最新法律動向

市場監督管理ブラックリストに関する新規則

   今年7月30日、国家市場監督管理総局は『市場監督管理の重大な違法にかかる信用失墜リスト管理弁法』(以下「管理弁法」という)を公布しました。『管理弁法』が2021年9月1日から施行されると同時に、2015年12月30日に公布された「重大違法信用失墜企業リスト管理暫定施行弁法」(以下「原弁法」という)は廃止されることとなっています。
   ビジネス取引において、企業がブラックリストに登録されてしまうと、その企業のブランドや信用に疑義を抱かれるようになり、取引相手の選択に影響を及ぼしかねません。今回は新たに公布された『管理弁法』についてご紹介いたしますので、ご参考いただければと思います。

◆『管理弁法』のポイント
1.ブラックリストの適用対象及び処罰の範囲を拡大
   ブラックリストの適用対象の範囲を、「企業」から「当事者」に拡大したことで、外国企業が中国にもつ代表処や企業の高級管理職や関係責任者も、信用失墜リストに入れられる可能性があります。
   また、食品、医薬品、医療機器、化粧品等の品質安全に関わる行為や、消費者権益を侵害する行為、あるいは独占、不正競争等の行為が存在すると、ブラックリストに登録される可能性が高くなります。
2.新設された信用失墜リストに登録される行為3種
   当事者に以下のような行為があり、かつ市場監督管理機関からの処罰や資格等級の引き下げ、営業許可証の取上げや生産経営活動の実施制限、生産・操業停止処分を受けると、信用失墜のブラックリストに登録される可能性があります。
(1)企業が無許可で経営活動に従事した(食品生産許可を取得していないのに食品生産を行った等)。
(2)虚偽の書類を提出するか重要な事実を隠匿して行政許可を取得した、もしくは市場主体登記の取得、変更、抹消を行った(会社に未払いがある事実を隠して企業抹消登記を行った等)。
(3)市場監督管理機関から企業に対する監督検査や事故調査を受けた際、故意に書類を提供しない等の拒否、妨害行為をした。
3.新設された違法行為の判断要素及び当事者の証拠救済手段
   市場監督管理機関が、ある企業を信用失墜リストに登録するか否かを判断するにあたっては、行為者の主観的な悪意、違法の発生頻度、持続時間、製品の価値金額等が総合的に考慮されることとなります。
   市場監督管理機関に信用失墜リスト登録を認定された企業は、主観的な故意がないことを証明する証拠を提出すればリスト登録を免れることも可能ですが、これには十分な証拠が必要となります。

◆日系企業へのアドバイス
   信用失墜ブラックリストに登録されてしまうと、企業の財務・税務面の優遇政策や新規プロジェクト等の申請、企業の信用に影響が及び、関係責任者の職務資格が制限されることもあります。各日系企業で、もし違法行為の疑いから行政調査を受けることになってしまった場合には、行政法執行者とのやりとり時、不満を抱かれて重い処罰を受けることにならないよう、態度や対応に留意するようにしましょう。速やかに弁護士に相談し、専門的観点からのサポートを得ることで、信用や利益の損失を極力減らし、回避することにもつながります。

作成日:2021年08月16日