しもしくは法による登記抹消、営業許可証の取上げを受け、その清算財産では弁済できない場合。
② 債務者が死亡したか、法により失踪、死亡を宣告され、その財産又は遺産では弁済できない場合。
③ 債務者が期限を3年過ぎても弁済せず、すでに債務の弁済能力がないことを証明する確実な証拠がある場合。
④ 債務者との債務再編協議又は裁判所が承認した破産再生計画で合意した後、債権を追及するすべのない場合。
⑤ 自然災害、戦争等の不可抗力のために回収できない場合。
   上記のうち、③の「すでに債務の弁済能力がないことを証明する確実な証拠がある」については、中国での実務において、債務者が連続3年間経営を停止している場合、所在地の市場監督管理局の証明書、企業が法により弁済交渉(訴訟及び執行申立て)を行った記録、もしくは裁判所の発行する執行終了の法的文書を取得しなければならないとされています。

◆日系企業へのアドバイス
   きわめて複雑な中国のビジネス環境において、企業の債権回収が難航する場合、経験ある専門の弁護士に委託して弁護士レターの送付や訴訟提起などの方法を運用して債権を回収することもできます。一切の手を尽くしてもなお債権が回収できない場合に限り、未回収債権を貸倒損失とすることが税務機関により認められます。サポートを必要とされる方は、債権回収における経験が豊富な弊所に随時ご遠慮なくご相談ください。

作成日:2021年11月09日