法律相談Q&A

従業員が退職願を出さずに退職してしまった場合

Q1.青島にある日系企業です。最近、当社のある従業員が退職届を提出することなく(口頭・メール・書面のいずれもなし)、何の手続きもしないまま、勝手に退職してしまいました。当社は、この従業員との労働契約をこのまま解除してしまってよいでしょうか。

A1. 確かに、この従業員には会社との労働契約を解除する意思があるようにみえるものの、会社がこのままこの従業員との労働契約を解除すると、後になって本人の気が変わったり、その他の利益のために労働契約の回復を求めたり、会社の違法解雇を主張されるといった可能性があります。その場合、会社が労働契約を解除したことの適法性を証明する書面証拠を提示できないために、当該従業員を違法に解雇したと認定されてしまうリスクが出てきます。したがってコンプライアンス上、解雇前及び解雇時には会社から書面通知を行ったうえ、これを証拠として保管しておくことで、前述の法的リスクを回避することが勧められます。

Q2.労働契約解除の手続きには、どのようなものがあるでしょうか。社会保険料の納付を停止するだけでよいのでしょうか。

A2. (1)労働契約の解除に関する手続きには、主に次のようなものがあります。
①社会保険料の納付停止
②労働契約解除の届出
③人事档案及び社会保険関係の移転
④従業員への関連証明書類の送達

(2)労働契約の解除は、社会保険料納付停止の手続きではなく、労働契約解除に関する届出の手続きが済んだことをもって、完了したものとみなされます。社会保険料の納付停止だけを済ませ、労働契約の解除を人力資源社会保障局に届け出る手続きをしていなければ、従業員から(納付を停止してから実際に労働契約を解除するまでの期間分について)社会保険料や住宅積立金の追納を求められるという法的リスクがあります。

Q3.従業員本人と連絡が取れない場合、どのように関係書類を送達すればよいでしょうか。

A3. 実際に送達する方法としては、手渡し、郵送による送達、公告による送達の3通りがあります。従業員本人と連絡が取れないか、通知書に従業員本人による確認の署名が得られない場合の対応としては、書類送達は手渡し以外の方法で行い、送達した証拠として配達証明書や公告を掲載した新聞等を保管しておくということになります。
使用者が労働者との労働契約を解除する際の実務処理に不備があると、解除の事由やその方法にかかわらず、後の紛争やリスクを引き起こす懸念が極めて高くなります。このため、労働契約を解除する際には、積極的かつ適切に法定の義務・管理責任を履行し、書面の証拠をしっかり保管して不要な面倒の発生を避けるよう、くれぐれもご注意ください。

作成日:2018年09月14日